転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第3章ー8

 「『ほお? それは――私を殺す、という意味で受け取ってよろしいのでしょうか?』」

 

 「ああ。そのつもりだ」

 

 「ッ!? サダメ?!」

 

 エイシャだけでなく、ミオまでもが驚いた表情でこちらを見る。

 無理もない。だが、今さら逃げ道など存在しない。ならば戦って道を切り開くしかない。

 

 「『……私を殺すとは。随分と舐められたものですね』」

 

 「……」

 

 強気に言い放ったものの、勝機が薄いことなど自分が一番理解している。

 父を殺した張本人。あの父ですら敵わなかった相手に、今の自分が勝てるはずがない。

 

 それでも――引き下がるわけにはいかなかった。

 

 自分の未熟さゆえに、父も、村も、ラエルも、子供たちも救えなかった。

 今、残されているのは背後に立つミオただ一人。

 

 彼女だけは、何としてでも守りたい。

 だが現実問題、今の自分一人では守り切れない。

 

 「ミオ。二人であいつを倒す」

 

 「えっ……?」

 

 戸惑うミオ。

 当然だ。無謀に聞こえることは承知している。

 

 だが、彼女の治癒魔法と風魔法があれば――僅かでも勝機は生まれる。

 

 「策ならある。頼む。力を貸してくれ、ミオ」

 

 「……」

 

 咄嗟に組み立てた即席の策。成功率は高くない。

 それでも、やるしかない。

 

 だが――

 

 「『黒影《ダーシャ》双槍《ペスピア》』!」

 

 「!? 危ない!」

 

 「きゃっ!」

 

 ミオの返答を待つ間もなく、エイシャの影槍が襲いかかる。

 反射的にミオを抱き寄せ、脱兎跳躍で横へ跳ぶ。風を裂くように黒槍が地面を穿ち、土煙が舞い上がった。

 

 なんとか回避できた。

 だが、相手はもう様子見をやめたらしい。

 

 「『どうしました? 私を殺すのではなかったのですか?』」

 

 「くっ……!」

 

 逃げるか?

 だが、影魔法相手に逃げ切れる保証はない。

 

 時間を稼ぎ、勇者が通りかかる奇跡を待つか?

 だが、いつ来るかも分からない救いを当てにできる状況ではない。

 

 ――自分一人では限界がある。

 ならば、賭けるしかない。

 

 そう決意した瞬間――

 

 「……ごめん、サダメ」

 

 「えっ?」

 

 沈黙していたミオが、静かに口を開いた。

 

 「皆が殺されて、怖くて……もう終わりだって思ってた。

 でも、サダメはまだ諦めてないんでしょ?」

 

 「……」

 

 その言葉に、胸の奥が熱くなる。

 

 自分もかつては絶望していた。

 それでも、生きたいという意志を拾い上げてここまで来た。

 

 そして今。

 最後に残った希望は、目の前の少女だ。

 

 「……ああ。お前がいる限り、俺は最後まで諦めない」

 

 「ッ……!?」

 

 ミオの頬が一気に赤く染まる。

 しまった、少し臭い台詞だったか――と後から気づく。

 

 だが、ミオはすぐに真剣な表情へと切り替えた。

 

 「……教えて」

 

 「ん?」

 

 「作戦を教えて。二人で、あいつを倒そう!」

 

 「……ああ!」

 

 二人の視線が重なる。

 恐怖の中に宿る、小さくも確かな覚悟。

 

 ここから――反撃が始まる。

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