転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第9章ー25

 「まさかソンジ殿も同行してくれるとは。これは心強いでござるな」

 

 「ははっ。困ったことがあったら何でも頼りなよ」

 

 ソンジさんは胸を張る。

 

 そして次の瞬間。

 

 「もちろんエッチなことでも、ねっ!」

 

 「エエエエッチなこと!? そ、それは具体的にどういう――」

 

 「冗談はやめてくださいよ。本気にする奴がいるんで」

 

 ミオが慌ててギリスケを止める。

 

 するとソンジさんはケラケラと笑った。

 

 「ごめんごめん」

 

 全然反省していない顔だった。

 

 迷宮へ向かう馬車の中。

 

 最初こそ突然の同行に皆驚いていたものの、今ではすっかりいつもの空気になっていた。

 

 まあ無理もない。

 

 なんだかんだでソンジさんは皆の知り合いだ。

 

 緊張していた出発前の空気も彼女のおかげでかなり和らいでいる。

 

 ……騒がしくもなっているけど。

 

 「いやー、それにしても嬉しいなあ」

 

 ソンジさんはしみじみと頷く。

 

 「どっかの誰かさんと違って、みんないい反応してくれるから」

 

 「……はい?」

 

 なんかこっち見てる。

 

 朝食代わりのパンをかじりながら首を傾げる。

 

 「君、それ素でやってる?」

 

 「??」

 

 何を言われているのか分からない。

 

 ソンジさんは呆れたように額を押さえた。

 

 だが自分には本当に心当たりがなかった。

 

 朝だから頭が回っていないのかもしれない。

 

 そういうことにしておこう。

 

 『そういえばソンジさんって二年生なんですよね?』

 

 フィーがふと思い出したように尋ねる。

 

 『迷宮って行ったことあるんですか?』

 

 「ああ、あるよ」

 

 ソンジさんはあっさり頷いた。

 

 「まあ今回みたいに他の班へ同行する形だったけどね」

 

 『へえー』

 

 そういえばこの人は一学年上の先輩だった。

 

 普段の言動のせいで忘れそうになるが。

 

 ということは当然、迷宮経験者ということになる。

 

 「じゃあ迷宮がどんな場所か知ってるんですね?」

 

 「んー」

 

 ソンジさんは少し考える。

 

 「今回行く迷宮は初めてだけど、軽いアドバイスくらいならできるかな」

 

 「おお!」

 

 リックが身を乗り出した。

 

 「それは助かる!」

 

 「ぜひ拙者達にも教授してくだされ!」

 

 マヒロも珍しく食い気味だ。

 

 皆の反応を見たソンジさんは満足そうに頷く。

 

 「ふっふっふー」

 

 腕を組む。

 

 「可愛い後輩達のためだからね!」

 

 完全に調子に乗っていた。

 

 そのうえ何故かこちらへドヤ顔まで向けてくる。

 

 意味が分からない。

 

 というか大丈夫なんだろうか。

 

 こういう人って大体調子に乗りすぎて後で痛い目を見るイメージがあるのだが。

 

 本人は全く気にしていない様子だった。

 

 そして。

 

 ソンジさんは一度咳払いをする。

 

 「さて」

 

 それだけで少し空気が変わった。

 

 さっきまでのおちゃらけた雰囲気が僅かに薄れる。

 

 経験者として話すつもりなのだろう。

 

 皆も自然と口を閉じた。

 

 視線が集まる。

 

 馬車の中が静かになる。

 

 自分もパンを食べる手を止めた。

 

 「いいかい?」

 

 ソンジさんは指を一本立てる。

 

 「迷宮攻略において、一番大事なことを教えてあげよう」

 

 誰も口を挟まない。

 

 先ほどまで笑っていたフィー達も真剣な表情になっている。

 

 そして。

 

 ソンジさんはゆっくりと言った。

 

 「一番危険な状況――」

 

 一拍置く。

 

 「それはズバリ、『帰り道』だ」

 

 その言葉に、馬車の空気が一変した。

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