「切り口からして、かなり新しいね」
「もしかして……マヒロの刀じゃないですか?」
『ああ、確かに』
地面に刻まれた一直線の切れ目。
幅も深さも、人の力で付けられたとは思えない。
だが、その鋭さは自然にできた亀裂では決してなかった。
刃物による斬撃。
しかも、ごく最近刻まれたものだ。
この特徴には見覚えがある。
マヒロの妖刀だ。
あの切れ味なら、この痕跡にも納得がいく。
妖刀も周囲には落ちていない。
偶然刺さってできた傷ではなく、誰かがここで実際に刀を振るった証拠だ。
つまり――。
マヒロ達は間違いなくここへ落ちてきている。
『じゃあ、マヒロちゃん達はどこに……?』
全員で周囲を見回す。
静まり返った氷の空間。
返ってくるのは自分達の足音だけ。
その時だった。
「サダメーーーッ!! 皆の者ーーーーッ!! 来てくれたのでござるかーーーーーー!!」
「マヒろ゛ぉぉぉっ!?!?」
聞き覚えのある大声が洞窟中へ響き渡る。
次の瞬間。
白銀の地面を物凄い勢いで滑走してくる影が一つ。
「サダメェェェェ!!」
「ちょっ――」
避ける暇などなかった。
どぉぉぉんっ!!
「ぐはぁっ!?」
マヒロが満面の笑みで自分へ飛び付き、その勢いのまま二人まとめて吹き飛ぶ。
受け止め切れるはずもなく、そのまま背中から倒れ込んだ。
さらに勢いは止まらない。
「うわっ、まだ滑る!?」
氷の地面をズザァァァァァァァァッ!! と猛烈な勢いで滑っていく。
そして――。
ゴッ!!
「いでぇっ!?」
最後は壁へ頭をぶつけ、ようやく停止した。
危うく首まで持っていかれるところだった。
……あと、背中が妙にヒリヒリする。
これ、服だけで済んでるよな?
皮までズル剥けたりしてないよな?
「皆が来てくれて、拙者とても嬉しいでござるよ!」
マヒロはそんなことなどお構いなしに、自分へ抱き付いたまま身体をぶんぶん揺さぶってくる。
「わ、分かった! 分かったから一回どいて!」
「ぬ?」
「あと揺らすな! 酔う!」
「おっと、それは失礼したでござる」
ようやくマヒロは身体を起こした。
……本当に悪気はないんだよな、この子。
「サダメー! 大丈夫ー!?」
慌ててミオ達も駆け寄ってくる。
「ああ! たぶん!」
頭はぶつけた。
背中も痛い。
でも骨は折れてない……はず。
たぶん。
きっと。
「うへぇ……マジで来たのかよ、お前ら」
その後ろから、ギリスケもひょっこり姿を現した。
マヒロとは対照的に、若干引き気味でこちらを眺めている。
……いや。
そもそもこんな場所まで来る羽目になった原因、お前だからな?
「とりあえず、みんな無事で良かったよ」
自然と笑みが零れる。
「うん。本当に」
ミオも安心したように頷いた。
誰一人欠けることなく、再び全員が揃った。
それだけで十分だった。
……まあ、自分の背中が本当に無事なのかだけは、後でちゃんと確認しておこうと思う。