「聖なる守護神よ。絶対の防御を誇る御身の防壁で親愛なる者達を守りたまえ――【絶防結界《アブソディ・セマ》】!」
皆の元へ駆け戻るなり、自分は迷わず結界を展開した。
淡い光が広がり、自分達を包み込むように半透明の防壁が形成される。
だが、これだけでは到底足りない。
「皆、頼んだ!」
一枚では心許ない。
だからこそ、何重にも重ねて防御の層を作る。
それが今、自分達にできる最善策だった。
「聖なる守護神よ。絶対の防御を誇る御身の防壁で親愛なる者達を守りたまえ――【絶防結界《アブソディ・セマ》】」
『結界、展開!』
「え、えーっと……聖なる守護神よ。絶対の防御を誇る御身の防壁で親愛なる者達を守りたまえ――【絶防結界《アブソディ・セマ》】」
自分に続き、マヒロ、フィー、ギリスケが次々と結界を重ねていく。
透明な防壁が幾重にも重なり、一枚だった壁が少しずつ厚みを増していく。
「まだ試作段階だけど……試してみるか」
一方、ソンジさんは落ち着いた様子で鞄を開き、掌ほどの大きさの白い立方体を取り出した。
以前、マヒロが使っていた結界発生用の魔道具だ。
どうやら、それを使うつもりらしい。
「ほらよっと」
軽く放り投げられた白い塊は自分達の頭上で静止すると、眩い光を放ちながら作動した。
次の瞬間、自分達が張った結界をさらに包み込むように、新たな防壁が展開される。
試作品と言っていたが、見た目だけでは普通の結界との違いは分からない。
「通常の結界に弾力性を持たせた改良型だ。衝撃を受け流せるようになった分、打撃には一段階強くなってるはずだ。一応、耐久性も以前より上げてある。
……まあ、今回の攻撃に耐えられるかは別問題だけどな」
ソンジさんは肩をすくめながら苦笑する。
それでも、その一言には確かな自信が滲んでいた。
少しでも生存率を上げるため、自分達のために改良を重ねてきたのだろう。
スゥゥゥゥゥ……
「おい! 来るぞ!」
「ッ!?」
ギリスケの叫びに全員が一斉に顔を上げる。
銀鏡の翼龍は高空で大きく息を吸い込み、その口元へ眩い青白い光を収束させていた。
間違いない。
あの一撃が来る。
「ミオ!!」
短く叫び、視線だけで合図を送る。
ミオは力強く頷き、両手を前へ突き出した。
「吹き荒れろ、嵐の防壁よ――【乱気流の城壁《タービュ・ランパート》】!!!」
轟風が唸りを上げる。
荒れ狂う風は瞬く間に巨大な半球状の壁となり、自分達をすっぽりと覆い尽くした。
以前見た時よりも、一回りどころか二回りは巨大になっている。
これが、ミオの全力。
あまりの規模に、自分達が何重にも張った結界さえ霞んで見えるほどだった。
それでも安心はできない。
あの怪物が放つ光線を、この防御だけで完全に防げる保証はどこにもない。
だからこそ結界を重ねた。
ミオの風が威力を削り、その残りを自分達の防壁で受け止める。
今は、その作戦が成功することを祈るしかなかった。
――――――――――!!!!!
巨龍の咆哮が響いた瞬間。
風のドーム越しに青白い閃光が降り注ぎ、凄まじい轟音とともに迷宮全体が激しく揺れた。
まるで天地そのものが軋みを上げたかのような衝撃が、防壁の向こうから容赦なく襲い掛かってくる。