ダンジョンから帰ったら五十年経ってたんだが。~え?昔の仲間が今や大手ギルドの代表?なにそれ知らん……こわ……~   作:蝉時雨

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第十九話は薄氷と共に <Ⅰ>

 無機質な通路を、ローズと共に歩いていく。

 

 右手側には等間隔で鉄格子の嵌められた扉があり、エレベーターから降りた先、六つ目の扉の前で立ち止まる。

 ほかのものと大差はなく、ただ扉に取り付けられた鉄格子の向こう側から甘い香りが漂ってくる。

 

「……ここで合っているのか?」

 

「ええ、彼女はここにいるわ。いろいろ要望を言ってくれて、どこまで図太い娘なのかと思ったわ」

 

 ローズは穏やかに微笑んでいたが、声の裏にどことなく怒気を孕んでいる。

 この甘い匂いもしかり、どれだけの要望を出したのだろうか。

 鉄格子から見える牢の中は、まるで高級旅館と見紛う程の完成度を誇っている。

 

「――姫野椿」

 

 鉄格子ごしに呼びかけても、返事はない。

 代わりに聞こえてくるのは、どこまでも楽し気な鼻唄。

 

「――小娘が…………」

 

 隣から聞こえてきたどこまでも黒い声に対しては、聞こえなかったフリをするのが良いだろう。

 そうに違いないとも。

 魔力で衣服や髪がたなびいているローズなどオレは知らん。

 

 それにしても、いったいどれほどの要望を通したのか。

 姫野椿がすごいのか、ローズをはじめとした一派が推しに弱いのか。

 それとも、誠一郎のほうから事前になにかを言われたのか。

 

 真相はオレの知るところではなく、推し量ることしかできない。

 いや、知らないことこそ幸せなのかもしれない。

 

「ふーんふふーん。あり、ジロークンと――」

 

 牢とは呼べない内部、遠目に見えていたソファの背面。そこから起き上がる女性――姫野椿の姿が見えた。

 寝ていたのだろうか。こちらに向かってくる彼女の服装は、部屋で過ごすためのゆったりとしたデザインのもの。そこだけを切り取るのであれば、害のない小さな子供という印象を受ける。

 

「――魔力で年齢を誤魔化してるおばさんだ! ぷぷ、おばあちゃんは必死だよね」

 

「――二度と陽の光を浴びられない身体にしてあげようかしら?」

 

 やはり魔力で年齢をなんとか出来る――いや、いや。そんなことよりも、命の危険を感じるぞ。

 おかしい、矛先はオレに向いていないはずだと言うのに、肌が粟立つのを止められん。

 しかし、肌で感じるローズの魔力は特段乱れていない。

 

「ローズ……」

 

「ふふっ、やっぱりジローは騙せないわね」

 

 隣に視線を向ければ、カラカラと笑うローズの姿。

 

「こうすれば、あの人ならいっつも機嫌をとってくれるんだけれどね」

 

 ジェイ、お前も苦労しているな。

 昔は魔法を投げつけられ、今はいつ来るかもわからないイタズラへの対処か。

 苦労する星の下に生まれてしまったお前に、同情を禁じ得ないよ。

 

「ぷぷぷー、ジロークン一瞬ビビってたでしょ! これくらいがレディとしてのタシナミってやつだよー!」

 

「あら、小娘の癖によくわかってるじゃない」

 

「むっ。どこかのおばあちゃんの分かりやすすぎる魔力のせいじゃないかなー?」

 

「気づいてもらうためにやっているのだから、当然よね?」

 

「むきーっ! なんか腹立つ!」

 

 扉の外と中とで隔てられた空間で、一方は地団駄を踏み、一方は余裕綽々といったように微笑む。

 ローズは勝気な娘だったように思うが、時というのはこうも人を変えるものか。

 大人としての色気と年季が――。

 

「ジロー?」

 

「……むっ」

 

 般若を見た。

 

 オレはなにも考えていない。

 考えていないとも。

 女性の年齢を考える愚行など、するはずもないのだから。

 

