ダンジョンから帰ったら五十年経ってたんだが。~え?昔の仲間が今や大手ギルドの代表?なにそれ知らん……こわ……~   作:蝉時雨

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第十三話は悪巧みと共に

 さて、この状況はどうすれば良いのだろうか。

 

「旦那ぁ、たしかに俺ぁあんたにスライムの調査もついでにして欲しいとは思ってたさ」

 

「うむ、うまいな。諸君らは良い料亭を知っているのだな」

 

 ひとりは酒を飲みながらこちらに苦言を繰り返し、もうひとりはただひたすらに運ばれてくる料理に舌鼓を打っている。

 オレはと言えば、話半分に飯を頂いている。

 肉が実にうまい、良い店だ。以前連れていかれた日本料亭と同等か、それ以上にも感じる店だからあまり味がしないのは秘密だ。

 

「旦那、俺の話聞いてんのかぁ? 俺らは酔うこたぁねぇだろうから、聞いてるよな?」

 

「ふむ、次はこの料理を頼もう。店員を呼ぶには……ふむ、このパネルか」

 

 お前ら自由すぎないか。

 おかしいな、どうしてこんな事になってしまっているんだ。

 いや、友と飯を食うのはとても良いのだが、どうしてこうも自由なのだ。

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 迷路を歩く複数の足音。

 

 教団の研究室と隠し通路を抜け、『埼玉・第四扉』の中層から浅層に通じる道を清吾を先頭に進んでいる。

 拘束具――装着された相手の魔力を媒介に拘束力を強めるもの――を手足に嵌められた姫野を背負っている。

 

「田中殿、よろしければ拙者が変わろう」

 

「むっ、良いのか葛城殿」

 

「うむ。田中殿は戦闘もあってお疲れであろう。ここはなにも力になれなんだ拙者に任せて欲しい」

 

 呑気に寝ている姫野を渡せば、葛城殿は小脇に抱えて運び始める。

 実年齢はわからないが、体が小さいのもあって実に軽い。

 ちゃんと飯は食っていたのかと、つい元々の敵ながら心配をしてしまいそうになるのが、オレの良くないところなのだろう。

 

 さて、手持無沙汰になってしまったな。

 このあたりの異形も、この集団――なんと総勢十五名――の前では形無しだ。というよりも、先頭を進んでいる清吾が率先して狩り尽くしているのもあって、周りの者も警戒はしているだろうがオレと同じ手持無沙汰のようなものだ。

 

 : 帰りは平和でよかった

 : さすがは日本を背負ってきた男、動きが迅速すぎる

 : せーいちろー昔っから対応速かったけど、今回はあまりにも異常だったな

 : パパ! せーいちろーから旦那って呼ばれてたけどお知り合いだったのん!?

 : そうそこ! 我々は詳しい説明を求めている!

 

「むっ、誠一郎。すまんが答えてもらえるか」

 

「ん、なんだい旦那。あー、俺と旦那の関係か」

 

 配信はオレのものをつけて、以前花依殿がやってくれていたようにSF映画のようなホログラムを皆が見えるように表示している。

 他の者たちは非公開なるもので回しているらしく、その話も以前聞いたようにも思うがよくわからん。

 だが、選択肢として選べるのは良いことだ。

 

「どうするか、ここで言っちまってもいいんだが……ちょっと悩ましいところだわな」

 

「あまり騒ぎ立てるほどのことでもないのだがな」

 

「旦那はそうでも世間的にはあれなんだよ。まぁ諸君、俺と旦那は古なじみってやつだ。ちーっと歳は離れてるように見えるけどな」

 

 : なんだそれはー!

 : 説明になってないぞー!

 : そーだそーだー!

