ホーゼンフェルト武芸帳 シュヴァルツェスマーケンEXTRA 作:燈夜4649
◇
ブルー。
最近のあたしの色を例えれば。
ブルー。
そう、ブルー。
だから、親にも怒られる。
あたしは留学の話を両親に話したのだ。
すると、相談になるどころか開口一番がこれだった。血を分けた両親なのに!
「こら、アネット!」と。
「ちぇ、こんなことまで小声で話さなきゃいけないなんて」
あたしはこれで数度目になる自身の日本への留学の話を両親に繰り返す。
もちろん、父母もとっくに知ってる情報ではあるのだが。
何度も繰り返しているのだから当然である。
うん、家族会議は重要だよね。
でも、両親が密告者だったとしたら?
コラボレーター?
い、いや、それは流石に無いだろうと思いたい。いや、祈りたい。ああ、神様なんて
いないんだっけ。非科学的だよね。
「ここではな、沈黙は金だぞ、アネット?」
父はタバコを吸いながら。
「そうよアネット。正しい考えと思想を持ちなさい。私からはそうとしか言えないわ」
母はパンをちぎりながら。
「わかってるわよ、お父さん、お母さん」
そんな忠告を前に、あたしはただ、声を潜めて心を殺すしかない。
あたしは両親を信じたい。
でも、繰り返しになるけど両親のどちらかが、いや、両方とも密告者だったなら。
──冗談ではない。
そう、冗談ではすまないのだ。
あたしに降ってわいた、この日本留学の話は。
「その旧貴族、ブロニコフスキーというのだろう?」
「ええ」
「で、あなたはその子の大のお友達なのよね?」
「そうよ」
「……光栄なことよ?」
「そうだぞ? 国家を代表して行くんだ。東ドイツの素晴らしさを西側に伝える光栄な立場だぞ?」
「そうだけど!」
「「しっ!」」
父母が同時に人差し指を口の前に当てる。
なに事か? 当たり前じゃない、家に盗聴器でもあったら即アウトなのだ!
両親は当たり障りのない事を繰り返している過ぎないのだ。
一線を越える発言は無いだろう。
「アネットは運が良いわね」
「そうだぞ? それでこそ私達の自慢の娘だ。素晴らしい機会を与えてくれた党と国家に感謝しなければな」
「……むぅうぅ……!」
「旧貴族には社会主義の本質を理解できないとされている。そんな相手を教化できるのだ。光栄な話だぞ? 我が家の党と国家への忠誠を示すまたとない好機だ」
「何よお父さん、そんな言い方!」
「「しっ!」」
ああ、またこれだと思う。
どこに盗聴器が仕掛けられているか、そして耳をそばだてているのかわからない。
いやだいやだ、こんな警察国家は!
好きに言いたいことも言えないなんて!!
我慢の限界か、あたしはガタリと食卓を立つ。
「「アネット!!」」
「……大丈夫よお父さん、お母さん。あたしは誰の期待も裏切らないから」
当然のようにあたしは腹を立て。
実にムカムカする。誰にこの怒りをぶつけたらいいの!?
で、あたしは物に当たることにした。あたしは自室の扉を開けては乱暴に閉める。
もちろん、『バタン!』と言う激しい音と一緒にだ。