 ひとつ咳払いを挟み、鉄格子越しに姫野へと声をかける。

 

「姫野椿、例の件だ」

 

「んあーっ! ああ、聖女チャンの話ね?」

 

 身長の関係上、彼女の顔を鉄格子越しに見下ろす形となる。

 相変わらずの巨大な丸メガネの下の目は、静かにオレを見返していた。

 

「現物見たわけじゃないから、今はなんとも言えないよ?」

 

「それでいい」

 

「んー、ジロークンとダンジョン内で話したこととあんまり変わらないんだけどなぁ」

 

 姫野は言葉を発しながら、牢の中から椅子を持ってくる。

 

「ま、いっか。単純だよ、周りの氷に宿ってる魔力を放出させればいいんだよ」

 

「それは私も考えたわ。でも、本人と魔力の繋がりが強いのよ」

 

「それで本人にも影響があるって話でしょ? それこそ単純な話だよ」

 

 姫野は人差し指を立てながら、言葉を続ける。

 そこには普段のマッドサイエンティストな気配などなく、一研究者としての顔を覗かせていた。

 その瞳には、たしかな光が宿っている。

 

「放出させながら、本人と氷との魔力パスを切ればいいんだよ」

 

「それも考えたわ。でも、それだけ魔力に深い造詣を持つ魔力使いなんてなかなか――」

 

「いるじゃん」

 

 姫野の指がオレのほうを指す。

 まさか、この女は――。

 

「あの盾って魔力で操作してたんでしょ? 化け物みたいな魔力操作精度持ってるじゃん、ジロークン」

 

「――――」

 

 ローズの息を呑む音が聞こえてくる。

 

「――オレが?」

 

「うん。ていうか、自覚してるでしょジロークン。そうじゃなきゃ、あんなに自由自在に分割した盾操れないだろうしさ」

 

 たしかに、オレは人よりも魔力操作の才能という一点においては抜きんでている自覚がある。

 研鑽を積み、魔力操作精度という面でもローズにも負けない自負がある。

 しかし、魔法というものを扱うことの出来ないオレに、魔力パスを切るなどという芸当が可能なのか。

 

「どうせ、ジロークン並みの魔力操作できる人がいなかったんでしょ? イチロークンも悪くはないけど、ちょっと甘いところあったからね」

 

 「飛行機の中でブロッコリー食べさせようとして、余計な魔力使ってたしねー」と宣うのは姫野。

 

「ジローの魔力操作について同意見ね……どうして気が付かなかったのかしら……」

 

「見慣れてたんでしょ、どうせ。昔の仲間らしいもんね」

 

「それなら、私で氷を支えながら放出にも手をつければ……いいえ、危険すぎるわね。手が足りな――」

 

「僕も協力するよ?」

 

 姫野の言葉に、オレもローズも釘付けになる。

 願ったり叶ったりではあるが、この娘は元々敵。

 いったい、なにが目的なのか。

 

「あー! なにか下心ないのかって顔してる! もうっ! 純粋な知的好奇心だよっ!」

 

「――信じられないわね」

 

「うぐっ」

 

 ローズに同意だ。

 ここまで協力的に情報を出してくれるのは助かるが、現場で協力をするというのには疑うしかない。

 それに、元々教団の人間は氷漬けになったアリアを連れ去った過去もある。

 

「……から……」

 

「なにかしら? よく聞こえないわ」

 

 顔を俯け、小さな声を発する姫野。

 ローズに突っ込まれ、肩を揺らしたかと思えば、勢いよく顔を上げる。

 その顔は――。

 

「――やさしく、いろいろしてもらったの……はじめて、だったからっ!」

 

 ――赤く、恥じらいを感じさせた。

 

「ヤーナクンとかもそりゃ優しかったけど、それは僕の頭が目当てだっただけだし……こんなに色々融通してもらって、敵なのに……」

 

 瞳はせわしなくオレとローズと虚空を行き来し、ひとところに固定されない。

 その声は震えていて、先ほどまでの研究者としての顔すら今は窺い知ることが出来なかった。

 

