転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第9章ー61

 「聖なる守護神よ。絶対の防御を誇る御身の防壁で親愛なる者達を守りたまえ――【絶防結界《アブソディ・セマ》】!」

 

 皆の元へ駆け戻るなり、自分は迷わず結界を展開した。

 

 淡い光が広がり、自分達を包み込むように半透明の防壁が形成される。

 

 だが、これだけでは到底足りない。

 

 「皆、頼んだ!」

 

 一枚では心許ない。

 

 だからこそ、何重にも重ねて防御の層を作る。

 

 それが今、自分達にできる最善策だった。

 

 「聖なる守護神よ。絶対の防御を誇る御身の防壁で親愛なる者達を守りたまえ――【絶防結界《アブソディ・セマ》】」

 

 『結界、展開!』

 

 「え、えーっと……聖なる守護神よ。絶対の防御を誇る御身の防壁で親愛なる者達を守りたまえ――【絶防結界《アブソディ・セマ》】」

 

 自分に続き、マヒロ、フィー、ギリスケが次々と結界を重ねていく。

 

 透明な防壁が幾重にも重なり、一枚だった壁が少しずつ厚みを増していく。

 

 「まだ試作段階だけど……試してみるか」

 

 一方、ソンジさんは落ち着いた様子で鞄を開き、掌ほどの大きさの白い立方体を取り出した。

 

 以前、マヒロが使っていた結界発生用の魔道具だ。

 

 どうやら、それを使うつもりらしい。

 

 「ほらよっと」

 

 軽く放り投げられた白い塊は自分達の頭上で静止すると、眩い光を放ちながら作動した。

 

 次の瞬間、自分達が張った結界をさらに包み込むように、新たな防壁が展開される。

 

 試作品と言っていたが、見た目だけでは普通の結界との違いは分からない。

 

 「通常の結界に弾力性を持たせた改良型だ。衝撃を受け流せるようになった分、打撃には一段階強くなってるはずだ。一応、耐久性も以前より上げてある。

 

 ……まあ、今回の攻撃に耐えられるかは別問題だけどな」

 

 ソンジさんは肩をすくめながら苦笑する。

 

 それでも、その一言には確かな自信が滲んでいた。

 

 少しでも生存率を上げるため、自分達のために改良を重ねてきたのだろう。

 

 スゥゥゥゥゥ……

 

 「おい! 来るぞ!」

 

 「ッ!?」

 

 ギリスケの叫びに全員が一斉に顔を上げる。

 

 銀鏡の翼龍は高空で大きく息を吸い込み、その口元へ眩い青白い光を収束させていた。

 

 間違いない。

 

 あの一撃が来る。

 

 「ミオ!!」

 

 短く叫び、視線だけで合図を送る。

 

 ミオは力強く頷き、両手を前へ突き出した。

 

 「吹き荒れろ、嵐の防壁よ――【乱気流の城壁《タービュ・ランパート》】!!!」

 

 轟風が唸りを上げる。

 

 荒れ狂う風は瞬く間に巨大な半球状の壁となり、自分達をすっぽりと覆い尽くした。

 

 以前見た時よりも、一回りどころか二回りは巨大になっている。

 

 これが、ミオの全力。

 

 あまりの規模に、自分達が何重にも張った結界さえ霞んで見えるほどだった。

 

 それでも安心はできない。

 

 あの怪物が放つ光線を、この防御だけで完全に防げる保証はどこにもない。

 

 だからこそ結界を重ねた。

 

 ミオの風が威力を削り、その残りを自分達の防壁で受け止める。

 

 今は、その作戦が成功することを祈るしかなかった。

 

 ――――――――――!!!!!

 

 巨龍の咆哮が響いた瞬間。

 

 風のドーム越しに青白い閃光が降り注ぎ、凄まじい轟音とともに迷宮全体が激しく揺れた。

 

 まるで天地そのものが軋みを上げたかのような衝撃が、防壁の向こうから容赦なく襲い掛かってくる。

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