 : でも所属先のギルド長と仲良いのは良いこと

 : ↑まぁ、それであーだこーだ言ってる層も一部出て来るやろな

 

 ここでは語らないことにしたらしい誠一郎は、腕を組んで悩んでいる。

 おそらくだが、これからのことでも考えてくれているのだろう。そのあたり、本当にいつまでも頭が上がりそうにないな。

 

「田中殿、良いだろうか」

 

「もちろんだ。なんだろうか、葛城殿」

 

 姫野を肩に担ぎながら、真剣な眼差しを送ってくる葛城殿に少しばかり緊張をしてしまう。

 なぜだか、こうして葛城殿に見つめられていると真剣を向けられているかのような気分になるのだ。

 

「救援に向かう道中、田中殿のご活躍を配信にて拝見させて頂いた。相当な腕前とお見受けする」

 

「むっ、そうであろうか。オレなどまだまだ未熟なところが多いのだが」

 

「あまりご謙遜召されるな」

 

 葛城殿の苦笑が見える。

 謙遜をしているつもりはないのだが、過度な謙遜は傲慢であると聞いたこともある。

 己を鑑みるべきかとも考えるが、事実まだまだ未熟という認識がが変わることは無いだろう。

 

「もちろん全てを見させていただいたわけではない。だが、その上で――」

 

 その彫りの深い顔から苦笑が消え、凄みのある圧を感じるものになる。

 この御仁は――なんだかオレの内心まで引っ張られていそうだが――本当にこの時代の人間なのか疑わしいな。

 

「――ぜひ、手合わせ願いたい。無論、当方としてはいつでも大歓迎だ。なんなら帰還後にでも――」

 

「っとー、マサ。そいつぁダメだ」

 

 オレと葛城殿の会話に、コメント欄とやり取りしていた誠一郎が割って入る。

 それにしても、こいつはギルド長としての顔はどこに捨てて来たんだ。

 

「なぜであろうか、師匠」

 

「お前が今さっき自分で言ってたろうが。旦那は――」

 

 待て。

 オレの耳がおかしくなったのか?

 今、葛城殿は誠一郎のことを師匠と言ったのか?

 

 大きな男になったものだ、頭が上がらなくなってしまったなどと思っていたが、ここまでの男を育てていたとは。

 前に若者たちがぬるま湯に浸かっているやら、俺は伝説にやら言っていた癖に、ちゃんとやることはやっているじゃないか。

 

「――いくらお前がSSランクとして戦闘力だけはトップって旦那? どうしたよ」

 

 誠一郎の肩を掴む。

 オレは今、とても感動しているのだ、誠一郎。

 

「はっ! まさか旦那も戦いたいとか――!」

 

「誠一郎……お前は凄いやつだ……っ!」

 

「…………あん? うおっ、力つよ!?」

 

 姫野と戦った部屋で葛城殿から挨拶を受けた時に彼がSSランクであると聞いてはいた。

 そして、彼のその立ち振る舞いから纏う空気など含めて誠一郎の隣に立てる人物であると勝手に頷いていたがしかし。

 なんとその生みの親とも言える者が、我が友だとは。

 

「……本当に、頑張ってきたんだなっ!」

 

「やめろって旦那! たく、なんなんだ」

 

 : あれあれー? 顔が赤くなってるぞー?

 : ん……? ┏(┏^o^)┓

 : ↑鎮まりたまえ

 : 褒められて照れちゃった?

 : お前ら七十越えた爺に夢見てるのか……?

 

 ちらりとコメント欄を見れば、そちらはそちらで盛り上がっている。

 どうだ諸君、我が友はすごいやつだぞ。

 いや、オレよりも彼らの方がわかっているのか。

 ふふ、なんだか誇らしいな。

 

「はぁ……あれか? 俺がマサの師匠ってのにでも興奮してんのか?」

 

「さすがだ誠一郎。まさにそれだ」

 

 彼は「そのことなぁ……」と言いつつ、頭を搔く。

 なんだ誠一郎、言いづらいなんてことはないだろうに。

 

「俺ぁ別になんもしてねーよ。マサのヤツが勝手に育っただけだ」

 

「――そのようなことは決して。師匠には冒険のいろはから教えを受けたことで、今の拙者となれた次第」

 

「お前もそこに乗ろうとするなマサっ!」

 