「それに……ここの人たちは、僕に酷いこととか、しようとしないから……さ」

 

「ひどいこと?」

 

「……うん。出来ないから、我儘だからって、殴ったりしないし……なにより――」

 

 また俯く、小さな体。

 

「――僕の話を、ちゃんと聞いてくれる、から……」

 

「ふむ。そこまで聞いていた覚えはないのだが」

 

「ジロークンはハクジョーだからしーらない! 昨日だってマサクンがたくさんお話してくれたのに!」

 

 昨日、途中でエレベーターを降りた葛城殿がちゃんと相手をしていたのか。

 てっきり――。

 

「ござるござる言ってるし、たまになに言ってるかわかんなかったけど!」

 

 ――いや、やはりか。

 葛城殿はどこか隙のある人であり、オレが言うのもなんだが天然というものなのだろう。

 それでいて体幹がブレているところを見たことがなく、魔力の揺れも感じたことがないから、実力自体はあるのだろうとは思っている。

 

 人間というものは正しくコミュニケーションを取り、正しく安心できる環境こそ居心地が良いものである、というような話を聞き齧ったことがある。

 思えば、以前盗み聞きしたヤーナと姫野の会話は実務的なものが多かった。姫野が冗談めかして言った言葉も、ヤーナは特段気にかけていなかったように思う。

 

 彼女と戦っていた時も、飛行機での移動の時も、ヤケに話をしたがるものだと思ってはいた。

 それが彼女の性分であり、狂った人間が自分の考えを他人に伝えたいだけの衝動なのではと思っていたが、彼女はただ人と同じ目線で話すことを渇望していたのだろうか。

 

 だが、そうであったとしても――。

 

「薄情だなんだと言われようが、お前が様々な罪を犯し、異形とはいえ生物を軽んじていることに変わりはない」

 

「そ、それとこれとは話が違うっていうかっ! 研究者と探索者の視点の違い――」

 

「――だが」

 

 感情豊かなその瞳を――鉄格子越しであり、身長差はあるが――正面から見据える。

 

「お前のそれが人間としての本心なのだろう事は、オレでもわかる」

 

「ううぐぅっ……」

 

「あら、小娘らしく恥ずかしがってるのかしら?」

 

「そんなんじゃないしぃ!?!?」

 

 姫野の甲高い声が響き、彼女は立ち上がって椅子の裏に回り込んでしまう。

 彼女の実年齢を知らないが、やはり体型相応の少女のように見えてくる。

 

「ぷ、ぷぷー! こんなのに騙されて絆されるなんて、ジロークンもまだまだ――」

 

「別に絆されてなどいない。事実を言ったまでだ」

 

「……ぐぅ……」

 

 椅子の裏からこちらを伺う姫野。

 その顔はやはり紅潮しており、うっすらと涙の雫が溜まっているようにも見える。

 

「ジロークンなんて嫌いだ!」

 

「特段好かれたいとも思っていない。利害の一致、知的好奇心、協力してくれるというのなら、なんでも構わない」

 

「ジロー……貴方ねぇ……」

 

 ローズの呆れたような声が聞こえてくる。

 なんだと言うのだ。

 姫野を使うという点において、異論はないと思うのだが。

 

「まあいいわ、ジローだものね。小娘、貴方は教団に戻りたいとか考えないのかしら?」

 

「……うーん、どうなんだろうね?」

 

 椅子の裏から顔を覗かせ、ローズの声に考える素振りを見せる姫野。

 

「子供たちのこともあるから、帰って研究を続けたいっていうのはあるんだけどね。僕ってそれ専門ってわけじゃないから、出来なくなってもいいんだよね」

 

「……あの研究所では随分と厄介な異形を作っていたようだが?」

 

「ああ、タイタンクンのこと? あの子なぁ、ジロークンは聞いてたと思うけど、あの子の出力に耐えられる心臓がないから手詰まりだったんだよねぇ」

 

