『あわわわわわわ!?』
「くっ……!」
勢いのまま空洞へ飛び込んだ自分達の身体は、底知れぬ闇へと吸い込まれていく。
耳元では風が唸りを上げ、吹きつける冷気が容赦なく肌を刺した。
寒い。
いや、痛い。
全身の熱が一瞬で奪われていくような感覚だった。
思っていた以上に深い。
どれだけ落ちても底が見えず、自分達はただ闇の中を落下し続けていた。
『ね、ねぇ……これ、本当に着地できるんだよね?』
不安を隠せないフィーが叫ぶ。
当然だ。
これほどの高さでは、以前使った結界だけでは衝撃を受け止め切れないだろう。
「大丈夫!」
だが、ミオは迷わず答えた。
「受け止めるだけなら、私の風魔法で何とかするから!」
その力強い返事に自然と肩の力が抜ける。
自分も火球の爆風で落下速度を殺し、結界で受け止める方法は考えていた。
だが、安全性を考えればミオの風魔法の方がずっと確実だ。
ここは彼女を信じるしかない。
「みんな! 下を見て!」
ソンジさんの声が響く。
「う゛っ!?」「まぶしっ!?」
慌てて視線を落とした瞬間、目の前が真っ白な光に包まれた。
暗闇に慣れ切っていた瞳にはあまりにも眩しい。
思わず目を細め、手で光を遮る。
――出口だ。
長かった暗闇を抜けた先。
その光の中へ飛び込むと――。
「ッ!?」
思わず息を呑んだ。
一面、白銀。
地面だけではない。
壁も、天井も、巨大な岩柱までもが氷に覆われ、まるで世界そのものが凍り付いていた。
幻想的な美しさ。
しかし、その静けさがかえって不気味だった。
「ミオ君! 今だ!」
「は、はい!」
感嘆に浸る暇もない。
地面が猛スピードで迫ってくる。
ミオは即座に両手を突き出し、詠唱を紡いだ。
「出でよ、衝撃を包むつむじ風!
【
詠唱が終わると同時に、地面すれすれで巨大な風の渦が展開される。
次の瞬間――。
ぼよんっ!
『うわっ!?』
風の塊に身体が包み込まれ、大きく跳ね返された。
まるで祭りで見かける巨大なエアドームの上へ飛び込んだような感覚だ。
一瞬、心臓が口から飛び出そうになる。
だが、衝撃はほとんど感じない。
身体は風に優しく受け止められ、そのまま羽毛のようにふわりと地面へ降ろされていく。
こうして、自分達は誰一人大きな怪我を負うことなく着地した。
……絨毯というより、どう考えても巨大なトランポリンだったけど。
『はぁぁぁ……やっと着いたぁ。怖かったぁ……』
フィーはその場へへたり込み、大きく息を吐いた。
「うん。地面があって本当に良かった……」
ミオも安堵したように胸へ手を当てる。
「途中で『このままずっと落ち続けるんじゃないか』って、本気で思っちゃった」
「……俺も」
思わず苦笑が漏れる。
どれだけ落ちてきたのかは分からない。
何百メートルだったのか。
それとも、それ以上だったのか。
ただ一つ確かなのは――。
自分達は今、未知なる氷の世界へ足を踏み入れたということだった。