奴が地上まで降りてくれれば、まだ勝機はある。
問題は、どうやってその状況へ持ち込むかだ。
自分から降りてくる可能性は、まずない。
上空は奴にとって絶対的な安全圏。
わざわざその優位を捨てる理由などないし、伝説の龍である奴がその程度のことを理解していないはずもない。
その可能性に期待するだけ時間の無駄だ。
ならば、こちらから仕掛けるしかない。
一応、考えている策はある。
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いくら自在に飛び回れるとはいえ、視界を失えば話は別。
人間だって目隠しをしたまま真っすぐ歩くことすら難しい。
それと同じように、視界を奪われた状態で空中停止を維持するのは、いかに飛行能力を持つ生物でも至難の業のはずだ。
まして今の奴は、長い封印から目覚めたばかり。
閉鎖空間を飛び回れる程度には回復しているとはいえ、まだ本調子ではない。
言わばリハビリ中のような状態だ。
そんな状態で繊細な飛行制御を続けるのは、さすがの伝説の龍でも簡単ではないだろう。
……だが、この作戦には問題が多すぎる。
まず一つ目。
そもそも光が奴まで届く保証がない。
自分の全力でも、この広い空間全体を照らし切れるかは微妙なところだ。
もっとも、周囲は一面の氷。
光が反射すれば、普段以上の明るさになる可能性もある。
そこだけは希望がある。
しかし、仮に成功したとしても次の問題がある。
その光は仲間まで巻き込んでしまう。
目を焼く危険性もあるが、それ以上に問題なのは熱だ。
これほど大量の氷で乱反射した光が生み出す熱量は想像もつかない。
魔力を帯びた氷だから簡単には溶けないかもしれない。
だが、もし溶けたら終わりだ。
空洞は大量の水で埋め尽くされる。
足場も氷。
逃げ場なんてどこにもない。
それだけじゃない。
視界を奪われた奴が暴れ回れば、この空間そのものが崩壊する危険だってある。
他にも細かな問題はいくらでも思い浮かぶ。
……いや。
これ以上考えても、自分で自分の作戦を否定し続けるだけだ。
要するに、この策は危険すぎる。
もちろん、運良くそのまま落ちてくる可能性だってゼロではない。
それでも、この手の一発勝負は失敗する可能性の方が高い気がしてならない。
使うなら最後の最後。
どうしようもなくなった時の切り札だ。
少なくとも、奴の攻撃を妨害する手段にはなる。
……それ以上のリスクを背負うことになるとしても。
「……」
なら、この策を封印するとして。
他に方法はあるのか。
やはりマヒロを何とかして上まで飛ばし、強引に叩き落としてもらうしか――。
『あ、あの。それなら、一つだけ方法がある、かも?』
思考の迷路へ迷い込みかけた、その時だった。
遠慮がちに響いたフィーの声が、自分の思考を静かに遮った。