 あの巨大な培養槽に居たものにはタイタンと名前をつけていたのか。

 たしかに巨大な体躯で、その名前に負けることのなさそうな異形――キメラ型の異形であったのを覚えている。

 ヤーナがどこかしらに消していたが、未だ培養槽の中で眠っていることを願うばかりだ。

 

「ヤーナクンには数ヶ月でいける〜とは言ったけど、たぶん未完成のままだったと思うんだよね」

 

「ふむ……お前の専門というのは?」

 

「――空間転移学、とでも言えばいいのかな? 教団にいた頃に、僕を指導してくれた人からの受け売りなんだけどね。『黒い扉』って言えば、伝わりやすい?」

 

 息を呑んだのはオレか、ローズか、はたまたどちらもか。

 彼女の言ったことは、ヤーナが使っていたものを指しているのだろうと、容易に想像がつく。

 しかし、ならばなぜ――。

 

「お前は、なぜキメラなど作っていたんだ?」

 

「専門ではないけど、暇つぶしにやってた時期があるんだよ」

 

 椅子の裏から出てきて、再び椅子に腰掛ける姫野。

 彼女は視線を落として指先を弄りながら、言葉を続ける。

 

「研究所でジロークンと戦った時にも話したけど、教団――と言うより、総主教サマに拾われるまで色々やっててね」

 

 思い出すのは、戦闘前に饒舌に話をしていた姫野の姿。

 どこまでも楽しげで歪に嗤っていた女と、今こうして牢の中で落ち着いて話す彼女が同一人物だとは思えない。

 

 どうしても裏があるのではと疑ってしまうが、この数週間から一ヶ月程度の期間で相当な高待遇を得られていたであろう。

 環境というものは、こうまで人を変えるとでもいうのか。

 

「教団で僕の遊び場――研究所を作ってもらうまで、センセーのとこに行かせてもらったんだ。そこで、元々完成してたあの『黒い扉』を改良して、大型のものでも運べるようにしたんだよね」

 

「その、先生というのは?」

 

「センセーはセンセー。ホントの名前は教えてもらえないまま、死んじゃった」

 

 その声は、郷愁を帯びている。

 

「すっごい優しいおじいちゃんだったんだよ。僕の話も、たっくさん聞いてくれてさ」

 

 その声は、寂寥感を帯びている。

 

「ま、僕って天才だからさ。教えてもらったこと全部覚えたけどねっ!」

 

 顔を上げた彼女の瞳は、どこまでも光を宿していない。

 聞いている分には変わらぬ明るさを持った声だが、その裏に空虚な隙間を宿しているように聞こえる。

 

 彼女が狂ってしまった裏には、教団の洗脳や承認欲求などもあったのだろう。

 だが、オレが思うに真の理由は、ようやく見つけた先生という理解者を失ったことではないだろうか。

 

 それは、仮にこの世界に帰ってきた時に誠一郎たちがいなかった場合の、オレ自身の末路のようにも思える。

 彼女は犯罪者である以上、情を抱いてはいけない。

 しかし、多少の――そう、話を聞いて寄り添うこと程度は、許される行為ではないのだろうか。

 

「姫野椿……お前は……」

 

「――ぷぷ、同情しちゃった? やーいやーい、ホントのこと話してるわけないじゃん!」

 

「…………」

 

 姫野の言葉がどこまで本当の話なのかは、たしかにわからない。わかりようがない。

 彼女の言う通り、本当のことなど話すわけがないのかもしれない。

 先程までの言葉の裏の感情も、すべてが作り物なのかもしれない。

 

 だが、彼女が俺を指すその指先。

 その微かな震えまでは、作り物ではないだろうと、オレは思う。

 

「ジロー」

 

 ああ、ローズ。

 そうだな。

 

 この話は、これから先いくらでも出来るだろう。

 今は――。

 

「ふぅ……話を戻そう」

 

「んっ。聖女チャンの氷を維持するのはおばあちゃん、放出させるのは僕、繋がりを断つのがジロークン」

 

「繋がりを断つのがオレで本当に良いのか?」

 

「ジローじゃなきゃダメね。他に適任がいないわ」

 

