転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第3章ー31

 教会を飛び出した後、自分は村人に頭を下げて頼み込み、なんとか一頭の馬を貸してもらった。

 事情を話すと、皆が快く背中を押してくれたのが、今でも胸に沁みている。

 

 リーヴ村を出発し、ドレーカ村の方角へ。

 道中、何度も休息を挟みながら、それでも馬を走らせ続けた。

 気が付けば、すでに二日が経っていた。

 

 「ふぅ……あと、もう少しか」

 

 親切な村人から渡された簡素な地図。

 それを頼りに進み、ついに見覚えのある地形へと辿り着く。

 

 「……ここには、いないか」

 

 馬を止め、周囲を見渡す。

 荒れ果てた大地。草木は焼け、土は黒く焦げついている。

 ――ここだ。

 自分とミオが魔物に襲われ、勇者が現れたあの場所。

 

 異様なまでの荒地が、戦いの激しさを今も語っていた。

 だが、そこに勇者の姿はない。

 

 「となると……あとは、あそこか」

 

 勇者が“急ぎの用”で向かった場所。

 真っ先に思い浮かぶのは、やはりドレーカ村だった。

 

 魔物の群れは勇者が討ち果たしたはず。

 村人は……自分とミオ以外、生存者はいないだろう。

 

 本来なら、それを勇者に直接伝えるべきだった。

 だが、自分たちは眠っていて、勇者は先へ進んでしまった。

 時間は有限。

 特に勇者にとっては、一秒の遅れが誰かの命に繋がる。

 

 それでも、確認は必要だったはずだ。

 村が空になれば、そこを新たな魔物や盗賊が根城にする可能性もある。

 だから勇者は向かったのだろう。

 ――自分が伝えられなかった代わりに。

 

 「……居てくれ。頼むから」

 

 胸の内に、正直な願いが滲む。

 

 話したいことがある。

 伝えなければならないことがある。

 そして何より――あの人に、ちゃんと礼を言いたい。

 

 すれ違えば、もう二度と会えないかもしれない。

 そう思うと、心臓が嫌に早鐘を打った。

 

 「急ぐか」

 

 本当なら、ラエルたちの墓にももう一度手を合わせたかった。

 だが、今は一刻も惜しい。

 自分は馬腹を蹴り、再び走らせた。

 

 ――どうか、間に合ってくれ。

 

 「はあ……はあ……」

 

 さらに半日。

 ようやく、ドレーカ村が視界に入った。

 

 しかし――

 

 それは“村”と呼べるものではなかった。

 

 建物は崩れ、柱は炭のように黒ずみ、地面は一面の焼け野原。

 かつて人の営みがあった痕跡だけが、無惨に散らばっている。

 

 「……本当に、変わってしまったな」

 

 自分が派手に戦ったせいもある。

 だが、それ以上に――ここで多くの命が終わったのだと、風景が語っていた。

 

 これでは、盗賊ですら住み着かないだろう。

 完全な死地だ。

 

 ――それでも。

 

 「あっ……!」

 

 焼け野原の中央。

 その中に、一人の人影が立っていた。

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