「はあ。今日でここともお別れか。色々あったけど、良い所だったなー」
『もう少し海を満喫したかったですけどね』
「まったくだ。結局、一人もナンパできずじまいだったし」
「どうせ声を掛けても相手にされなかったでしょ」
「失礼な。俺は女の子と話す時は紳士だぞ?」
『下心しか感じないんですけど』
「違う違う。俺は純粋に可愛い女の子達と仲良くなりたいだけだ」
「へえ? それじゃあ私達は可愛くないってこと?」
「う゛っ……」
「ぷっ。墓穴掘ったね」
「あははは……」
軽口を叩き合いながら、自分達はシッター村の出口へ向かって歩いていた。
魔海の大行進から二日。
ようやく村を出る許可が下りたのだ。
あの日、自分はほとんど寝込んでいたため詳しい状況は後から聞いた話になる。
グリムフィッシャーが倒された後、海滅隊の残党への対応は到着した騎士団が担当したらしい。
もっとも、その頃には既に戦況は決していたようだ。
ミオの活躍によって海滅隊は大きな損害を受けており、騎士団の姿を見た残党達は戦意を失って撤退を開始。
騎士団がその追撃に当たり、結果として海滅隊は壊滅状態になったそうだ。
全員を捕らえられた訳ではないだろう。
だが、生き延びた者がいたとしてもごく僅かだと思われる。
その後は避難した住民達の安全確認や事情聴取などが続き、自分達もしばらく村に留まることになった。
魔物の襲撃を受けた直後は警戒が必要らしい。
別の魔物が現れる可能性もあるため、村の外へ出ることは禁止されていた。
しかし騎士団による周辺調査の結果、安全が確認されたことで今日ようやく解放されたという訳だ。
ちなみに海岸は当面立入禁止らしい。
海滅隊がいなくなったからといって、海そのものの危険が消えた訳ではないのだから当然だろう。
「よお、姉ちゃん達も今日出発か?」
村の出口付近で、見覚えのある冒険者達が声を掛けてきた。
「あっ、はい。皆さんもですか?」
「まあな。流石に色々ありすぎたからな」
「海水浴も今年は無理そうだしよ」
冒険者達は苦笑しながら肩を竦める。
その様子を見る限り、彼らも今回の騒動には相当振り回されたのだろう。
それでもどこか晴れやかな表情をしているのは、生き残れたことへの安堵があるからかもしれない。
ミオはそんな彼らと自然に会話を続けていた。
どうやら彼女はすっかり気に入られたらしい。
無理もない。
今回の騒動で最も目立った活躍をした一人なのだから。
以前から才能があるとは思っていたが、まさかここまでとは。
正直、自分も少し驚いていた。
「じゃあな! 頑張れよ、若人達!」
「はい! 皆さんもお元気で!」
冒険者達は豪快に手を振りながら村の外へ歩いていく。
ミオも笑顔で手を振り返した。
こうして自分達は、世話になったシッター村を後にするのだった。