転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

464 / 464
第9章ー24

 「レールステン」

 

 「はい?」

 

 迷宮へ向かう準備を進めている最中、不意にコールスタッシュ先生から呼び止められた。

 

 なんだろう。

 

 もしかして新必殺技の件だろうか。

 

 そう思って振り返る。

 

 すると先生は親指で背後を指した。

 

 「今回はお前らに助っ人を用意しておいた」

 

 「助っ人?」

 

 予想外の言葉だった。

 

 先生は面倒そうに頭を掻きながら続ける。

 

 「こき使え」

 

 「いや、人をなんだと思ってるんですか?」

 

 聞き覚えのある声がした。

 

 次の瞬間。

 

 先生の背後からひょっこりと小柄な人影が顔を出す。

 

 「ソンジさん!?」

 

 思わず声が出た。

 

 どうやら今回の助っ人とは彼女のことらしい。

 

 というか、ずっと先生の後ろに隠れていたのか。

 

 全然気付かなかった。

 

 「迷宮には希少な鉱石や素材があるからな」

 

 先生は説明する。

 

 「こいつが魔道具研究に必要だって騒いでた。ちょうどお前らも行くし、ついでに同行させることにした」

 

 なるほど。

 

 確かにソンジさんなら興味を持ちそうな話だ。

 

 「お前ら仲良いんだろ?」

 

 先生がそう言うと、ソンジさんは満面の笑みを浮かべた。

 

 「そりゃもう! お互い身体を重ね合わせた関係ですし!」

 

 「そんな覚えありませんけど」

 

 即答だった。

 

 するとソンジさんは両手で頬を押さえる。

 

 「ひど~い! サダメおにいちゃん、わたしとの初めての思い出を忘れちゃったの~!?」

 

 「その言い方やめてください」

 

 朝から面倒臭い。

 

 非常に面倒臭い。

 

 まだ迷宮にも着いていないのに精神力を削られている気がする。

 

 そんなやり取りを見ていた先生は大きなため息を吐いた。

 

 「冗談はそこまでにしとけ」

 

 そう言うと。

 

 先生はソンジさんの首根っこを掴んだ。

 

 「へ?」

 

 そしてそのまま――

 

 ぽいっ。

 

 「うおっ!?」

 

 まるで荷物でも渡すような感覚で自分の方へ押し付けてきた。

 

 結果。

 

 なぜかソンジさんを背負う形になる。

 

 「……」

 

 「……」

 

 二人してしばらく固まった。

 

 何なんだこの状況。

 

 先生はそんなこちらを気にも留めない。

 

 「こんな性格だが魔道具の腕は本物だ。いざとなったら頼れ」

 

 「せんせー。女の子を荷物みたいに扱うのはどうかと思うんですけどー」

 

 「荷物じゃねえ。面倒事だ」

 

 「否定になってませんよ!?」

 

 ソンジさんが抗議する。

 

 だが先生は完全に聞き流していた。

 

 ひどい。

 

 いや、気持ちは分からなくもないけど。

 

 「さて」

 

 ソンジさんは気を取り直したように自分の背中へ体重を預ける。

 

 「今日、ブラ付けてくるの忘れちゃった。ごめんね?」

 

 「はあ、そうですか」

 

 もはや反応する気力もない。

 

 ここで突っ込んだら負けな気がした。

 

 「最近みんなが冷たい……」

 

 「普段の行いじゃないですか?」

 

 「サダメおにいちゃんまで酷い!」

 

 朝から元気だな、この人。

 

 そんなソンジさんの嘆きを適当に聞き流しながら、自分は皆のいる場所へ向かう。

 

 迷宮への出発前だというのに、既にどっと疲れていた。

 

 不安しかない。

 

 迷宮そのものもそうだが、この人を連れて行くことに対してもだ。

 

 もっとも――

 

 魔道具の腕だけは本物だ。

 

 先生がわざわざ同行を許可するほどには。

 

 だからきっと役に立つのだろう。

 

 ……たぶん。

 

 そんな一抹の不安を抱えながら、自分は仲間達の元へと歩いていくのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

押し入れの向こうは異世界でした(作者:Brooks)(オリジナル現代/コメディ)

▼練馬区江古田の古いアパートで一人暮らしをする女子大生・篠原澪は、友達の少ないボッチ気質の二十歳。趣味は彫金とギター。貯金は十万円ほどしかなく、大学、家賃、生活費に追われながら、六畳一間で静かに暮らしていた。▼ある日、小さな地震のあと、部屋の押入れの向こうが異世界の市場につながる。▼幸い、言葉は通じた。澪は恐る恐る異世界へ足を踏み入れ、手元にあった爪切りを売…


総合評価:139/評価:-.--/連載:223話/更新日時:2026年07月28日(火) 18:27 小説情報

欠損奴隷を治したら、俺を崇める宗狂団体が設立されてた(作者:破滅)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

日本でしがない派遣社員をしていた谷川 治太郎(25歳)は、気が付くと異世界に召喚されていた。▼勇者として召喚された彼に与えられたのは『治す』という、どんな呪いも解除し、死んでさえいなければどんな大怪我でも治してしまえるというチート級の回復スキルだった。▼勇者召喚をした王族たちは禁呪を使った代償で死んで、自由の身となったジタローは奴隷を買うことに。▼ジタローは…


総合評価:434/評価:7.5/連載:28話/更新日時:2026年07月28日(火) 12:00 小説情報

Re:虚飾のお姉さんは曇り顔が見たい(作者:MトK)(原作:Re:ゼロから始める異世界生活)

異世界ルグニカに転生し、虚飾の魔女から権能の断片を与えられた少女ユイ。▼彼女は“頼れるお姉さん”を演じながら、王都に現れた少年ナツキ・スバルと出会う。▼けれどその優しさの裏には、彼の苦悩を誰より近くで見たいという歪んだ本心が隠されていた。


総合評価:897/評価:7.93/連載:47話/更新日時:2026年05月17日(日) 22:17 小説情報

勇者が生まれないか街を見張っていた魔物の私、懐いてきた子をうっかり勇者に育て上げてしまう(作者:うちっち)(オリジナルファンタジー/コメディ)

 勇者監視役を任命された魔物の少女ネリネは、幼い頃から自分に懐いていたユリスを、放っておけずに世話していた。▼ あくまで少し面倒を見ていただけ。▼ そのはずだった。▼ けれど成長したユリスは、本当に勇者に選ばれてしまう。▼ もちろん、ユリスは知らない。▼ 昔からそばにいた「ネリネ姉ちゃん」が、実は勇者を見張る側の魔物だなんて。▼ ネリネは正体を隠したまま、勇…


総合評価:1042/評価:8.33/連載:24話/更新日時:2026年07月20日(月) 08:49 小説情報

クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

学校で進路を悩んでいた斎藤隆史(サイトウ タカシ)はクラスに馴染めずに居た。▼そんな最中、突如異世界にクラスごと召喚もとい拉致され、魔王と戦えと言われる。▼そして各自に役職と能力が付与されているからとステータスを開くように言われてステータス画面を見ると……皆が普通のRPG表記なのに、俺だけポケ◯ンみたいにレベル形式だし、技ってのが見える。▼そして始まる異世界…


総合評価:2650/評価:8.24/連載:75話/更新日時:2026年07月28日(火) 16:43 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>