機動戦士ガンダム 逆襲の残光 ―RAY―   作:ガーディアス

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黄金の呼び声

U.C.0098――

 

グラナダ。

 

平和な日常は続いていた。

 

だが。

 

それは永遠ではない。

 

宇宙のどこかで、確実に何かが動き始めていた。

 

---

 

アナハイム極秘工廠。

 

巨大な格納庫の中央には、

 

ハイニューガンダム・レイ リバース

 

が静かに佇んでいた。

 

以前のハイニューガンダム・レイをベースにしながらも、その構造は大きく進化している。

 

全身へ配置された新型サイコフレーム。

 

強化されたフィン・ファンネル。

 

そして観測者との戦いで得られたデータを元に構築された新型サイコフィールド発生装置。

 

アナハイムの技術者たちは口を揃えて言った。

 

「性能が意味不明」

 

「理論上存在してはいけない」

 

「なんで動くのこれ」

 

開発主任は諦めたように答える。

 

「シンラ専用だからだ」

 

全員納得した。

 

もはやそれで説明が付いてしまう。

 

その時。

 

格納庫へシンラが入ってきた。

 

「調整は順調ですか?」

 

技術主任が振り向く。

 

「順調過ぎて怖い」

 

「?」

 

「お前、この機体と会話してないか?」

 

シンラが固まる。

 

「……してませんよ?」

 

「その間が怪しいんだよ」

 

実際。

 

最近のハイニューガンダム・レイ リバースは異常だった。

 

パイロット不在でも微弱反応を示す。

 

シンラが近付くと出力が安定する。

 

そして時折、勝手にサイコフレームが発光する。

 

まるで機体自身が意思を持っているかのように。

 

シンラは機体を見上げる。

 

紫色のサイコフレームが静かに輝いていた。

 

その時。

 

突然。

 

世界が止まった。

 

「……!」

 

シンラだけが気付く。

 

周囲の人間は動いていない。

 

時間停止。

 

いや違う。

 

意識だけが別空間へ引き込まれている。

 

目の前に広がるのは黄金色の宇宙。

 

無数の銀河。

 

無数の恒星。

 

そして。

 

その中心に存在する巨大な光。

 

観測者すら比較にならないほど巨大な存在。

 

『接続成功』

 

低い声。

 

宇宙そのものが喋っているような響き。

 

シンラは息を呑む。

 

「お前は……」

 

『黄金観測機構』

 

『第一管理者』

 

『人類呼称未定』

 

以前見た存在だった。

 

だが今はより鮮明に見える。

 

観測者が星なら。

 

これは銀河そのもの。

 

圧倒的な格の差。

 

シンラが警戒する。

 

「何が目的だ」

 

『観察』

 

即答だった。

 

『希望因子の観察』

 

『進化可能性の確認』

 

『文明存続確率の測定』

 

シンラが眉をひそめる。

 

「観測者と同じか」

 

『違う』

 

黄金の光が揺れる。

 

『観測者は管理端末』

 

『私は管理者』

 

その言葉にシンラは凍り付く。

 

観測者ですら端末。

 

つまり。

 

あの存在ですら末端だった。

 

『観測者は排除を選択した』

 

『私は選択しない』

 

『未来は観察対象』

 

『判断は保留』

 

シンラは理解する。

 

目の前の存在は敵ではない。

 

少なくとも今は。

 

だが味方でもない。

 

もっと根本的に違う。

 

人類を蟻の巣のように見ている存在だ。

 

その時。

 

黄金の存在が初めて感情らしきものを見せた。

 

『質問』

 

「……なんだ」

 

『何故生存した』

 

シンラは苦笑した。

 

「俺にも分からない」

 

『虚無融合』

 

『観測者接触』

 

『存在崩壊』

 

『全て生存不可能』

 

『なのに何故生きている』

 

シンラは少し考える。

 

そして答えた。

 

「皆がいたからだ」

 

『意味不明』

 

予想通りだった。

 

シンラは笑う。

 

「そうだろうな」

 

その瞬間。

 

黄金の光が少しだけ揺れた。

 

まるで興味を持ったように。

 

『継続観察』

 

『希望因子認定』

 

『ヤマト・シンラ』

 

『観測対象へ指定』

 

次の瞬間。

 

世界が元に戻った。

 

格納庫。

 

技術者たち。

 

何も変わっていない。

 

時間経過もない。

 

シンラだけが汗を流していた。

 

「……またか」

 

彼はため息を吐いた。

 

---

 

同時刻。

 

グラナダ外宙域。

 

監視衛星群が異常反応を検知していた。

 

オペレーターが叫ぶ。

 

『高エネルギー反応!!』

 

『ワープ反応確認!!』

 

司令官が立ち上がる。

 

「敵か!?」

 

モニターへ映し出された映像に全員が絶句した。

 

そこにいたのは。

 

巨大な構造物。

 

あまりにも巨大だった。

 

コロニーの数百倍。

 

小惑星サイズ。

 

黄金色に輝く人工物。

 

誰も見たことがない技術。

 

誰も理解できない文明。

 

通信士が震える。

 

『識別不能……』

 

『所属不明……』

 

『接近中……』

 

宇宙がざわめく。

 

平和だった地球圏へ。

 

新たな来訪者が現れた。

 

---

 

その報告を受けたシンラは、静かに宇宙を見上げていた。

 

隣には、

 

バナージ・リンクス。

 

そして、

 

リディ・マーセナス。

 

リディが呟く。

 

「嫌な予感しかしねぇ」

 

「同感です」

 

バナージも苦笑する。

 

シンラは静かだった。

 

だが。

 

彼だけは分かっていた。

 

あれは侵略者ではない。

 

観測者とも違う。

 

もっと古い存在。

 

もっと根源的な何か。

 

そして。

 

自分を探している。

 

黄金の巨大構造物が、ゆっくりと地球圏へ接近していく。

 

まるで。

 

誰かを迎えに来るように。

 

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