機動戦士ガンダム 逆襲の残光 ―RAY―   作:ガーディアス

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前日譚 白き可能性

U.C.0090 ―― アナハイムの若き創造者

 

第二次ネオ・ジオン抗争終結から半年。

 

地球圏は久しぶりの平和を迎えていた。

 

しかし、その平和の裏側では新たな時代へ向けた開発競争が始まっていた。

 

月面都市グラナダ。

 

アナハイム・エレクトロニクス本社。

 

その地下深くに存在する極秘開発区画。

 

そこでは連邦軍上層部とアナハイムの限られた人間しか知らない計画が進行していた。

 

その名は――

 

**RX-0計画。**

 

後に宇宙世紀の歴史を大きく変えることになる機体。

 

ユニコーンガンダム

 

の開発計画だった。

 

---

 

巨大な格納庫。

 

その中央には未完成の機体フレームが設置されている。

 

まだ装甲も完全ではない。

 

白い外装の一部しか存在していない。

 

しかし。

 

その骨格だけでも異様な威圧感があった。

 

「サイコフレーム展開時の負荷計算を再確認しました」

 

若い技術者が報告する。

 

「予測値を超えています」

 

「またか」

 

主任技師が頭を抱える。

 

最近はそればかりだった。

 

サイコフレーム。

 

人の意思を機体へ反映する夢の技術。

 

しかし同時に制御不能な怪物でもあった。

 

特にRX-0計画では全身へ搭載するという狂気じみた設計を採用している。

 

誰も経験したことがない。

 

前例が存在しない。

 

失敗の連続だった。

 

その時。

 

格納庫の入り口が開く。

 

「おはようございます」

 

現れたのは、

 

ヤマト・シンラ

 

だった。

 

主任技師が苦笑する。

 

「お前の出勤時間おかしいだろ」

 

「徹夜です」

 

「帰れ」

 

「仕事が残ってます」

 

周囲の技術者達が笑う。

 

これが日常だった。

 

ヤマト・シンラ。

 

若手ながらアナハイム最高峰の開発者の一人。

 

そして。

 

実戦経験では歴戦のエースパイロット達にも引けを取らない男。

 

一年戦争。

 

グリプス戦役。

 

第一次ネオ・ジオン戦争。

 

第二次ネオ・ジオン抗争。

 

幾つもの戦場を生き抜いてきた。

 

だが本人は軍人より開発者としての自覚の方が強かった。

 

---

 

会議室。

 

RX-0開発チームが集まっていた。

 

大型モニターへ設計図が表示される。

 

主任が説明する。

 

「問題はデストロイモードだ」

 

ホログラムが変形する。

 

装甲展開。

 

サイコフレーム露出。

 

高出力形態。

 

誰が見ても異常な構造だった。

 

「変形途中でフレーム応力が集中する」

 

「このままでは破損する」

 

技術者達が議論を始める。

 

だが解決策が出ない。

 

その時だった。

 

シンラが手を挙げる。

 

「ここです」

 

皆が振り向く。

 

彼は設計図を拡大した。

 

胸部中央。

 

誰も注目していなかった部分。

 

「変形時に力が逃げないんです」

 

「補助フレームを追加して流せばいい」

 

主任が眉をひそめる。

 

「そんな単純な話か?」

 

「多分」

 

技術者達がシミュレーションを開始する。

 

数分後。

 

結果が表示された。

 

負荷軽減率。

 

42%。

 

会議室が静まり返る。

 

「……え?」

 

「嘘だろ」

 

「本当に解決した」

 

主任技師が天井を見上げた。

 

「もう嫌だ」

 

「なんで気付くんだよ」

 

シンラは首を傾げる。

 

「見れば分かりますよ?」

 

全員が思った。

 

分からないから困っているのだと。

 

---

 

昼休み。

 

社員食堂。

 

シンラは一人で設計資料を読んでいた。

 

食事しながら仕事。

 

いつものことだった。

 

その時。

 

向かい側へ誰かが座る。

 

「また仕事ですか」

 

顔を上げる。

 

同僚の女性技術者だった。

 

「休憩中くらい休んでください」

 

「休んでますよ」

 

「資料見てます」

 

「好きなので」

 

完全に重症だった。

 

女性は苦笑する。

 

「ヤマトさんって何でそこまで開発が好きなんですか?」

 

シンラは少し考えた。

 

そして答える。

 

「戦場を見たからです」

 

女性が黙る。

 

シンラの表情は穏やかだった。

 

「壊れる機体をたくさん見ました」

 

「帰れない人もたくさん見ました」

 

「だから」

 

少しだけ笑う。

 

「少しでも生きて帰れる機体を作りたいんです」

 

その言葉に。

 

女性は何も言えなくなった。

 

ヤマト・シンラは強い。

 

だがそれ以上に優しかった。

 

---

 

数か月後。

 

RX-0試作フレーム完成。

 

初期起動試験の日。

 

格納庫には緊張が漂っていた。

 

全員がモニターを見つめる。

 

もし失敗すれば。

 

数年分の開発費が吹き飛ぶ。

 

オペレーターが叫ぶ。

 

「起動開始!」

 

エネルギー供給。

 

駆動開始。

 

サイコフレーム励起。

 

白い光が機体内部を走る。

 

その瞬間。

 

誰も呼吸を忘れた。

 

機体が動いた。

 

ゆっくりと。

 

確実に。

 

RX-0が立ち上がる。

 

成功だった。

 

格納庫が歓声に包まれる。

 

拍手。

 

抱擁。

 

泣き出す技術者までいる。

 

だが。

 

シンラだけは静かだった。

 

未完成だからだ。

 

まだ始まりに過ぎない。

 

本当に大切なのは。

 

これから。

 

未来へ繋がること。

 

その時。

 

主任技師が近付く。

 

「どうした?」

 

「いえ」

 

シンラはユニコーンを見上げる。

 

白い機体。

 

静かに立つ可能性の象徴。

 

「この機体は特別になります」

 

主任が笑う。

 

「未来でも見えたのか?」

 

シンラも笑った。

 

「そんな大層なものじゃありません」

 

だが。

 

不思議な確信があった。

 

この機体は。

 

人類の可能性を証明する。

 

そしていつか。

 

本当に相応しいパイロットが現れる。

 

その時。

 

この白い機体は歴史を変えるだろう。

 

---

 

数年後。

 

その予感は現実になる。

 

一人の少年が。

 

一機の白いガンダムへ乗り込む。

 

その名は、

 

バナージ・リンクス。

 

そしてユニコーンガンダムは、人類の未来を照らす光となる。

 

だがその物語の裏には。

 

誰にも知られない開発者達の努力があった。

 

その中心にいたのが。

 

後にハイニューガンダム・レイを生み出し、宇宙を救うことになる男――

 

ヤマト・シンラだったのである。

 

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