「ッ!? 本当か、フィー?」
思わず身を乗り出して聞き返す。
まさか彼女の方から作戦を提案してくるとは思ってもみなかった。
『う、うん』
突然大きな声を出したせいか、フィーは肩をびくりと震わせながらも、小さく頷いた。
……少し驚かせてしまったか。
『私の拘束魔法なら、相手の動きを止められるの。そうすれば、あいつを地上まで引きずり降ろせる……と思う』
「おお! 期末試験でライラック先生に使っていた魔法でござるな?」
「ああ……なるほど」
フィーの案は、期末試験でライラック先生を拘束したあの魔法だった。
確かに、空中で動きを止められれば、そのまま地上へ落とすこともできる。
発想としては悪くない。
いや、むしろ今の状況では最も現実的な案かもしれない。
考えたな、フィー。
『で、でも……問題もあって』
「問題?」
フィーは申し訳なさそうに視線を落とす。
『距離が離れすぎると魔法が届かないの。それと……相手が自分よりずっと強いと、拘束できる時間がすごく短くなるんだ。
今の高さじゃ効果範囲の外だし、もし範囲内まで近付いて拘束できたとしても……持って二、三秒くらい。
もしかしたら、それより短いかもしれない。
先生の時は、向こうが抵抗しなかったから成功しただけなんだ』
「……そうか」
なるほど。
つまり問題は二つ。
まず、今の位置では魔法が届かない。
そして、仮に届いたとしても拘束時間はほんの数秒。
二、三秒。
それだけあれば十分とも言えるが、伝説の龍を相手にするにはあまりにも短い。
そして何より、その効果範囲までどうやって奴を引き寄せるか。
そこが最大の壁だった。
「ちなみに、効果範囲はどれくらいなんだ?」
『えっと……頑張れば五十メートル、くらい?』
「ッ!? 五十メートルか……」
奴との距離は百メートル以上。
つまり、少なくとも半分近くまでは別の方法で距離を詰めさせなければならない。
拘束魔法だけでは決定打にならない。
なら、その前段階をどう作るかだ。
「……」
考えろ。
あと一手。
あと一つだけ、何かが足りない。
その時だった。
「……なら、やってみる価値はあるか」
「? ソンジさん?」
「ソンジさん、もしかして何か思いついたんですか?」
「ああ」
ソンジさんは静かに頷いた。
その表情はいつものように冷静だ。
「ただし、成功する保証はまったくないけどね」
「教えてください」
迷う時間はない。
少しでも可能性があるなら、それに賭けるしかない。
「奴を引きずり降ろせるなら、どんな方法でも試したいんです」
「……うん」
自分の言葉を聞いたソンジさんは、小さく息を吐く。
時間がないことは、彼女も十分理解しているのだろう。
ならば遠回しな説明は不要。
必要なのは結論だけだった。
「やつを――鳥かごで閉じ込めるのさ」