転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第9章ー24

 「レールステン」

 

 「はい?」

 

 迷宮へ向かう準備を進めている最中、不意にコールスタッシュ先生から呼び止められた。

 

 なんだろう。

 

 もしかして新必殺技の件だろうか。

 

 そう思って振り返る。

 

 すると先生は親指で背後を指した。

 

 「今回はお前らに助っ人を用意しておいた」

 

 「助っ人?」

 

 予想外の言葉だった。

 

 先生は面倒そうに頭を掻きながら続ける。

 

 「こき使え」

 

 「いや、人をなんだと思ってるんですか?」

 

 聞き覚えのある声がした。

 

 次の瞬間。

 

 先生の背後からひょっこりと小柄な人影が顔を出す。

 

 「ソンジさん!?」

 

 思わず声が出た。

 

 どうやら今回の助っ人とは彼女のことらしい。

 

 というか、ずっと先生の後ろに隠れていたのか。

 

 全然気付かなかった。

 

 「迷宮には希少な鉱石や素材があるからな」

 

 先生は説明する。

 

 「こいつが魔道具研究に必要だって騒いでた。ちょうどお前らも行くし、ついでに同行させることにした」

 

 なるほど。

 

 確かにソンジさんなら興味を持ちそうな話だ。

 

 「お前ら仲良いんだろ?」

 

 先生がそう言うと、ソンジさんは満面の笑みを浮かべた。

 

 「そりゃもう! お互い身体を重ね合わせた関係ですし!」

 

 「そんな覚えありませんけど」

 

 即答だった。

 

 するとソンジさんは両手で頬を押さえる。

 

 「ひど~い! サダメおにいちゃん、わたしとの初めての思い出を忘れちゃったの~!?」

 

 「その言い方やめてください」

 

 朝から面倒臭い。

 

 非常に面倒臭い。

 

 まだ迷宮にも着いていないのに精神力を削られている気がする。

 

 そんなやり取りを見ていた先生は大きなため息を吐いた。

 

 「冗談はそこまでにしとけ」

 

 そう言うと。

 

 先生はソンジさんの首根っこを掴んだ。

 

 「へ?」

 

 そしてそのまま――

 

 ぽいっ。

 

 「うおっ!?」

 

 まるで荷物でも渡すような感覚で自分の方へ押し付けてきた。

 

 結果。

 

 なぜかソンジさんを背負う形になる。

 

 「……」

 

 「……」

 

 二人してしばらく固まった。

 

 何なんだこの状況。

 

 先生はそんなこちらを気にも留めない。

 

 「こんな性格だが魔道具の腕は本物だ。いざとなったら頼れ」

 

 「せんせー。女の子を荷物みたいに扱うのはどうかと思うんですけどー」

 

 「荷物じゃねえ。面倒事だ」

 

 「否定になってませんよ!?」

 

 ソンジさんが抗議する。

 

 だが先生は完全に聞き流していた。

 

 ひどい。

 

 いや、気持ちは分からなくもないけど。

 

 「さて」

 

 ソンジさんは気を取り直したように自分の背中へ体重を預ける。

 

 「今日、ブラ付けてくるの忘れちゃった。ごめんね?」

 

 「はあ、そうですか」

 

 もはや反応する気力もない。

 

 ここで突っ込んだら負けな気がした。

 

 「最近みんなが冷たい……」

 

 「普段の行いじゃないですか?」

 

 「サダメおにいちゃんまで酷い!」

 

 朝から元気だな、この人。

 

 そんなソンジさんの嘆きを適当に聞き流しながら、自分は皆のいる場所へ向かう。

 

 迷宮への出発前だというのに、既にどっと疲れていた。

 

 不安しかない。

 

 迷宮そのものもそうだが、この人を連れて行くことに対してもだ。

 

 もっとも――

 

 魔道具の腕だけは本物だ。

 

 先生がわざわざ同行を許可するほどには。

 

 だからきっと役に立つのだろう。

 

 ……たぶん。

 

 そんな一抹の不安を抱えながら、自分は仲間達の元へと歩いていくのだった。

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