 そんなに恥ずかしがることはないんだぞ、誠一郎。

 立派な後進が育つことは、素晴らしいことでは――。

 

 : 移転前の『Snow』本社前に葛城氏が三日三晩居座った事件好き

 : 今でも語り草なんだよなぁ

 : 通報されて警察が来ても動かなかった男だ、面構えが違う

 : 渋々せーいちろーが応じて今や押しも押されぬ師弟になってるの好き

 : もはや伝説なんだよなぁ

 

 ――そんなことをしてしまっていたのか葛城殿。

 

 コメント欄から目を離し、件の人物を見遣れば露骨に目を逸らしている始末。

 弟子入りしたかったのだろうとは思うが、通報されるのはさすがにどうなのだ。

 

「…………拙者も、あの時は若かったゆえ」

 

「まだ三十にもなってないガキンチョがなに言ってやがんだ。いつの間にか古風な喋り方にもなってやがるしよ」

 

 手のかかる弟子、といったところか。

 だが、誠一郎から嫌な感情がしないあたり、満更でもないらしい。

 手のかかる子ほど可愛い、とでもいうやつなのだろうか。

 

 実に、実に良いものだな。

 先に旅立った友らよ、見ているか。

 我らが戦友のひとりは、オレなんかと比べ物にならない程に立派な男だぞ。

 これから先も、頭が上がることはないな。

 

「はーあ、こんなことなら声掛けなけりゃよかったか」

 

「むっ、拙者は嬉しかったが……」

 

「ん? わざわざ葛城殿を連れてきたのか?」

 

 誠一郎は半目でコメント欄を見ながら続ける。

 

「ちと集まりがあったんですよ。ちょうどそこにマサの奴も居たもんで、救援に行くなら戦力のひとつも多けりゃいいってことでね」

 

「うむ。久方ぶりに他の者らとも会えて嬉しかった」

 

「めんどーなだけだけどな。ああそうだ旦那――」

 

 思い出したかのように名を呼ばれ、声の主に視線を向ける。

 そこには――。

 

「――ちと、旦那の持ってる前の探索者証を預かってもいいか? 今回の件も含めて、諸々つついてみる下地が整いそうだからよ」

 

 ――イタズラを企む悪ガキのような笑みを浮かべた誠一郎。

 

 インベントリから五十年前まで使用していた黒い探索証を取り出し、そのまま彼に手渡す。

 

「おっ、話が早い。ま、吉報を待てってやつだわな」

 

「うむ」

 

 誠一郎ならば、悪いようにはしないだろう。

 どんな吉報かはわからないが、少しばかり胸が踊るな。

 

「……おお、それが件の」

 

「おいマサ、あんまり口を滑らせるなよ」

 

「委細承知。ご安心召されよ」

 

 彼らのうちでなにかやりとりがあるらしい。

 先程話に出た集まりでオレのことでも話をしたのか。

 ふむ、一言くらい言っておいてもいいだろう。

 

「誠一郎、オレは目立つことが嫌いだぞ」

 

「知ってるよ。だからこうして――いや、細かい話はこっから出たらな。遅い時間までやってる良い店が――」

 

「――ングぉっ……はっ! ボクはいった気持ちわるううおおぉぉろろろろえええぇぇぇぇっ」

 

「ぬっ!?」

 

「――ぇぇぇぇえええぶへっ!?」

 

 誠一郎と言葉を交わしていると、葛城殿が抱えていた姫野が起きたそのままの勢いで虹を作り上げてしまう。

 幸いなことに、抱えていた腕を解いてその場に投げ出して距離を取ったことによって、葛城殿への直接的な被害は微々たるもので済んだようだ。

 

 このままでは窒息してしまうだろうに、仕方がない。

 彼女に近づき、少し体勢を整えてやる。

 

「ぅぅぉぉろろ……んぅ……」

 

「む、落ち着いたか」

 

 虹の跡から離して壁に寄りかからせ、話が出来るようにしてやる。

 多少鎧が汚れてしまったが、あんなことで死なれでもしたら苦労が水の泡だからな。

 

