機動戦士ガンダム 逆襲の残光 ―RAY―   作:ガーディアス

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希望の継承者

U.C.0097――。

 

グラナダ宙域。

 

宇宙の命運を懸けた戦いは、ついに最終局面へ突入していた。

 

裂け目の奥より現れた超越存在――

 

“観測者”。

 

人類を危険と断定し、存在そのものを消去しようとする虚無文明の本体。

 

その前へ。

 

紫色の光を纏った

 

ハイニューガンダム・レイ

 

が突撃していた。

 

その背後には無数の光。

 

地球。

 

コロニー。

 

月。

 

火星圏。

 

人類全体の意思。

 

希望。

 

願い。

 

それら全てがシンラへ集まっている。

 

だが――。

 

限界だった。

 

シンラの身体は既に人間の領域を超えている。

 

サイコフレームと同化した存在。

 

意思そのもの。

 

それでもなお。

 

観測者を止めるには足りない。

 

巨大な腕が振り下ろされる。

 

宇宙が裂ける。

 

銀河規模の重力波。

 

存在を消去する一撃。

 

『シンラァァァ!!』

 

バナージが叫ぶ。

 

『避けろ!!』

 

リディも怒鳴る。

 

だが。

 

シンラは避けなかった。

 

『ここだ』

 

ハイニューガンダム・レイが加速する。

 

紫色のサイコフィールド最大展開。

 

次の瞬間。

 

衝突。

 

宇宙そのものが悲鳴を上げた。

 

全員の視界が白く染まる。

 

重力。

 

時間。

 

空間。

 

全てが歪む。

 

そして――。

 

観測者の巨大な腕が止まった。

 

『……!?』

 

観測者が初めて驚愕する。

 

シンラが押し返していた。

 

たった一機で。

 

たった一人で。

 

宇宙規模の存在を。

 

だが代償も大きい。

 

ハイニューガンダム・レイのフレームが崩壊を始める。

 

フィン・ファンネルが砕ける。

 

サイコフレームが粒子化していく。

 

『まだだ……!』

 

シンラは叫ぶ。

 

その瞬間。

 

戦場にいる全員へ感応波が届いた。

 

悲しみ。

 

覚悟。

 

優しさ。

 

そして――

 

別れ。

 

バナージが気付く。

 

「まさか……」

 

シンラは笑っていた。

 

『ごめんな』

 

『多分、これが最後だ』

 

『嫌です!!』

 

バナージの叫び。

 

『帰ってきてください!!』

 

『まだ終わってない!!』

 

シンラは優しく答える。

 

『終わってないさ』

 

『だから任せるんだ』

 

リディが歯を食いしばる。

 

『ふざけんな!!』

 

『また勝手に消える気か!!』

 

その言葉にシンラは少し笑った。

 

『そうだな』

 

『それは悪いと思ってる』

 

『だったら戻れよ!!』

 

リディの声は震えていた。

 

シンラは少し沈黙する。

 

そして静かに言った。

 

『俺も戻りたい』

 

『皆と一緒にいたい』

 

『生きたい』

 

その言葉に全員が息を呑む。

 

今まで誰にも見せなかった本音。

 

シンラ自身も怖かったのだ。

 

死ぬことが。

 

消えることが。

 

それでも。

 

彼は前へ進む。

 

『でも』

 

『誰かが未来を繋がなきゃいけない』

 

その瞬間。

 

観測者が咆哮した。

 

『理解不能』

 

『自己犠牲は非合理』

 

『何故だ』

 

シンラは静かに答える。

 

『誰かを守りたいからだ』

 

観測者が沈黙する。

 

演算不能。

 

理解不能。

 

その時。

 

アムロが前へ出た。

 

νガンダム。

 

白い光が広がる。

 

『シンラ』

 

『……アムロさん』

 

『一人でやるな』

 

その瞬間。

 

ユニコーンが並ぶ。

 

バンシィが並ぶ。

 

そして。

 

戦場の全モビルスーツが前へ出る。

 

ジム。

 

ジェガン。

 

リゼル。

 

スタークジェガン。

 

ギラ・ドーガ。

 

かつて敵味方だった全ての機体。

 

人類全軍。

 

彼らが観測者へ向かう。

 

『未来は一人で背負うものじゃない』

 

アムロの言葉。

 

『皆で作るものだ』

 

その瞬間。

 

宇宙が発光した。

 

数千万。

 

数億。

 

人々の意思が一つになる。

 

観測者が後退する。

 

初めてだった。

 

絶対存在が押されている。

 

『演算崩壊』

 

『未来予測不能』

 

『何故』

 

『何故だ』

 

シンラは静かに答えた。

 

『未来は計算じゃない』

 

『可能性だ』

 

その瞬間。

 

ハイニューガンダム・レイが最後の輝きを放つ。

 

紫色の恒星。

 

宇宙を照らす希望の光。

 

観測者へ一直線に突撃。

 

そして。

 

接触。

 

世界が停止した。

 

誰も動けない。

 

音もない。

 

時間すら止まる。

 

その空間で。

 

シンラは観測者と向き合っていた。

 

巨大な瞳。

 

虚無そのもの。

 

だが今は震えている。

 

『理解できない』

 

『人類は不完全』

 

『愚か』

 

『脆弱』

 

『なのに何故』

 

シンラは微笑む。

 

『不完全だからだよ』

 

『……』

 

『弱いから支え合う』

 

『間違えるから学ぶ』

 

『失うから大切にできる』

 

観測者が揺らぐ。

 

『それが……』

 

『生命……』

 

シンラは頷く。

 

『そうだ』

 

その瞬間。

 

観測者の瞳に初めて光が宿った。

 

感情だった。

 

ほんの僅かな。

 

理解への第一歩。

 

だが同時に。

 

その巨大な身体が崩壊を始める。

 

虚無という存在そのものが変質している。

 

『観測終了』

 

『結論更新』

 

『人類文明……』

 

長い沈黙。

 

そして。

 

『監視対象へ変更』

 

宇宙が静まり返る。

 

観測者は、人類の消去を撤回したのだ。

 

裂け目が閉じ始める。

 

巨大な身体が消えていく。

 

最後に観測者はシンラを見る。

 

『ヤマト・シンラ』

 

『……』

 

『お前は特異点である』

 

『希望の証明者である』

 

その言葉を残し。

 

観測者は消えた。

 

裂け目も閉じる。

 

静寂。

 

戦いは終わった。

 

だが――。

 

光の中心で。

 

ハイニューガンダム・レイが崩壊を始める。

 

バナージが叫ぶ。

 

『シンラさん!!』

 

リディも叫ぶ。

 

『今度こそ帰ってこい!!』

 

シンラは微笑む。

 

『……ありがとう』

 

その瞬間。

 

紫色の光が宇宙を包み込んだ。

 

暖かく。

 

優しく。

 

まるで祝福するように。

 

そして――。

 

光の中から、一つの人影が落ちてくる。

 

アムロが目を見開く。

 

バナージも。

 

リディも。

 

全員が息を呑む。

 

そこにいたのは。

 

生身のまま宇宙を漂う、

 

ヤマト・シンラだった。

 

意識を失ってはいる。

 

だが確かに生きている。

 

バナージが震える声で呟く。

 

「……帰ってきた」

 

リディが笑う。

 

「馬鹿野郎が……」

 

アムロは静かに目を閉じた。

 

戦いは終わった。

 

だが。

 

物語はまだ終わらない。

 

人類の未来。

 

そして。

 

ヤマト・シンラという男の新たな物語が、ここから始まるのだから。

 

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