 たしかに魔力制御には一家言あると自負しているが、繋がりを断つということへのイメージが湧かない。

 なにより――。

 

「オレは魔力量が人並みだぞ?」

 

「魔力量は関係ないよ。ていうか、人並みの魔力量であの盾を操りながら僕と戦ってたなんて、化け物以外の何物でもないよ?」

 

「私も昔貴方に言ったじゃない。貴方ほど精密に、自分の手足のように制御できる人間は滅多にいないって」

 

 たしかに、いつかの野営の折に鍛錬していた時に呆れた声で話をされたのを覚えている。

 便利な技術はとことんまで突き詰めることで、さらに優れたものになると思ってやってきたことだ。

 ローズもオレぐらいの制御は容易いだろうに。

 

「私は魔法を扱うから出来るだけよ。近接の癖してそこまで制御出来ることが異常なのよ。うちの人は今だって大雑把に使うことしかできないんだから」

 

 そういうものなのだろうか。

 ジェイのやつは相変わらずなようだが、誠一郎は以前にも増して精密に制御できるようになっていると思うのだが、それでも足りないのだろうか。

 

「まっ、そういうわけだか――」

 

「いや待て、やり方がわからん上で頷くことが出来ん。アリアの命がかかってるんだぞ」

 

「あー、そっか。ねえ、おばあちゃん」

 

「魔力を適当に出せばいいのね」

 

 ローズの声が響くと同時に、彼女から一本の魔力が糸のように伸びる。

 

「そうそう! それで、ジロークンも魔力を出してみて。イメージは手から伸びる包丁!」

 

 包丁という表現はあれだが、要はローズから伸びる魔力にオレ自身の魔力を触れさせるわけか。

 しかし、それをした所で切れることはないと思うのだが。

 

 手から伸びるように作った刀状の魔力を、ローズから伸びる魔力の糸に向かって振り下ろす。

 一瞬だけ魔力の繋がりが断たれたが、すぐに元通りになる。

 

「こうなるとは予想していたのだが……」

 

「惜しいわね。断ち切るのはゆっくりでいいのよ」

 

「ふむ」

 

 再度、今度はひと思いに断ち切るのではなく、押し付けて裂くイメージで近づけていく。

 

「私の魔力に触れたら、そこに貴方の魔力を流しなさい。それが出来たら、そのまま断ち切るの」

 

 ローズの言葉の通り、オレの魔力とローズの魔力が触れた所からオレのものを流し込む。

 抵抗があって、武器や小石に流すように上手くはいかないが、触れた所から自分の魔力の幅を広げる。そうして、そのまま通過させれば、ローズから伸びる魔力の糸が断ち切られた。

 

「理解した。つまりは魔力の流れを塞き止めるのだな」

 

「そゆことっ! まあ、一瞬でなんて出来る人いないから、おばあちゃんの言った通りゆっくりやらないといけないんだけどね!」

 

 ふむ、だからこその魔力制御ということか。

 いわば自身の魔力をそのままに、相手の魔力の流れを邪魔する。

 

 スキルなどを発動している場合や、武具に流した場合などでは反発し合う魔力だが、ただ放出したりする場合はこうして触れ合うことが出来るのか。

 

 待て。

 これを突き詰めることが出来れば、戦闘にも応用が出来るのではないだろうか。

 姫野もローズも出来るのだろうが、一瞬で出来る人などいないということは突き詰めれば出来るのではないだろうか。

 ふむ、機会があれば清吾でも捕まえて試してみるか。

 

「あらあら、ジロー。貴方また変なこと考えてるわね」

 

「むっ……そんなことは、ないぞ?」

 

「はぁ……忘れてないでしょうけど、今はアリアちゃんが先よ。付き合ってあげるから、感覚を掴みなさい」

 

「すまん、助かる」

 

 ローズに連れられ、姫野の牢を後にする。

 

 彼女の「置いていくな」との甲高い声が聞こえるが、必要になる時まではそこに居るがいい。

 

 アリアを助けるのは勿論だが、やはり新しい技術を磨けるのは素晴らしく心が躍るというものだな。




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