U.C.0098――
木星圏での接触作戦から三日。
人類は新たな事実を知った。
星喰いは侵略者ではない。
宇宙を滅ぼすために生まれた存在でもない。
それは――
**「宇宙の終焉を観測する存在」**だった。
しかし、その事実は新たな疑問を生んでいた。
なぜ宇宙の終わりを観測する必要があるのか。
黄金観測機構とは何者なのか。
そして、「希望因子」とは何なのか。
その答えを知るため、ヤマト・シンラたちは再び黄金構造物へと向かった。
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## 黄金の記録庫
巨大構造物内部。
前回訪れた居住区とは違い、今回はアルテアの案内で最深部へ向かっていた。
黄金色の壁面には無数の紋様が刻まれ、通路そのものが淡く輝いている。
まるで建造物全体が一つの生命体のようだった。
先頭を歩くのは黄金観測機構第七管理補佐――アルテア。
その後ろに、
ヤマト・シンラ、
バナージ・リンクス、
リディ・マーセナス
が続く。
リディが辺りを見回しながら呟いた。
「相変わらず静かだな。」
「これだけ巨大なのに、人の気配が全くしない。」
アルテアは歩みを止めず答える。
「現在、この施設に生存者はいません。」
「管理端末だけが稼働しています。」
「つまり、お前以外は全部機械か。」
「はい。」
その一言が、宇宙最古の文明が既に滅びていることを改めて実感させた。
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やがて、一行は巨大な扉の前へ辿り着く。
高さは百メートル以上。
黄金でできた扉には、一つの紋章が刻まれていた。
円の中に無数の銀河が描かれ、その中心には光る恒星。
アルテアが静かに手をかざす。
「記録庫、開放。」
重厚な音と共に扉が左右へ開く。
その先に広がっていた光景に、一同は息を呑んだ。
宇宙だった。
もちろん本物ではない。
だが天井も床も壁も見えず、銀河が立体映像として無限に浮かんでいる。
数え切れない恒星。
無数の銀河。
そして、その一つ一つに記録が保存されていた。
「ここは……。」
シンラが呟く。
アルテアは静かに答えた。
「宇宙記録庫。」
「現在の宇宙だけではありません。」
「過去の宇宙も記録されています。」
全員が言葉を失った。
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## 宇宙は初めてではない
アルテアが一つの銀河へ触れる。
映像が変化した。
そこに映ったのは、現在とは全く違う宇宙。
星の色も。
物理法則も。
銀河の形も違う。
「これは……。」
バナージが目を見開く。
「前の宇宙です。」
アルテアは静かに語り始めた。
「現在皆さんが暮らしている宇宙は、**第七宇宙**。」
「その前には六つの宇宙が存在しました。」
リディが思わず声を上げる。
「宇宙が七回目……?」
「はい。」
「宇宙は誕生し、成長し、終焉を迎えます。」
「終われば、新たな宇宙が生まれます。」
シンラは映像を見つめた。
それは宇宙規模の輪廻だった。
生命だけではない。
宇宙そのものが生まれ変わっていた。
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## 黄金観測機構の使命
「では、お前たちは何なんだ?」
リディが尋ねる。
アルテアは迷いなく答えた。
「黄金観測機構は、宇宙を次代へ繋ぐために造られた存在です。」
映像が変わる。
巨大な黄金都市。
数え切れない人々。
笑顔。
文明。
そして滅亡。
「第一宇宙文明は、自らの滅びを予測しました。」
「彼らは宇宙そのものを保存する計画を立案しました。」
「それが黄金観測機構です。」
「我々は七つの宇宙を渡り、生命と歴史を記録しています。」
シンラはゆっくり呟いた。
「図書館……。」
アルテアが頷く。
「はい。」
「宇宙の図書館です。」
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## 希望因子
シンラは以前から気になっていたことを尋ねた。
「俺を『希望因子』と呼ぶ理由は?」
アルテアは初めて少し考えるような表情を見せた。
「通常、生物は宇宙の法則に従います。」
「しかし、あなたは違います。」
ホログラムが映し出される。
アクシズ・ショック。
観測者との戦い。
コロニーレーザー阻止。
数々の奇跡。
「あなたは何度も**未来予測を覆しました。**」
「本来滅ぶはずだった歴史。」
「失敗するはずだった可能性。」
「全てを書き換えています。」
バナージがシンラを見る。
確かにそうだった。
彼はいつも不可能を可能へ変えてきた。
「我々はその存在を『希望因子』と呼びます。」
「宇宙が終焉を拒むために生み出す、極めて稀な特異点です。」
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## 星喰いの役目
アルテアはさらに映像を切り替えた。
そこには巨大な銀色の存在――星喰い。
「星喰いは宇宙を壊しません。」
「寿命を迎えた宇宙を回収し、新しい宇宙誕生の準備を行う存在です。」
シンラは驚く。
「つまり……掃除屋か。」
「はい。」
アルテアは頷いた。
「宇宙は無限ではありません。」
「終わった宇宙を回収しなければ、新しい宇宙は誕生できません。」
バナージは複雑な表情になる。
「じゃあ……星喰いは悪じゃない。」
「はい。」
「必要な存在です。」
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## しかし問題がある
アルテアの表情が曇る。
「ですが、現在の宇宙は寿命を迎えていません。」
「本来ならあと数千億年存在します。」
リディが眉をひそめた。
「なのに来た?」
「はい。」
映像が赤く染まる。
警告表示。
「星喰いが活動を始めた理由は一つ。」
「宇宙の寿命が、急速に縮んでいます。」
全員が息を呑む。
「原因は不明。」
「観測不能。」
「我々にも理解できません。」
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## 創造者として
帰還後。
シンラは一人、ハイニューガンダム・レイ リバースの格納庫にいた。
静かに機体を見上げる。
「宇宙が終わる、か。」
彼は戦うことばかり考えてはいなかった。
むしろ逆だった。
「壊れるなら。」
「直せばいい。」
その呟きを聞いていた整備主任が笑う。
「お前らしいな。」
「宇宙まで修理する気か?」
シンラは真面目な顔で答える。
「まだ方法は分かりません。」
「でも。」
「壊れる理由があるなら、直す方法もあるはずです。」
主任は肩をすくめる。
「本当にお前は開発者だな。」
シンラは微笑んだ。
「戦うためじゃありません。」
「未来を創るために、俺は機械を作ってきました。」
「だから今回も同じです。」
「宇宙を救う方法を、作ります。」
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その頃。
黄金観測機構最深部。
アルテアは静かに一人呟いていた。
『記録更新。』
『希望因子・ヤマト・シンラ。』
『宇宙の終焉を知ってなお、未来を創造する意思を確認。』
『……理解不能。』
しかし。
その声には以前にはなかった感情が混じっていた。
ほんの僅かな――
**「期待」**が。
そして宇宙の彼方では。
星喰いがゆっくりと進路を変える。
その巨大な視線は、まっすぐ地球圏を見つめていた。
まるで。
ヤマト・シンラという、一人の人間を見極めるかのように。