「んあぁ……キミはっ!」

 

「改めて田中次郎だ。姫野椿でよかったな?」

 

「……おい旦那」

 

 誠一郎、お前もわかってるだろう。

 この女はただ死なせるには惜しい。

 なにより、オレはひとつの可能性を見てるんだ。

 

 耳元の機械の電源を落とし、誠一郎と視線を合わせる。

 

「――はぁ……わかったよ。なんかあるんだな、旦那」

 

「――ああ、すまんな」

 

「たく……、ほらお前ら離れて周囲の警戒だ。ダンボーも預かってくからな」

 

 周囲に集まって臨戦態勢を取ろうとしていた者たちを引き連れ、彼は離れていく。

 やはり持つべきは誠一郎のような友だな。

 

「むぐぐぐ……っ! 手足を拘束したボクと二人っきりになってなにをしようってのさっ! 魔力も使えないしうがーっ!」

 

 屈んで、彼女と目線を合わせる。

 イアヌス教団の情報はどちらにせよ誠一郎のやつがあの手この手を使って抜き出すだろう。

 その情報も大事ではあるが、戦っている中で別の可能性に気がついたのだ。

 

 彼女――姫野椿は自称天才であり、マッドサイエンティストであろう。おそらく、今いる『埼玉・第四扉』の生態系の異変も原因はこの女だ。

 さらに、今はアメリカの地にジェイと共にいるであろうローズと同様に、複数属性の魔法を操る才に合成魔法まで扱えるときた。

 ならば――。

 

「ぼ、ボクになにかしたらヤーナクンたちが黙って――っ!」

 

「なぁ、姫野椿――」

 

 ――わざわざ生け捕りにしたのだ。

 

「っ! な、なんだい!? 痛いことしてもボクは――っ!」

 

「――魔力によって凍結された人間を救う方法について、なにか知っているか?」

 

 骨の髄まで有効活用せずして、どうするというのだ。

 

 

 

 ■■■

 

 

 

「――さて、そろそろ飲み食いに雑談はいいだろ。本題を話そうと思うんだが、旦那もマサもそれでいいか?」

 

「もごごもご」

 

「マサはさっさと口の中のもの片しとけ」

 

 グラスに注いだビールを飲めば、口の中に苦味が広がって気持ちのいい喉越しと共に降りていく。

 やはり、いくつになっても仕事終わりのビールというものは素晴らしいな。

 

 さて――。

 

「オレもそれで構わん。誠一郎の愚痴は聞き飽きたしな」

 

「あん? 旦那、明日にゃ高倉からまた絞られるぞ?」

 

「……………………いいから本題に移ってくれ」

 

 この頭痛は酒のせいだ。

 間違いない、断じて酒のせいなのだ。

 

「旦那が姫野とかいう女と話した内容も気になるが、まずはこっちの話でいいか?」

 

「…………うむ」

 

「ははっ、旦那にも怖いものがあって安心ってやつだ。こっちの話ってのはオレとマサが行ってた集まりの件だ」

 

「もご」

 

 葛城どのはどれほどの肉を詰め込んだのだろうか。

 頬がリスのように膨らんでいるが、あれは食べ切れるのか。

 

「実は国内のSSランク全員集めて集会を開いてきたんだよ。んで、そこで旦那の情報を初お披露目してきたってわけだ」

 

「なるほど。それで葛城殿……も……」

 

「――――っ!!」

 

 おい。

 おい、誠一郎。

 隣だ、隣を見ろ。

 

「おう、そういうこった。旦那の素性を明かして、おまけにこないだの特別禁忌ソロ討伐ときた。旦那を認めさせるのに苦労はしなかったさ。なぁ、マサ」

 

「――――」

 

「おう、そうだろうそうだろう!」

 

「――ゴフッ!? ひゅぅ……ひゅう……」

 

 誠一郎が葛城殿の背中を叩いたことによって、葛城殿は九死に一生を得ていた。

 よかった、ここでその国内のSSランクのひとりが危うく脱落するところだったぞ。

 

