「きゃあっ!?」
天へ向かって放たれた光の柱は、自分達のすぐ傍を貫くように空洞を一直線に駆け上がっていく。
眩い閃光が視界を白く染める。
数秒後、その光はゆっくりと細くなりながら消滅した。
――直後。
ドゴォォォォン!!
頭上から轟音が響き渡る。
光の柱が天井を貫いた衝撃で岩盤が砕け、凄まじい量の岩石が雨のように降り注いできた。
大小さまざまな岩が次々と落下し、地面へ激突するたび空洞全体が激しく揺れる。
土煙が舞い上がり、視界が一気に霞んだ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
荒く息を吐きながら周囲を見回す。
どうやら全員無事らしい。
爆風に煽られ、小石や岩の破片を浴びはしたものの、致命傷を負った者はいない。
紙一重だった。
本当にあと一瞬でもミオが動いていたら、自分達は光の柱へ真正面から突っ込んでいただろう。
ミオ本人からすれば、自分の突然の指示に戸惑って身体が止まっただけなのかもしれない。
だが、その一瞬の躊躇が全員の命を救った。
まさに九死に一生だった。
『な、なにが起こったの?』
フィーは状況を理解できないまま、不安そうに辺りを見回している。
無理もない。
自分も下を見ていなければ、何が起こったのか分からなかったはずだ。
「あれは下からの攻撃です」
自分は崩れた岩壁の向こうを見つめながら答える。
「マヒロが斬った裂け目の奥から光が見えたんです。最初は目くらましの光魔法かと思いました。でも、あれだけ距離が離れていたら意味がない。そう考えたら、攻撃魔法だと判断する方が自然でした」
一度息をつき、小さく苦笑する。
「……まあ、ここまで威力があるとは思ってませんでしたけど」
「攻撃って……まさか」
ミオの顔から血の気が引く。
あの光を見た瞬間、自分の使う《ゆらめく炎の光球《フレア・ライト》》に少し似ていると思った。
だからこそ違和感を覚えた。
目くらましなら、この距離で放つ意味がない。
つまり、最初から狙いは一つだった。
自分達を撃ち抜くこと。
あの一撃には、明確な殺意が込められていた。
ということは――
この地下に封じられていたのは、ただ暴れるだけの怪物じゃない。
こちらを認識し、狙って攻撃してくるだけの知性を持った存在。
「うぅっ……!?」
「うおっ!?」
考え込んでいたその時だった。
突然、ミオの身体がぐらりと傾く。
「大丈夫か、ミオ!」
慌てて身体を支える。
顔色が悪い。
呼吸も乱れている。
爆風でどこか痛めたのかと思ったが、そうではなかった。
「う、うん……私は平気……だけど……」
ミオは必死に両手を前へ伸ばす。
「《風足の運び屋《ウィンド・キャリー》》が……上手く……コントロールできな――ッ!?」
風が乱れる。
浮遊していた身体がふっと傾き、そのまま全員まとめて壁際へ流され始めた。
「わわわっ!?」
風の流れが不規則に渦を巻き、姿勢が安定しない。
ミオは歯を食いしばりながら必死に魔法を立て直そうとする。
しかし、一度乱れた風は言うことを聞かない。
爆発の衝撃か。
それとも、極度の緊張による魔力の乱れか。
原因は分からない。
ただ、このまま飛び続けるのは危険だった。
「……仕方ない。一度降りよう」
ソンジさんが即座に判断を下す。
「ミオ君。もう少しだけ頑張ってくれ」
「は……はい」
震える声で返事をしながら、ミオは残った力を振り絞る。
幸い、空洞の端は直撃を免れていた。
岩壁は崩れ、足場も所々砕けているものの、辛うじて人が立てるだけのスペースは残っている。
ミオは乱れる風を必死に抑え込みながら、ゆっくりとその場所へ降下していく。
着地。
全員の足が地面へ触れた瞬間、ミオは大きく息を吐いた。
どうにか全員を無事に降ろせた。
その事実だけに安堵したのか、張り詰めていた肩から力が抜け、小さくその場へ膝をつくのだった。