勇者と別れてから数時間後、何事もなくリーヴ村に帰還した。
「もう! 急に出て行ったから心配したのよ!!」
「ご、ごめんなさい」
帰ってくるなり、早速エリカさんからお叱りを受けた。
鬼の形相というほどではなく、ぷりぷりと頬を膨らませた怒り方なので、つい愛嬌を感じてしまう。
でも本人は本気で怒っているらしいので、余計なことは言わないでおこう。
心配していたというのも本心だろうし。
「ほら、ミオちゃんだって心配してたんだから、ちゃんとごめんなさいって言って!」
「ミ、ミオ。ごめん」
「……」
エリカさんの隣で、ミオも明らかに不機嫌そうに頬を膨らませている。
彼女にも謝ったが、返事はなく、ただじーっと睨まれるだけ。
ヤバい、本気で謝ってないのがバレたか?
確かに何も言わずに村を出たのは悪かったけど、そこまで怒られるようなことだったとは正直思っていなかった。
ちなみに、少し前に馬を借りた人にも謝ったのだが、その人は特に気にする様子もなく笑顔で許してくれた。
本来ならそっちの方が怒られて然るべきだと思うのだが……。
「いい? 外は危ないんだから、勝手に一人で出かけてはいけません!
せめて誰か大人の人に相談すること! 分かった?!」
「はい、わかりました」
エリカさんは怒りながらも、子供に分かりやすい言葉で諭してくれる。
手慣れた様子だが、こっちは中身がおっさんなので、妙な羞恥プレイをされている気分になる。
考えすぎかもしれないけど。
「よし! それじゃあ一緒にお風呂入って、キレイキレイしよっか?」
「はい……えっ?」
お叱りが終わり、風呂に入るよう言われたのだが、今『一緒』と言ったか?
聞き間違いか、それとも言い間違いか?
「お外出ていっぱい汚れたでしょ? 私がキレイに洗ってあげるから、早く行きましょ!
この間は眠った状態だったから手拭いで全身拭いただけだけど、ちゃんとしたお風呂は久しぶりかしら?」
「ッ!?」
どうやら言い間違いではなかったらしい。
金髪美人聖女と自分が一緒にお風呂? タダで?
というか、知らない間にエリカさんに裸を見られていたという事実に、今さらながら衝撃が走る。
前世も自慢できるようなものは持っていなかったが、キッズサイズのそれを晒したのはちょっと悲しい。
しかもその時の反応すら見れていないのがもどかしい。それはさておき、今度は本気で一緒に入るらしい。
ということは、エリカさんの裸を間近で見られるだけでなく、お互いの体を触ったり触られたりするわけで……
「ぶへぇっ?!」
「ッ!? ミオちゃん?!」
などと妄想に浸りながら教会に入ろうとした瞬間、背後から突風のような衝撃が襲ってきた。
教会の入り口付近で盛大にぶっ倒れる。
そのせいか、急に意識が朦朧としてきた。
「ふん!」
「ミ、ミオ、なんでお前……」
朦朧とする視界の前に現れたミオは、ざまあみろと言わんばかりに鼻を鳴らし、そのまま教会の中へ入っていった。
ひょっとして、邪なこと考えていたのがバレたのか?
しまった。下心が顔に出てしまっていたか。
「だ、大丈夫?! ミ、ミオちゃん、ちょっと待ってー!?」
一方、エリカさんは視界の外であたふたしている様子。
慌てた表情で自分とミオを交互に見ているのが容易に想像できた。
「……っかりして、……ダメくん?! ……!?」
その後しばらくエリカさんの声が聞こえていたが、徐々に遠ざかり、やがて完全に意識が途切れた。クソ、最後に、エリカさんとお風呂……入りたかったなぁ。
―転生勇者が死ぬまで、残り7793日。