「て……って、え? せ、せつぶん?」
告白されるかもしれないと胸を高鳴らせていた自分が、予想の斜め上を行くお願いに頭が真っ白になった。ドキドキするどころか、思考が完全にフリーズしてとんちんかんな言葉を返してしまっていた。
「接吻でござるよ。海で拙者が気を失っている時、サダメがしてくれたやつでござる!」
「ちょっ、お前!? 意識戻ってたのかよ!?」
マヒロにきっぱりと言い返され、自分はさらに動揺した。あの人工呼吸のことが、彼女にバレていたなんて……。恥ずかしさが一気に込み上げ、顔が熱くなる。
「あの時はまた意識が飛んでしまったでござるが、サダメと唇を重ねた感覚は、今でもよく覚えているでござる」
「……」
どうやら彼女は人工呼吸の最中、一瞬だけ意識が戻っていたらしい。しかしすぐにまた失神し、結果としてあの感触だけが鮮明に残っていたという。 罪悪感が胸に重くのしかかった。決してやましい気持ちでやったわけではないが、本人に直接知られていると思うと、背中がぞわっとした。
「…正直に申すと、サダメと唇を重ねた時、とても気持ちよかったのでござる」
「気持ち……よかった?」
「うむ。あったかくて、ふわふわとして、夢見心地の気分でござった。しかし、何故あの状況でそんな気持ちになったのか、拙者自身にもよく分からぬ。だからもう一度、確かめとうござる」
マヒロは真っ直ぐに自分を見つめながら、そう言った。彼女の瞳には好奇心と、わずかな恥じらいが混じっている。武士らしい真面目さと、初めての恋愛感情のようなものが、純粋に絡み合っていた。
要するに、キスしたときの感覚が忘れられず、その理由を知りたい——という、純粋すぎる好奇心の表れだったらしい。
「…サダメ。お願いでござる。もう一度、あの感覚を味わせてはくれぬか?」
「ッ!?」
マヒロが一歩近づき、自分の胸にそっと手を置いた。夜風に揺れる黒髪、火照った頰、潤んだ瞳。彼女は目を閉じ、わずかに唇を尖らせて顔を近づけてくる。吐息が頰にかかる距離。甘い、ほのかに湯気の残る匂いがした。
心臓が爆発しそうな勢いで鳴り響く。
このまま受け入れたらどうなる? 恋人同士になるのか? それともただの好奇心? マヒロの将来は? 自分の気持ちは?
……様々な思いが頭の中を駆け巡った。
彼女の唇があと数センチのところまで迫る。月明かりに照らされた美しい横顔。傷跡のある白い肩。無邪気さと色気が溶け合った、圧倒的な魅力。
自分は無意識に目を閉じかけた。
「……ごめん」