「……? えーっと……」
「剣術と体術、どっちが得意か聞いてんだよ。早くしろ」
どうやら先生は戦い方を聞いているらしい。
つまり、これから教える必殺技にも関係しているということだろう。
剣か。
それとも拳か。
少しだけ考える。
火球・炎衝拳は偶然から生まれた技だった。
あの時は業火剣《ヘルファード》が使えず、結果として拳で戦うしかなかっただけだ。
だが本来の自分は違う。
幼い頃から父に剣術を教わってきた。
戦いの基礎も、身体の使い方も、多くは剣を通して学んでいる。
それに拳の必殺技はすでにある。
なら次に覚えるべきは――
「それなら剣の方でお願いします」
迷いなく答えた。
すると先生は少しだけ意外そうに眉を上げる。
「剣か。体術系で来ると思ったが……まあいいだろ」
そう言われてみれば、最近は剣より拳で戦っている印象が強いかもしれない。
朝練や初任務を除けば、まともに剣を使った記憶もあまりない。
もしかすると自分は、思っていた以上に戦い方が定まっていないのかもしれない。
剣も使う。
拳も使う。
魔法も使う。
案外オールラウンダーなのだろうか。
今さらながらそんなことに気付き、少しだけ複雑な気分になる。
もっとも。
臨機応変に戦えるなら、それはそれで悪くない。
「次の任務まであまり時間がねえ」
先生はそう言うと首を鳴らした。
「とりあえず最初は見本を見せてやる。一回しかやらねえから目ん玉ひん剥いてよーく見とけ」
「はい!」
思わず声が弾む。
ついに始まる。
先生直伝の新必殺技。
一体どんな魔法なのか。
期待で胸が高鳴った。
「業火の炎よ。鉄より堅き剣となり、我が元に顕現せよ――【業火剣《ヘルファード》】」
詠唱と同時に、紅蓮の炎が先生の右手へ収束する。
一瞬で形成された炎の大剣。
見慣れたはずの魔法なのに、先生が使うとどこか別物に見えた。
そして次の瞬間。
カコン、と小さな音が響く。
気付けば先生の正面には木製のダミー人形が設置されていた。
どうやら体育館の訓練機能を使ったらしい。
相変わらず便利な施設である。
だが今はそんなことを気にしている場合ではない。
先生はすでに構えに入っていた。
自分も慌てて邪魔にならない位置まで下がる。
絶対に見逃すわけにはいかない。
先生が直々に教えてくれる必殺技なのだ。
瞬き一つすら惜しい。
「……スゥ」
先生は静かに息を吸う。
そして業火剣を後方へ引いた。
重心を落とす。
膝を曲げる。
まるで獲物へ飛びかかる猛獣のような姿勢。
空気が変わった。
さっきまでの気だるげな教師の姿はどこにもない。
そこにいるのは歴戦の戦士だった。
「――はあっ!」
鋭い踏み込み。
床を蹴る轟音と共に先生の身体が消える。
いや、違う。
速すぎて見えなかっただけだ。
次の瞬間には先生はダミー人形の目前へ到達していた。
そして――
業火剣が振り抜かれた。