遺体を回収し終えた頃には、すでに空は夕焼けに染まり、太陽は地平線へ沈みかけていた。
村の中心付近――かつて人々が集い、笑い声があったであろう広場に、集められた遺体が山のように積まれていく。
数は二十を優に超える。
中には腐食が進み、形を留めていないものすらあった。
運ぶたび、鼻を刺す異臭と、崩れ落ちそうな肉体の感触が手に残る。
正直、何度も吐き気をこらえた。
それでも、途中でやめるわけにはいかなかった。
――これは、せめてもの贖罪だから。
これほどの人数を土に埋めるのは現実的ではない。
ラエルたちの時は、勇者の魔法で地面が大きく抉れ、埋葬が可能だった。
だが、今回は違う。
「……火葬にしよう」
勇者の判断で、遺体の下に薪が敷かれ、簡易的な火葬の準備が進められた。
「よし、これで準備完了だ。危ないから、少し下がってて」
「は、はい」
言われるまま、勇者の背後へと下がる。
風が止み、辺りは不自然なほど静かだった。
勇者は小さな炎を手元に灯し、それを薪へと投げ入れる。
「……今度こそ、安らかに眠ってくれ」
ぱちり、と音を立てて火が広がる。
一人、また一人へと炎が移り、やがて山全体を包み込む。
黒煙が立ち上り、焦げた匂いが辺りを満たす。
鼻の奥がつんと痛み、思わず涙が滲みそうになる。
「……」
自分と勇者は、並んで手を合わせた。
黙祷。
炎の揺らめきの向こうに、母の姿が重なる。
助けられなかった後悔。
父と共に眠らせてあげられなかった罪悪感。
――父の遺体は、結局見つからなかった。
一年以上が経過し、骨すら残っていない。
魔物に捨てられ、どこかで踏み砕かれたのかもしれない。
回収できた遺体は、この村の住人の三分の一にも満たない。
残りは村の外へ投げ捨てられ、野の魔物の餌となったのだろう。
考えただけで、胸の奥が煮えたぎる。
憎悪と吐き気が同時に込み上げる。
――なんて惨いことをする連中だ。
やがて炎が落ち着き、赤い熾火だけが残った頃、勇者がぽつりと口を開いた。
「本当は、このあとすぐに出立する予定だったんだがな。……君を、こんな場所に一人残すわけにもいかないし」
肩をすくめるような声音。
「まったく、予定が崩れちまったな」
「す、すいません……」
勇者はただ笑っただけだった。
それが余計に申し訳なく感じる。
けれど――
自分は、ここへ勇者を追いかけてきた本当の理由を思い出す。
「あの……勇者さん。どうしても、会ったら聞きたいことがあって」
「ん? 俺にか?」
「はい」
勇者は少しだけ目を細める。
「わかったわかった。で? 何を聞きたい?」
炎の残光が、勇者の横顔を赤く照らす。
その姿は、あまりにも遠く、眩しく見えた。
だからこそ――
自分は、胸の奥にずっと抱えていた言葉を、震える声で口にする。
「……どうしたら、貴方みたいな勇者になれますか?」