「『ほお? それは――私を殺す、という意味で受け取ってよろしいのでしょうか?』」
「ああ。そのつもりだ」
「ッ!? サダメ?!」
エイシャだけでなく、ミオまでもが驚いた表情でこちらを見る。
無理もない。だが、今さら逃げ道など存在しない。ならば戦って道を切り開くしかない。
「『……私を殺すとは。随分と舐められたものですね』」
「……」
強気に言い放ったものの、勝機が薄いことなど自分が一番理解している。
父を殺した張本人。あの父ですら敵わなかった相手に、今の自分が勝てるはずがない。
それでも――引き下がるわけにはいかなかった。
自分の未熟さゆえに、父も、村も、ラエルも、子供たちも救えなかった。
今、残されているのは背後に立つミオただ一人。
彼女だけは、何としてでも守りたい。
だが現実問題、今の自分一人では守り切れない。
「ミオ。二人であいつを倒す」
「えっ……?」
戸惑うミオ。
当然だ。無謀に聞こえることは承知している。
だが、彼女の治癒魔法と風魔法があれば――僅かでも勝機は生まれる。
「策ならある。頼む。力を貸してくれ、ミオ」
「……」
咄嗟に組み立てた即席の策。成功率は高くない。
それでも、やるしかない。
だが――
「『黒影《ダーシャ》双槍《ペスピア》』!」
「!? 危ない!」
「きゃっ!」
ミオの返答を待つ間もなく、エイシャの影槍が襲いかかる。
反射的にミオを抱き寄せ、脱兎跳躍で横へ跳ぶ。風を裂くように黒槍が地面を穿ち、土煙が舞い上がった。
なんとか回避できた。
だが、相手はもう様子見をやめたらしい。
「『どうしました? 私を殺すのではなかったのですか?』」
「くっ……!」
逃げるか?
だが、影魔法相手に逃げ切れる保証はない。
時間を稼ぎ、勇者が通りかかる奇跡を待つか?
だが、いつ来るかも分からない救いを当てにできる状況ではない。
――自分一人では限界がある。
ならば、賭けるしかない。
そう決意した瞬間――
「……ごめん、サダメ」
「えっ?」
沈黙していたミオが、静かに口を開いた。
「皆が殺されて、怖くて……もう終わりだって思ってた。
でも、サダメはまだ諦めてないんでしょ?」
「……」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
自分もかつては絶望していた。
それでも、生きたいという意志を拾い上げてここまで来た。
そして今。
最後に残った希望は、目の前の少女だ。
「……ああ。お前がいる限り、俺は最後まで諦めない」
「ッ……!?」
ミオの頬が一気に赤く染まる。
しまった、少し臭い台詞だったか――と後から気づく。
だが、ミオはすぐに真剣な表情へと切り替えた。
「……教えて」
「ん?」
「作戦を教えて。二人で、あいつを倒そう!」
「……ああ!」
二人の視線が重なる。
恐怖の中に宿る、小さくも確かな覚悟。
ここから――反撃が始まる。