転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第9章ー20

 「……? えーっと……」

 

 「剣術と体術、どっちが得意か聞いてんだよ。早くしろ」

 

 どうやら先生は戦い方を聞いているらしい。

 

 つまり、これから教える必殺技にも関係しているということだろう。

 

 剣か。

 

 それとも拳か。

 

 少しだけ考える。

 

 火球・炎衝拳は偶然から生まれた技だった。

 

 あの時は業火剣《ヘルファード》が使えず、結果として拳で戦うしかなかっただけだ。

 

 だが本来の自分は違う。

 

 幼い頃から父に剣術を教わってきた。

 

 戦いの基礎も、身体の使い方も、多くは剣を通して学んでいる。

 

 それに拳の必殺技はすでにある。

 

 なら次に覚えるべきは――

 

 「それなら剣の方でお願いします」

 

 迷いなく答えた。

 

 すると先生は少しだけ意外そうに眉を上げる。

 

 「剣か。体術系で来ると思ったが……まあいいだろ」

 

 そう言われてみれば、最近は剣より拳で戦っている印象が強いかもしれない。

 

 朝練や初任務を除けば、まともに剣を使った記憶もあまりない。

 

 もしかすると自分は、思っていた以上に戦い方が定まっていないのかもしれない。

 

 剣も使う。

 

 拳も使う。

 

 魔法も使う。

 

 案外オールラウンダーなのだろうか。

 

 今さらながらそんなことに気付き、少しだけ複雑な気分になる。

 

 もっとも。

 

 臨機応変に戦えるなら、それはそれで悪くない。

 

 「次の任務まであまり時間がねえ」

 

 先生はそう言うと首を鳴らした。

 

 「とりあえず最初は見本を見せてやる。一回しかやらねえから目ん玉ひん剥いてよーく見とけ」

 

 「はい!」

 

 思わず声が弾む。

 

 ついに始まる。

 

 先生直伝の新必殺技。

 

 一体どんな魔法なのか。

 

 期待で胸が高鳴った。

 

 「業火の炎よ。鉄より堅き剣となり、我が元に顕現せよ――【業火剣《ヘルファード》】」

 

 詠唱と同時に、紅蓮の炎が先生の右手へ収束する。

 

 一瞬で形成された炎の大剣。

 

 見慣れたはずの魔法なのに、先生が使うとどこか別物に見えた。

 

 そして次の瞬間。

 

 カコン、と小さな音が響く。

 

 気付けば先生の正面には木製のダミー人形が設置されていた。

 

 どうやら体育館の訓練機能を使ったらしい。

 

 相変わらず便利な施設である。

 

 だが今はそんなことを気にしている場合ではない。

 

 先生はすでに構えに入っていた。

 

 自分も慌てて邪魔にならない位置まで下がる。

 

 絶対に見逃すわけにはいかない。

 

 先生が直々に教えてくれる必殺技なのだ。

 

 瞬き一つすら惜しい。

 

 「……スゥ」

 

 先生は静かに息を吸う。

 

 そして業火剣を後方へ引いた。

 

 重心を落とす。

 

 膝を曲げる。

 

 まるで獲物へ飛びかかる猛獣のような姿勢。

 

 空気が変わった。

 

 さっきまでの気だるげな教師の姿はどこにもない。

 

 そこにいるのは歴戦の戦士だった。

 

 「――はあっ!」

 

 鋭い踏み込み。

 

 床を蹴る轟音と共に先生の身体が消える。

 

 いや、違う。

 

 速すぎて見えなかっただけだ。

 

 次の瞬間には先生はダミー人形の目前へ到達していた。

 

 そして――

 

 業火剣が振り抜かれた。

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