これが心の光か……
U.C.0097――。
グラナダ宙域。
宇宙は、戦場へ変わっていた。
裂け目の奥に存在する“観測者”。
人類を危険と断定し、浄化を開始した虚無そのもの。
その配下である無数の虚無端末群が、地球圏全域へ侵攻を開始していた。
黒い群れ。
絶望の津波。
それに対し――。
人類は、立ち向かっていた。
宇宙各地から集結したモビルスーツ部隊。
連邦軍。
ロンド・ベル。
民間傭兵。
かつて敵同士だった勢力までいる。
皆、同じ空を守るために集まっていた。
戦場中央。
紫色の光が輝く。
ハイニューガンダム・レイ。
その隣に、
ユニコーンガンダム。
バンシィ。
νガンダム。
四機の光が並ぶ。
その光景を見て、人々は恐怖を押し殺していた。
まだ終わっていない。
まだ未来は消えていない。
通信回線が開く。
『全軍へ告ぐ』
静かな声。
ヤマト・シンラだった。
『敵は強い』
『多分、今までで一番』
その言葉に誰も反論しない。
事実だった。
虚無端末群は通常兵器が通用しない。
接触するだけで物質を侵食し、存在を削り取っていく。
しかも数が無限に近い。
だがシンラは続ける。
『でも』
『俺たちは、一人じゃない』
その瞬間。
宇宙各地から通信が入る。
『地球連邦第七艦隊、到着!!』
『サイド6防衛隊、戦線参加します!』
『民間輸送船団ですが、避難支援やります!』
『ジオン共和国義勇軍、参戦する!!』
リディが吹き出す。
『なんでもありかよ……!』
アムロは静かに笑った。
「それでいい」
「人類は、そうやって繋がってきた」
その瞬間。
虚無端末群が一斉に突撃を開始した。
黒い濁流。
宇宙を埋め尽くす絶望。
『来るぞ!!』
戦闘開始。
ビームが走る。
ミサイルが飛ぶ。
モビルスーツ隊が迎撃へ向かう。
爆発。
閃光。
悲鳴。
だが人類側も以前とは違った。
サイコフレーム共鳴による感応波が、全軍へ共有されている。
互いの意思が伝わる。
恐怖だけではない。
「守りたい」という感情が、戦場全体を支えていた。
バナージが叫ぶ。
『右側面フォローします!!』
ユニコーンが虹色の光を放つ。
虚無端末を押し返す。
リディも続く。
『甘ぇんだよ!!』
バンシィのアームド・アーマーVNが敵群を引き裂く。
νガンダムはファンネル障壁を展開。
アムロが全体を支援する。
「突出するな!」
「連携を切るな!!」
人類側が、押し返し始めていた。
その光景を。
裂け目の奥の“観測者”が見つめていた。
巨大な紫黒色の瞳。
『理解不能』
『何故、他者のために命を懸ける』
『自己保存原理に反する』
シンラは静かに前へ出る。
『誰かを大切に思うことに、理由はいらない』
『……』
『それが人間だ』
その瞬間。
観測者の瞳が発光した。
宇宙が軋む。
《超重力反応》
《空間崩壊発生!!》
裂け目がさらに広がる。
そして――。
現れた。
巨大な腕。
黒い宇宙そのもののような異形。
星すら飲み込むほど巨大な存在が、裂け目から姿を現し始める。
戦場が凍りつく。
『あれが……本体……』
バナージが震える。
観測者は静かに告げる。
『感情文明、人類文明を終了する』
その瞬間。
黒い波動が放たれた。
空間消滅。
進路上の艦隊が一瞬で消える。
悲鳴すら残らない。
リディが叫ぶ。
『避けろぉぉ!!』
だが間に合わない。
その時だった。
紫色の光が割り込む。
ハイニューガンダム・レイ。
フィン・ファンネル展開。
巨大なサイコフィールド形成。
黒い波動を真正面から受け止める。
宇宙が震える。
シンラの表情が苦痛に歪む。
『ぐっ……!!』
バナージが叫ぶ。
『シンラさん!!』
だがシンラは退かない。
『まだだ……!!』
その瞬間。
ユニコーン。
バンシィ。
νガンダム。
三機のサイコフレームが共鳴。
さらに。
戦場にいる全ての人々の感情が流れ込んでくる。
生きたい。
守りたい。
帰りたい。
その想いが、紫色の光へ集束していく。
観測者が揺らぐ。
『未来予測……誤差増大』
『不可能』
『何故、絶望下で希望を維持できる』
シンラは笑った。
『希望は、誰かから貰うものじゃない』
『自分で掴むんだ』
その瞬間。
ハイニューガンダム・レイのサイコフレームが、限界を超えて発光した。
紫色の恒星。
宇宙全域を照らす光。
その光景に、人々は息を呑む。
シンラの身体が粒子化を始めていた。
バナージが絶叫する。
『やめてください!!』
『それ以上やったら――!!』
シンラは穏やかだった。
『大丈夫』
『今の俺は、一人じゃない』
その時。
光の中に無数の人影が現れる。
アムロ。
ララァ。
カミーユ。
ジュドー。
チェーン。
そして名も知らぬ無数の人々。
人の意思。
想いの集合。
それらがシンラと共鳴していた。
観測者が初めて動揺する。
『理解不能』
『個体消滅後も意思が継続している』
『何故だ』
シンラは静かに答える。
『人は、誰かの中で生き続ける』
その瞬間。
紫色の光が爆発的に広がった。
宇宙を覆うほどの巨大な光輪。
それが観測者へ触れる。
黒い巨体が初めて後退した。
『観測不能』
『演算崩壊』
『感情エネルギーが法則を超越している』
観測者の周囲に亀裂が走る。
シンラは前へ進む。
『未来は、お前には決められない』
『……』
『人類は、何度でも立ち上がる』
その時。
宇宙中から光が集まり始めた。
地球。
コロニー。
月。
火星圏。
人々の願い。
祈り。
想い。
それら全てが、紫色の光へ変わっていく。
観測者が、初めて恐怖に似た感情を見せた。
『これが……』
『人類……』
そして。
ハイニューガンダム・レイが、最後の加速を開始する。
観測者へ向かって。
紫色の光を纏いながら。
宇宙の未来を、その背に乗せて。