「ぷはっー、うめぇー!」
「久しぶりのお肉、おいしいねー」
「うん。ちょっと硬いけど……でも、すごくおいしい」
小屋の外、焚き火を囲んで俺たちは簡素な食事を取っていた。
メニューはジャーキーとビスケット。冷静に考えればおやつのような組み合わせだが、ここ数日まともな食事にありつけていなかった身には、これ以上ないご馳走だった。
皆が嬉しそうに頬張る様子を見て、思わず苦笑が漏れる。
――このあと腹を壊さなければいいんだけどな。
一応、火で炙って殺菌した“つもり”ではある。
ミオにも「治癒魔法があるから大丈夫」と太鼓判を押されてはいるが、やはり一抹の不安は消えない。
だが、食べなければ生き残れない。今は贅沢を言える状況ではなかった。
「……うん、美味い」
俺も意を決してジャーキーを一口かじる。
想像以上に硬く、噛み切るのに少し苦労したが、口の中に広がる肉の旨味は、胸の奥までじんわりと沁み渡った。
普通の生活で食べていたら、きっと「安物だな」とか「パサついてる」とか文句を言っていたかもしれない。
だが今は違う。
生きている実感と共に味わう肉は、何よりも尊い。
「……」
ふと、ラエルの方へ視線を向ける。
ここまで辿り着けたのは、間違いなく彼のおかげだ。
道を知っていたこと。休憩場所を覚えていたこと。
そして、何より――皆を導こうとする責任感。
もしラエルがいなければ、俺たちはとっくに森で迷い、飢えか魔物にやられていたかもしれない。
――本当に、感謝している。
それと同時に、胸の奥に引っかかるものがあった。
あの喧嘩のことだ。
村を出る直前、感情に任せてぶつけ合った言葉。
結局、きちんと謝らないままここまで来てしまっていた。
このまま曖昧にするのは嫌だ。
中身はともかく、今の自分は子どもの姿だが、それでも“年上”として最低限の筋は通したい。
「……ラエル」
「ん?」
「その……えっと……あ、あの時は……悪かった、な」
言葉にした瞬間、変に緊張してしまい、歯切れの悪い謝罪になってしまった。
自分でも情けなくなる。
だが――
「……ああ、あれか」
ラエルは少し考えるように目を細め、それから肩をすくめた。
「もう気にしてねぇよ。むしろ、俺の方こそ悪かった」
「……え?」
予想外の返答に、思わず目を丸くする。
「お前の方が、ずっと辛かっただろ。なのに、俺は余裕がなくて、きつい言い方しちまった。本当に悪かった」
その声音には、取り繕いのない誠実さがあった。
「い、いや、俺こそ……身勝手なこと言って怒らせたのはこっちだし、謝られる筋合いなんて――」
「だったら、この話はおしまいだ」
ラエルはきっぱりと言った。
「これ以上続けたら、互いに“どっちが悪いか”探すだけになる。それより今は――これからどう生き残るかを考えようぜ」
「あ……ああ。そうだな」
その言葉に、胸の奥に溜まっていたわだかまりが、すっと溶けていく。
ラエルは俺より年下のはずだ。
けれど、その振る舞いは驚くほど大人びていた。
――こいつは、強い。
素直にそう思い、そして少しだけ尊敬の念が芽生えた。
焚き火の火が、パチリと音を立てて揺れる。
その暖かさの中で、俺たちはようやく「仲間」として同じ方向を見始めていた。