「うーん……ここも駄目そうですね」
「凍って道が塞がってる可能性も考えてたんだけど……やっぱり違うか」
それから十数分。
自分、ミオ、ソンジさんの三人は壁沿いを一周し、抜け道や隠し通路がないか徹底的に探し回った。
だが、成果はゼロ。
どこまで行っても目に映るのは、分厚い氷の壁だけだった。
ソンジさんが口にしていた「氷で通路が塞がった」という可能性も、ほぼ否定されたと言っていい。
もちろん、氷の奥深くに道が埋もれている可能性もゼロではない。
だが、それなら何十、何百メートルもの氷を掘り進めなければならない話になる。
現実的ではなかった。
『マヒロちゃん、随分深くまで刺さってるね』
離れた場所ではフィー達が、地面に残る斬撃の跡を調べていた。
「それは【水龍】で突き刺した跡でござる」
マヒロが少し誇らしげに胸を張る。
「水龍は長さも自在に操れる上、岩すら両断する切れ味を持っているのでござる。そのおかげでギリスケ殿も助けられたのでござるよ」
「あん時はマジで格好良かったぜ」
ギリスケが感心したように頷く。
「思わず惚れちまった。俺の心はもうマヒロちゃんのものだ」
『へぇー。キモ』
離れていても聞こえてくるやり取りに、思わず苦笑する。
……傍から見れば、あいつらだけワカサギ釣りでも楽しんでる子供達みたいだ。
本当にこの状況を理解してるのか、ちょっと怪しい。
「どうします?」
ミオが静かに尋ねる。
「流石にこれ以上探しても……」
「……だね」
ソンジさんも腕を組んだまま考え込む。
ここまで探して見つからない以上、他に脱出経路は期待できない。
残る手段は、あの縦穴を登ることだけ。
だが、それも決して安全とは言えなかった。
【
それでも寒さは確実に体力を奪っていた。
指先は少しずつ感覚を失い、身体も徐々に重くなっていく。
長居すればするほど不利になる。
「仮にここを脱出できたとしても……」
ソンジさんがぽつりと呟く。
「上は魔障の影響で魔物だらけだろう」
誰も否定できなかった。
あの光景を、この目で見てきたのだから。
「強行突破するしかなくなる」
一呼吸置く。
「そうなればミオ君の魔力はさらに必要になるし、君達も戦わなきゃいけない」
再び沈黙。
「その状態で迷宮の出口まで辿り着ける保証は……正直ない」
重い現実だった。
ここへ来るまでは、マヒロ達と合流して別ルートから脱出する。
そのつもりだった。
それが蓋を開けてみれば、唯一の脱出経路は元来た道。
しかも、その先では大量の魔物が待ち構えている。
完全な袋小路だった。
静かな氷の空間で、白い吐息だけがゆっくりと揺れる。
刻一刻と魔障は自分達の体力を削り続ける。
焦る気持ちとは裏腹に、打開策は見つからない。
果たして自分達は――。
この閉ざされた氷の牢獄から、生きて脱出することができるのだろうか。