「ぐっ!?」
「う゛ぅっ!?」
凄まじい衝撃と轟音が、防御魔法を突き抜けるように襲い掛かってきた。
その圧力だけで身体は硬直し、誰一人として身動きが取れない。
まるで世界そのものが悲鳴を上げているかのようだった。
視線の先では、ミオが両手を突き出したまま必死に防御魔法を維持している。
俯いたまま歯を食いしばり、その細い身体を震わせながら耐え続けていた。
……すまん、ミオ。
もう少しだ。
もう少しだけ耐えてくれ。
『う゛っ!? うる、さい!』
追い打ちを掛けるように、耳を切り裂く金切り音が響き渡る。
鼓膜が破れてしまいそうなほどの不快な高音。
自分達は耳を塞げる。
だが、防御魔法を維持しているミオには、その余裕すらない。
このままでは彼女が持たない。
頼む。
早く終わってくれ――。
「……」
その願いが届いたのか。
次の瞬間、不意に世界が静まり返った。
激しい揺れが止まり、耳を裂いていた金切り音も、嘘のように消えていく。
終わった……のか?
「はあ……はあ……はあ……」
耳を塞いだまま目を閉じていた自分は、恐る恐る瞼を開く。
最初に目へ飛び込んできたのは、肩で荒く息をするミオの背中だった。
「ッ!? これ、は……」
乱気流の城壁は、すでに消えていた。
さらに周囲へ張り巡らせていた結界も、ひび割れだらけになり、今にも砕け散りそうな状態だった。
どうやら保険として重ね張りした結界が功を奏したらしい。
だが、その姿はあまりにも痛々しい。
あと一枚でも少なかったら。
ほんの少しでも防御が薄かったら。
そう考えただけで背筋が冷たくなった。
「はあ……はあ……はあ……」
「大丈夫か、ミオ?」
そんなことより、今はミオだ。
我に返った自分は慌てて駆け寄り、彼女へ声を掛ける。
その直後。
限界を迎えた結界が、乾いた音を立てながら次々と崩れ落ちていった。
「はあ……はあ……う、うん。なんとか……っ! だいじょうぶ……」
ミオは膝をつき、荒い呼吸を繰り返していた。
額からは汗が滝のように流れ落ち、肩は大きく上下している。
見るからに限界寸前だった。
それでも受け答えはできている。
耳も聞こえているようだ。
命に別状はない。
それだけで胸を撫で下ろした。
『うぅ……ど、どうなったの?』
ミオを気遣っていると、ようやくフィーが恐る恐る声を上げた。
どうやら自分と同じように耳と目を塞いでいたらしく、まだ周囲の状況を把握できていないようだ。
マヒロ達も同様だった。
「皆、もう大丈夫だ。攻撃はなんとか退け――」
無事を伝えようとして振り返った、その瞬間だった。
「――ッ!?」
言葉が喉で止まる。
目の前に広がっていた光景が、あまりにも現実離れしていたからだ。
『? どうしたの、サダメ?』
自分の異変に気付いたフィーがゆっくりと目を開ける。
それにつられるように、マヒロ達も次々と視線を上げた。
「あ、あれ……」
言葉にならない。
自分は震える指をゆっくりと後ろへ向けることしかできなかった。
『?』
皆がその先へ視線を向ける。
そして――。
『ッ!? なに、これ?』
そこには、さっきまで存在していたはずの氷の大地がなかった。
まるで世界を丸ごと抉り取ったかのような、底の見えない巨大な穴が口を開けていた。