転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第9章ー42

 「切り口からして、かなり新しいね」

 

 「もしかして……マヒロの刀じゃないですか?」

 

 『ああ、確かに』

 

 地面に刻まれた一直線の切れ目。

 

 幅も深さも、人の力で付けられたとは思えない。

 

 だが、その鋭さは自然にできた亀裂では決してなかった。

 

 刃物による斬撃。

 

 しかも、ごく最近刻まれたものだ。

 

 この特徴には見覚えがある。

 

 マヒロの妖刀だ。

 

 あの切れ味なら、この痕跡にも納得がいく。

 

 妖刀も周囲には落ちていない。

 

 偶然刺さってできた傷ではなく、誰かがここで実際に刀を振るった証拠だ。

 

 つまり――。

 

 マヒロ達は間違いなくここへ落ちてきている。

 

 『じゃあ、マヒロちゃん達はどこに……?』

 

 全員で周囲を見回す。

 

 静まり返った氷の空間。

 

 返ってくるのは自分達の足音だけ。

 

 その時だった。

 

 「サダメーーーッ!! 皆の者ーーーーッ!! 来てくれたのでござるかーーーーーー!!」

 

 「マヒろ゛ぉぉぉっ!?!?」

 

 聞き覚えのある大声が洞窟中へ響き渡る。

 

 次の瞬間。

 

 白銀の地面を物凄い勢いで滑走してくる影が一つ。

 

 「サダメェェェェ!!」

 

 「ちょっ――」

 

 避ける暇などなかった。

 

 どぉぉぉんっ!!

 

 「ぐはぁっ!?」

 

 マヒロが満面の笑みで自分へ飛び付き、その勢いのまま二人まとめて吹き飛ぶ。

 

 受け止め切れるはずもなく、そのまま背中から倒れ込んだ。

 

 さらに勢いは止まらない。

 

 「うわっ、まだ滑る!?」

 

 氷の地面をズザァァァァァァァァッ!! と猛烈な勢いで滑っていく。

 

 そして――。

 

 ゴッ!!

 

 「いでぇっ!?」

 

 最後は壁へ頭をぶつけ、ようやく停止した。

 

 危うく首まで持っていかれるところだった。

 

 ……あと、背中が妙にヒリヒリする。

 

 これ、服だけで済んでるよな?

 

 皮までズル剥けたりしてないよな?

 

 「皆が来てくれて、拙者とても嬉しいでござるよ!」

 

 マヒロはそんなことなどお構いなしに、自分へ抱き付いたまま身体をぶんぶん揺さぶってくる。

 

 「わ、分かった! 分かったから一回どいて!」

 

 「ぬ?」

 

 「あと揺らすな! 酔う!」

 

 「おっと、それは失礼したでござる」

 

 ようやくマヒロは身体を起こした。

 

 ……本当に悪気はないんだよな、この子。

 

 「サダメー! 大丈夫ー!?」

 

 慌ててミオ達も駆け寄ってくる。

 

 「ああ! たぶん!」

 

 頭はぶつけた。

 

 背中も痛い。

 

 でも骨は折れてない……はず。

 

 たぶん。

 

 きっと。

 

 「うへぇ……マジで来たのかよ、お前ら」

 

 その後ろから、ギリスケもひょっこり姿を現した。

 

 マヒロとは対照的に、若干引き気味でこちらを眺めている。

 

 ……いや。

 

 そもそもこんな場所まで来る羽目になった原因、お前だからな?

 

 「とりあえず、みんな無事で良かったよ」

 

 自然と笑みが零れる。

 

 「うん。本当に」

 

 ミオも安心したように頷いた。

 

 誰一人欠けることなく、再び全員が揃った。

 

 それだけで十分だった。

 

 ……まあ、自分の背中が本当に無事なのかだけは、後でちゃんと確認しておこうと思う。

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