転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第8章ーおまけ

 「ただいま~!!」

 

 「ミオ、サダメ、おかえり~!!」

 

 「た、ただいま――ぐえっ!?」

 

 シッター村を出発してから約三日。

 

 ソンジさん達と別れた後、何度か馬車を乗り継ぎ、ようやくリーヴ村へ帰ってきた。

 

 長かった。

 

 本当に長かった。

 

 魔海の大行進という大事件を経験したせいか、行きの旅路よりも何倍も疲れている気がする。

 

 馬車の中では休んでいたつもりだったが、結局あまり眠れなかった。

 

 身体は疲れているのに頭だけが妙に冴えてしまい、余計に体力を消耗したような気がする。

 

 そんな状態で村へ戻ってきた結果――。

 

 「よく帰ってきたわねぇぇぇ!!」

 

 「ぐっ……!」

 

 村へ入った瞬間、エリカさんの熱烈な抱擁が飛んできた。

 

 隣ではミオも同じように抱き締められている。

 

 疲れ切っている今の自分に避ける余裕などない。

 

 ただされるがままになるしかなかった。

 

 そして――。

 

 痛い。

 

 愛情表現のはずなのに、普通に痛い。

 

 「二人とも帰ってきたか」

 

 聞き慣れた落ち着いた声が響く。

 

 教会の入り口から神父様が姿を現した。

 

 「神父様」

 

 「話は聞いている。随分と大変だったようだな」

 

 その表情には安堵と労いが滲んでいた。

 

 どうやら今回の騒動は既に各地へ広まっているらしい。

 

 シッター村が魔物の群れに襲われたことも、リーヴ村へ伝わっていたようだ。

 

 「シスター。二人とも疲れているんだ。少し休ませてやりなさい」

 

 「ッ!? そ、そうだった!」

 

 エリカさんが慌てて手を離す。

 

 「ごめんね!? 本当に心配だったのよ! 無事だって聞いていても顔を見るまでは安心できなくて!」

 

 「う、うん。ありがとう」

 

 「だからその……離してくれると嬉しいかな」

 

 「あら?」

 

 ようやく抱擁から解放される。

 

 肺が潰れるかと思った。

 

 正直、魔物より危険だったかもしれない。

 

 「ちょっと痛かった?」

 

 「ちょっとどころじゃ――」

 

 「ん?」

 

 「いえ、なんでもありません」

 

 即座に訂正した。

 

 エリカさんに悪気はない。

 

 ただ愛情表現が少々激しいだけだ。

 

 下手なことを言うと再び抱き締められかねない。

 

 それだけは避けたかった。

 

 「変なサダメね」

 

 エリカさんは首を傾げる。

 

 幸い疑われてはいないようだ。

 

 「それより二人とも、お昼は食べた? 私達はもう済ませちゃったけど、お腹が空いてるなら何か作るわよ?」

 

 時刻は昼過ぎ。

 

 言われてみれば腹は減っている。

 

 まともな食事を取ったのは移動中だったし、温かい料理は恋しかった。

 

 だが、その前に話しておかなければならないことがある。

 

 「それなんだけど」

 

 ミオが一歩前へ出る。

 

 「二人にお願いがあるの」

 

 「お願い?」

 

 「しばらくの間、泊めてほしい子がいるんだ」

 

 その言葉にエリカさんと神父様が顔を見合わせる。

 

 突然の申し出だったから無理もない。

 

 ミオはそんな二人へ向かって微笑んだ。

 

 「入ってきていいよ」

 

 その声に応じるように、教会の外で待っていた人物がゆっくりと姿を現す。

 

 長い黒髪を後ろで結び、凛とした雰囲気を纏う少女。

 

 見慣れない顔に、エリカさん達は目を丸くした。

 

 少女は二人の前まで歩み出ると、姿勢を正して丁寧に頭を下げる。

 

 そして――。

 

 「お初にお目にかかる」

 

 落ち着いた声が響いた。

 

 「拙者、マヒロ・トーエンと申す」

 

 それが、リーヴ村におけるマヒロとの最初の出会いだった。

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