転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第9章ー44

 「うーん……ここも駄目そうですね」

 

 「凍って道が塞がってる可能性も考えてたんだけど……やっぱり違うか」

 

 それから十数分。

 

 自分、ミオ、ソンジさんの三人は壁沿いを一周し、抜け道や隠し通路がないか徹底的に探し回った。

 

 だが、成果はゼロ。

 

 どこまで行っても目に映るのは、分厚い氷の壁だけだった。

 

 ソンジさんが口にしていた「氷で通路が塞がった」という可能性も、ほぼ否定されたと言っていい。

 

 もちろん、氷の奥深くに道が埋もれている可能性もゼロではない。

 

 だが、それなら何十、何百メートルもの氷を掘り進めなければならない話になる。

 

 現実的ではなかった。

 

 『マヒロちゃん、随分深くまで刺さってるね』

 

 離れた場所ではフィー達が、地面に残る斬撃の跡を調べていた。

 

 「それは【水龍】で突き刺した跡でござる」

 

 マヒロが少し誇らしげに胸を張る。

 

 「水龍は長さも自在に操れる上、岩すら両断する切れ味を持っているのでござる。そのおかげでギリスケ殿も助けられたのでござるよ」

 

 「あん時はマジで格好良かったぜ」

 

 ギリスケが感心したように頷く。

 

 「思わず惚れちまった。俺の心はもうマヒロちゃんのものだ」

 

 『へぇー。キモ』

 

 離れていても聞こえてくるやり取りに、思わず苦笑する。

 

 ……傍から見れば、あいつらだけワカサギ釣りでも楽しんでる子供達みたいだ。

 

 本当にこの状況を理解してるのか、ちょっと怪しい。

 

 「どうします?」

 

 ミオが静かに尋ねる。

 

 「流石にこれ以上探しても……」

 

 「……だね」

 

 ソンジさんも腕を組んだまま考え込む。

 

 ここまで探して見つからない以上、他に脱出経路は期待できない。

 

 残る手段は、あの縦穴を登ることだけ。

 

 だが、それも決して安全とは言えなかった。

 

 【妖精の温もり(フェアリー・ウォーム)】のおかげで凍えずには済んでいる。

 

 それでも寒さは確実に体力を奪っていた。

 

 指先は少しずつ感覚を失い、身体も徐々に重くなっていく。

 

 長居すればするほど不利になる。

 

 「仮にここを脱出できたとしても……」

 

 ソンジさんがぽつりと呟く。

 

 「上は魔障の影響で魔物だらけだろう」

 

 誰も否定できなかった。

 

 あの光景を、この目で見てきたのだから。

 

 「強行突破するしかなくなる」

 

 一呼吸置く。

 

 「そうなればミオ君の魔力はさらに必要になるし、君達も戦わなきゃいけない」

 

 再び沈黙。

 

 「その状態で迷宮の出口まで辿り着ける保証は……正直ない」

 

 重い現実だった。

 

 ここへ来るまでは、マヒロ達と合流して別ルートから脱出する。

 

 そのつもりだった。

 

 それが蓋を開けてみれば、唯一の脱出経路は元来た道。

 

 しかも、その先では大量の魔物が待ち構えている。

 

 完全な袋小路だった。

 

 静かな氷の空間で、白い吐息だけがゆっくりと揺れる。

 

 刻一刻と魔障は自分達の体力を削り続ける。

 

 焦る気持ちとは裏腹に、打開策は見つからない。

 

 果たして自分達は――。

 

 この閉ざされた氷の牢獄から、生きて脱出することができるのだろうか。

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