転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第4章ー4

 「きゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

 悲鳴が、村の通りを切り裂くように響いた。

 

 騒ぎの中心から、大勢の人々が叫び声を上げながらこちらへ逃げてくる。村中が一瞬にして混乱に包まれていた。何が起きているのか確かめようと、自分は人の流れとは逆方向へ踏み込む。しかし、恐怖に駆られた人波を逆流するのは想像以上に難しく、なかなか前へ進めない。

 

 大きな爆発音は聞こえなかった。火事でもなさそうだ。

 ならば――魔物か?

 

 もし魔物が村へ侵入してきたのなら、自分でも対処できるかもしれない。魔物を殺すことには、十年前に嫌というほど慣れた。野生の獣だろうと、魔王軍の手先だろうと、村の人々に危害を加えるつもりなら容赦はしない。

 

 不意に、十年以上前の光景が脳裏に蘇る。

 目の前で父が殺され、母が引きずられていき、村の人々が次々と屠られていったあの日。悲鳴と断末魔、そして魔物たちの嗤い声が、耳の奥で再び鳴り響く。

 

 あのときの自分は無力だった。

 いや――無力である以前に、何もしようとしなかった。父を失った衝撃で思考が止まり、ただ立ち尽くしていた。

 

 二度と、あんな光景は見たくない。

 記憶こそ薄れつつあるが、「強くなりたい」というあの誓いだけは今も胸に残っている。だから、誰にも言わず剣術と魔法の鍛錬は続けてきた。どこまで通用するかは分からない。だが、あの頃の自分よりは確実に前へ進めているはずだ。実戦はしていない。エリカさんが心配するからだ。だが――今はそんなことを言っている場合ではない。

 

 「誰か、騎士団に知らせろ!」

 

 「でも、今からじゃ間に合わないんじゃ……!」

 

 「馬鹿! 何もしないよりマシだろ!」

 

 逃げながら怒鳴り合う村人たち。

 騎士団に報告するほどの事態……?

 魔物が一、二匹入り込んだ程度なら、村に滞在している冒険者へ依頼すれば済む話のはずだ。ということは、もっと深刻な何かが――。

 

 「いやぁぁぁぁぁ!!」

 

 「ッ!?」

 

 ひときわ大きな女性の悲鳴が聞こえた。逃げ遅れた人が襲われているのか。間に合え――そう願いながら、人混みをかき分け、必死に前へ進む。

 

 「はぁ……はあ……!」

 

 ようやく人の流れを抜けた。押し合いへし合いで息が上がっているが、構ってはいられない。早く、状況を――。

 

 「はっはっはっはっはっはぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 「ッッ!?」

 

 視線を上げた瞬間、自分は凍りついた。

 

 そこにあったのは、野生の魔物でも、魔王軍の魔物でもない。

 村を襲っていたのは――

 

 紛れもなく、人間の姿だった。

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