ホーゼンフェルト武芸帳 シュヴァルツェスマーケンEXTRA 作:燈夜4649
◇
「じゃあねー、アネットさんたち、また明日!」
などと、あたしらがクラスメイトにもどっぷり馴染んできた、今日この頃。
日本人は何かと世話や心配を必要以上に気にかけてくれていたが、それもおさまった頃の話である。
一見、余所余所しくなったようにも思えるが、そんな事は無い。
あたしらが話しかければ──話しかけなくとも、色々気にかけてくれるのだ。
日本人って優しい? 本当にそう? いやいや。これまたどうして。
あたしは思う。
そう、奥が見えない。
いつまでたってもお客様扱いなのには参るのだ。
あたしらが日本に来て、ある程度の時間がたったというのに。
でも、あたしにしてみれば、イングヒルトの爆弾発言が少ないだけでも安心なのだ。
で、そんなイングヒルトは今、日本人とあの西ドイツ人との間にある心の垣根を崩そうとしている。
西ドイツ人、キルケに対してはかなり距離を縮めているようで、あたしにとってはドキドキの連続であるには変わりないのであるが。まあ、もうギリの線や危ない線は、日記には書かないけどね!
そしてそんなこんなの数日後、ある日のことである。
「日本人って、なかなか距離を縮めてきませんわねアネット」
「うーん、イングヒルトは頑張ってると思うよ? あたしなんて剣道の一件以来、暴力
女扱いだし」
「あはは、アネットが強すぎるのが悪いんだよ。鍛えよ上腕二等筋!」
「なにおう!?」
などと、イングヒルトとバカをやっていたあたしは、校門前にて動かない人物に気がついた。
その人影は所在無くキョロキョロ。
でも、その人物の目はあたし達を見つけた瞬間、じろりと彼女らをねめつける。
「キルケ?」
何目立っちゃってるの? 今度は何? 剣道でまた遊ぼうって?
あたしがそのまま行こうとすると、彼女はあたしとイングヒルトの前に仁王立ち。
「決めてたの。私、あなたたちに負けたら、何か奢るって。いえ、アカに資本主義の素晴らしさを教えてやろうと心に決めていたのよ」
あたしとイングヒルトは立ち止まり、お互いに顔を見合わせる。
「え? 何してくれるって?」
「まあまあ、黙って付いてきなさいよ」
と、東ドイツ組はキルケに促されるまま、大通りに出てきたのである。
「どうしてあたし達が?」
「私たち、もう友達でしょ?」
あたしの問いにキルケの言葉。
どこかまだ、歯切れが悪い。
でも、あたしとキルケはイングヒルトの仲立ちで、両者勝負を矛を納めたはず。
変なの。
──なのだ。
────そう。
──────たぶん。