転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第9章ー27

 学園を出発して二日。

 

 目的の迷宮まであと少しというところまで来ていた。

 

 「サダメ、起きて。そろそろ着くよ」

 

 「ん……んん?」

 

 誰かに肩を揺すられ、ゆっくりと目を開く。

 

 朝だった。

 

 馬車の窓から差し込む陽の光が眩しい。

 

 ここまでの道中、自分達は交代で睡眠を取っていた。

 

 迷宮の多くは人里離れた場所に存在する。

 

 国によって街道には魔物除けの対策が施されているらしいが、それでも絶対ではない。

 

 ごく稀に魔物が現れることもあるため、念のため見張りを立てていたのだ。

 

 迷宮に辿り着くだけでも一苦労である。

 

 そんな移動生活もようやく終わりが見えてきた。

 

 「おはよう。ぐっすり眠れたみたいだね」

 

 「ん~……おはようございます、ソンジさん」

 

 大きく欠伸をする。

 

 最近はコールスタッシュ先生の補習のおかげで、どんな場所でも眠れるようになってしまった。

 

 成長と言っていいのかは分からない。

 

 「ふふっ」

 

 ソンジさんが楽しそうに笑う。

 

 「その様子だと、昨日私とあんなことやこんなことをしたのも忘れちゃったかな?」

 

 「ん~?」

 

 頭が回らない。

 

 まだ半分夢の中だ。

 

 そんな自分を見て、ソンジさんは苦笑した。

 

 「こりゃ相当だね」

 

 そう言うと、湯気の立つカップを差し出してくる。

 

 「ほら。これ飲みな」

 

 「ありがとうございます」

 

 受け取って一口飲む。

 

 少し熱い。

 

 だが香りの良いお茶だった。

 

 じんわりと身体が温まっていく。

 

 「どう?」

 

 「美味しいです」

 

 「それは良かった」

 

 ソンジさんは満足そうに頷いた。

 

 どうやら眠気覚ましに淹れてくれたらしい。

 

 こういうところは本当に気が利く人だ。

 

 「おーい。そろそろ本格的に起きろよー」

 

 後ろからギリスケの声が飛ぶ。

 

 「あと少しで迷宮なんだからな」

 

 「分かってるよ」

 

 そう返しながら身体を伸ばす。

 

 まだ少し眠い。

 

 だが頭はだいぶ冴えてきた。

 

 「……あの、皆さん?」

 

 そんな時だった。

 

 御者の男性がこちらへ声を掛けてくる。

 

 「はい?」

 

 ソンジさんが返事をする。

 

 「ここから先は馬車での進入が禁止されております」

 

 御者は前方を指差した。

 

 「申し訳ありませんが、この先は徒歩でお願いします」

 

 「ああ、そうだったね」

 

 ソンジさんが納得したように頷く。

 

 迷宮周辺は安全確保のため馬車の立ち入りが制限されている。

 

 その話は事前に聞いていた。

 

 つまり――

 

 ここから先は本当に迷宮の領域だ。

 

 馬車を降りる。

 

 朝の空気が肌を撫でた。

 

 荷物を背負い直す。

 

 自然と緊張が高まる。

 

 いよいよだ。

 

 初めて挑む迷宮。

 

 これまで訓練してきたことが通用するのか。

 

 新しい必殺技は役に立つのか。

 

 期待と不安が入り混じる。

 

 だが立ち止まる理由はない。

 

 仲間達も次々と馬車を降りていく。

 

 そして自分達は、迷宮へと続く道を歩き始めるのだった。

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