「あとはリモートでジェイのやつとローズが助言をくれたのもデカかった」

 

「ほう、あのふたりが」

 

「おう。前に旦那の話を向こうにしたんだが、その時になにか力になれればってことでついでにな」

 

「……ふぅ……『第八の英雄』の最後のお方と――」

 

「――おいマサ」

 

 誠一郎の雰囲気が瞬時に変わる。

 先程までは和やかだったが、今は獲物を狩る狩人の目をしている。

 

「その呼び方だけはやめろって話したよな? 俺だけじゃねぇ、旦那に対してもだぞ?」

 

「――あいすいませぬ。浅はかでした」

 

「何度言やわかるんだ、お前は」

 

 やはり、誠一郎も同じ気持ちであったか。

 今回もまた救援隊の若い衆を連れていってこの場にいない清吾と再会したときも話をしたが、オレたちは英雄などではない。

 

 アメリカという国の要請を受けて各国から寄せ集められただけの集団だったのだ。

 その中で多くの――二十五名の仲間たちの屍の上に、今のオレたちがいるだけのことに過ぎない。

 

 そんなオレたちが、『扉』を攻略しただけで英雄などと呼ばれていては、他の仲間たちに顔向けなど出来ないんだ。

 

「んで、話を戻すぞ。あとは今回の件と旦那の過去の探索者証、それとここまでに配信を通じて稼いだ民意を使って――」

 

 誠一郎はまた悪巧みをする子供のような表情となる。

 随分と表情豊かで、様々使い分けるのが上手いやつだ。

 

「――旦那を元の鞘に収める」

 

「ふむ。オレは今のままでも――」

 

「――田中殿」

 

 オレの言葉を遮り、肉に苦しめられていた葛城殿が口を開く。

 

「力を持つものは、それ相応の立場に居られなければ意味がありませぬ。田中殿には、それを自覚願いたい」

 

「……ふむ」

 

 そういうものなのだろうか。

 オレにはとても、誠一郎や葛城殿の思う力などないと思うのだが。

 

「それにだ、旦那。旦那が元の鞘に収まりゃ、アメリカにだって行けるようになる」

 

「……なに?」

 

 下げかけていた視線を、誠一郎に向ければ得意げに嗤う顔。

 

「前は難しいって話をしたが、それはSSの保証が出来なかったからだ。最高位探索者ってのは、色々と無理が利くのよ」

 

「――ならば、躊躇する必要も無いな。手間が掛かるだろうが、よろしく頼む」

 

「おう、任せときな」

 

 グラスを掴み、中のビールを再び口に入れる。

 多少ぬるくはなっていたが、火照りかけた体を冷ますには十分だ。

 そうか、アメリカへ――アリアの元に行けるのか。

 

「さて、こっちの話はこれで終いだ。次は旦那のほうを聞かせてくれ」

 

「わかった。アメリカ行きの話に繋がるのだがな――」

 

 椅子を引き、座り直す。

 

「――アメリカ行きに、姫野椿を連れていくことは可能だろうか」

 

「………………は?」

 

 ふっ、誠一郎。

 

 お前の素っ頓狂な声と顔を見るのは、これで何度目だろうな。

 

 

 

 ■■■

 

 

 そこは鉄に囲まれた地下深く。

 手を繋ぎながら、部屋の中央に置かれた氷の塊を見守るふたりの姿があった。

 

「……アリア、もうすぐジローのヤツが来てくれるぞ」

 

「……たくさん、お話しましょうね」

 

 ふたりの声は広い部屋に虚しく響き渡る。

 返す声はなく、静かに機械の鳴らす音のみが聞こえるのみだ。

 

「さて、いつまでも暗い顔してちゃダメだよね」

 

「……ええ、そうね」

 

「久しぶりに会うんだ。盛大なパーティの準備をしないとな」

 

 振り向き、歩き出すその顔には。

 

 涙のあとなど、ない。




ふぅ……かなり良いとこまで来れた気がする……
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