転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第9章ー62

 「ぐっ!?」

 

 「う゛ぅっ!?」

 

 凄まじい衝撃と轟音が、防御魔法を突き抜けるように襲い掛かってきた。

 

 その圧力だけで身体は硬直し、誰一人として身動きが取れない。

 

 まるで世界そのものが悲鳴を上げているかのようだった。

 

 視線の先では、ミオが両手を突き出したまま必死に防御魔法を維持している。

 

 俯いたまま歯を食いしばり、その細い身体を震わせながら耐え続けていた。

 

 ……すまん、ミオ。

 

 もう少しだ。

 

 もう少しだけ耐えてくれ。

 

 『う゛っ!? うる、さい!』

 

 追い打ちを掛けるように、耳を切り裂く金切り音が響き渡る。

 

 鼓膜が破れてしまいそうなほどの不快な高音。

 

 自分達は耳を塞げる。

 

 だが、防御魔法を維持しているミオには、その余裕すらない。

 

 このままでは彼女が持たない。

 

 頼む。

 

 早く終わってくれ――。

 

 「……」

 

 その願いが届いたのか。

 

 次の瞬間、不意に世界が静まり返った。

 

 激しい揺れが止まり、耳を裂いていた金切り音も、嘘のように消えていく。

 

 終わった……のか?

 

 「はあ……はあ……はあ……」

 

 耳を塞いだまま目を閉じていた自分は、恐る恐る瞼を開く。

 

 最初に目へ飛び込んできたのは、肩で荒く息をするミオの背中だった。

 

 「ッ!? これ、は……」

 

 乱気流の城壁は、すでに消えていた。

 

 さらに周囲へ張り巡らせていた結界も、ひび割れだらけになり、今にも砕け散りそうな状態だった。

 

 どうやら保険として重ね張りした結界が功を奏したらしい。

 

 だが、その姿はあまりにも痛々しい。

 

 あと一枚でも少なかったら。

 

 ほんの少しでも防御が薄かったら。

 

 そう考えただけで背筋が冷たくなった。

 

 「はあ……はあ……はあ……」

 

 「大丈夫か、ミオ?」

 

 そんなことより、今はミオだ。

 

 我に返った自分は慌てて駆け寄り、彼女へ声を掛ける。

 

 その直後。

 

 限界を迎えた結界が、乾いた音を立てながら次々と崩れ落ちていった。

 

 「はあ……はあ……う、うん。なんとか……っ! だいじょうぶ……」

 

 ミオは膝をつき、荒い呼吸を繰り返していた。

 

 額からは汗が滝のように流れ落ち、肩は大きく上下している。

 

 見るからに限界寸前だった。

 

 それでも受け答えはできている。

 

 耳も聞こえているようだ。

 

 命に別状はない。

 

 それだけで胸を撫で下ろした。

 

 『うぅ……ど、どうなったの?』

 

 ミオを気遣っていると、ようやくフィーが恐る恐る声を上げた。

 

 どうやら自分と同じように耳と目を塞いでいたらしく、まだ周囲の状況を把握できていないようだ。

 

 マヒロ達も同様だった。

 

 「皆、もう大丈夫だ。攻撃はなんとか退け――」

 

 無事を伝えようとして振り返った、その瞬間だった。

 

 「――ッ!?」

 

 言葉が喉で止まる。

 

 目の前に広がっていた光景が、あまりにも現実離れしていたからだ。

 

 『? どうしたの、サダメ?』

 

 自分の異変に気付いたフィーがゆっくりと目を開ける。

 

 それにつられるように、マヒロ達も次々と視線を上げた。

 

 「あ、あれ……」

 

 言葉にならない。

 

 自分は震える指をゆっくりと後ろへ向けることしかできなかった。

 

 『?』

 

 皆がその先へ視線を向ける。

 

 そして――。

 

 『ッ!? なに、これ?』

 

 そこには、さっきまで存在していたはずの氷の大地がなかった。

 

 まるで世界を丸ごと抉り取ったかのような、底の見えない巨大な穴が口を開けていた。

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