ホーゼンフェルト武芸帳 シュヴァルツェスマーケンEXTRA   作:燈夜4649

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お呼ばれ

 

街はいつものようにゴミひとつ無く、雑草もほぼ見かけない清潔そのものの道路を通り。

キルケに連れられて、あたし達は街の一角までやってきていた。

そして、暖色の壁をもつ、中から食欲を掻き立てる芳香を漂わせる店の前で止まる。

 

すかいてんぷる。

 

食べ物屋らしい。市場や後衛食堂などとは違う雰囲気。

洋風の外観が目立つ、ファミリーレストランだそうだ。

うん、フランチャイズのチェーン店だそうである。

西では知らないが、東にはもちろん、個々の系列店など存在しない。

 

「ささ、入って入って」

 

文字通り、キルケに押されて入る。

たちまちあたし達の鼻を芳香がくすぐる。

 

──ぐぅ。

 

あたしの腹の虫が鳴っていた。

 

「あはは、正直ね、アカは。まさか食事の前に、既に資本主義に負けるだなんて」

「ち、違うわよこれは!」

 

あたしがキルケに噛付く。

何言っちゃってくれてるのよこの女!

 

「まあまあ」

 

と、イングヒルトが二人を抑え。

 

「食事に誘っていただいたんでしょ? そうならば、早く食卓に付かれませんこと?」

 

あたしとキルケはお互いの顔を見合わせ無言となる。

 

──ぐぅ。

 

そう。

キルケの腹も鳴っていた。

 

「さ、好きなもの頼みなさいよ。今日は私があなたたちに奢るわ」

 

と、カラフルなメニュー表を広げつつ、キルケは得意そうに言うのだった。

 

 

「ショルフハイデ風イノシシのロースト……でございますかお客様ぁ」

「そうよ。三人前ね」

 

キルケが注文している。

肉料理。ありがたい。はっきり言ってご馳走だ。

ただ、あたしもイングヒルトも顔には出さないが。

 

「お客様、そちらの商品は当店では取り扱っておりません。このメスガキ外人ども、日本に来たなら日本料理頼めやボケェ」

「は?」

 

あたしは空耳を聞いたような気がした。

 

「いえ、同じクラスの肉料理でしたら、こちらの和牛ロースステーキがお勧めです」

「そ。ええと、二人は?」

 

「あたし達が日本食に詳しいとでも?」

「剣道やってるんでしょ? 剣術でしょ? 忍法まがいも」

 

キルケが東ドイツ組をバカにして言う。

 

「それとこれとは別」

「そうです。日本の料理は馴染みがありませんわ」

 

「ステーキって和食なの?」

「おいしそうだけど、確かに違うわね」

 

などとキャイキャイ揉めていると、店員がキレ出した。

実に日本人らしくない行為であったといえよう。

 

「このバカたレェ! ここは洋食レストランじゃい! 日本の料理は和洋中、全て日本風に置き換えられて、日本人好みの味になるように改良されとるんじゃい! 早よう決めぃ、この外人ども! こちとら忙しいんじゃい!!」

 

 と、あたしは小柄な店員が、その体の大きさに似合わぬ大声で叫ぶのを聞いた。

 

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