機動戦士ガンダム 逆襲の残光 ―RAY―   作:ガーディアス

29 / 34
宇宙の寿命

U.C.0098――

 

木星圏での接触作戦から三日。

 

人類は新たな事実を知った。

 

星喰いは侵略者ではない。

 

宇宙を滅ぼすために生まれた存在でもない。

 

それは――

 

**「宇宙の終焉を観測する存在」**だった。

 

しかし、その事実は新たな疑問を生んでいた。

 

なぜ宇宙の終わりを観測する必要があるのか。

 

黄金観測機構とは何者なのか。

 

そして、「希望因子」とは何なのか。

 

その答えを知るため、ヤマト・シンラたちは再び黄金構造物へと向かった。

 

---

 

## 黄金の記録庫

 

巨大構造物内部。

 

前回訪れた居住区とは違い、今回はアルテアの案内で最深部へ向かっていた。

 

黄金色の壁面には無数の紋様が刻まれ、通路そのものが淡く輝いている。

 

まるで建造物全体が一つの生命体のようだった。

 

先頭を歩くのは黄金観測機構第七管理補佐――アルテア。

 

その後ろに、

 

ヤマト・シンラ、

 

バナージ・リンクス、

 

リディ・マーセナス

 

が続く。

 

リディが辺りを見回しながら呟いた。

 

「相変わらず静かだな。」

 

「これだけ巨大なのに、人の気配が全くしない。」

 

アルテアは歩みを止めず答える。

 

「現在、この施設に生存者はいません。」

 

「管理端末だけが稼働しています。」

 

「つまり、お前以外は全部機械か。」

 

「はい。」

 

その一言が、宇宙最古の文明が既に滅びていることを改めて実感させた。

 

---

 

やがて、一行は巨大な扉の前へ辿り着く。

 

高さは百メートル以上。

 

黄金でできた扉には、一つの紋章が刻まれていた。

 

円の中に無数の銀河が描かれ、その中心には光る恒星。

 

アルテアが静かに手をかざす。

 

「記録庫、開放。」

 

重厚な音と共に扉が左右へ開く。

 

その先に広がっていた光景に、一同は息を呑んだ。

 

宇宙だった。

 

もちろん本物ではない。

 

だが天井も床も壁も見えず、銀河が立体映像として無限に浮かんでいる。

 

数え切れない恒星。

 

無数の銀河。

 

そして、その一つ一つに記録が保存されていた。

 

「ここは……。」

 

シンラが呟く。

 

アルテアは静かに答えた。

 

「宇宙記録庫。」

 

「現在の宇宙だけではありません。」

 

「過去の宇宙も記録されています。」

 

全員が言葉を失った。

 

---

 

## 宇宙は初めてではない

 

アルテアが一つの銀河へ触れる。

 

映像が変化した。

 

そこに映ったのは、現在とは全く違う宇宙。

 

星の色も。

 

物理法則も。

 

銀河の形も違う。

 

「これは……。」

 

バナージが目を見開く。

 

「前の宇宙です。」

 

アルテアは静かに語り始めた。

 

「現在皆さんが暮らしている宇宙は、**第七宇宙**。」

 

「その前には六つの宇宙が存在しました。」

 

リディが思わず声を上げる。

 

「宇宙が七回目……?」

 

「はい。」

 

「宇宙は誕生し、成長し、終焉を迎えます。」

 

「終われば、新たな宇宙が生まれます。」

 

シンラは映像を見つめた。

 

それは宇宙規模の輪廻だった。

 

生命だけではない。

 

宇宙そのものが生まれ変わっていた。

 

---

 

## 黄金観測機構の使命

 

「では、お前たちは何なんだ?」

 

リディが尋ねる。

 

アルテアは迷いなく答えた。

 

「黄金観測機構は、宇宙を次代へ繋ぐために造られた存在です。」

 

映像が変わる。

 

巨大な黄金都市。

 

数え切れない人々。

 

笑顔。

 

文明。

 

そして滅亡。

 

「第一宇宙文明は、自らの滅びを予測しました。」

 

「彼らは宇宙そのものを保存する計画を立案しました。」

 

「それが黄金観測機構です。」

 

「我々は七つの宇宙を渡り、生命と歴史を記録しています。」

 

シンラはゆっくり呟いた。

 

「図書館……。」

 

アルテアが頷く。

 

「はい。」

 

「宇宙の図書館です。」

 

---

 

## 希望因子

 

シンラは以前から気になっていたことを尋ねた。

 

「俺を『希望因子』と呼ぶ理由は?」

 

アルテアは初めて少し考えるような表情を見せた。

 

「通常、生物は宇宙の法則に従います。」

 

「しかし、あなたは違います。」

 

ホログラムが映し出される。

 

アクシズ・ショック。

 

観測者との戦い。

 

コロニーレーザー阻止。

 

数々の奇跡。

 

「あなたは何度も**未来予測を覆しました。**」

 

「本来滅ぶはずだった歴史。」

 

「失敗するはずだった可能性。」

 

「全てを書き換えています。」

 

バナージがシンラを見る。

 

確かにそうだった。

 

彼はいつも不可能を可能へ変えてきた。

 

「我々はその存在を『希望因子』と呼びます。」

 

「宇宙が終焉を拒むために生み出す、極めて稀な特異点です。」

 

---

 

## 星喰いの役目

 

アルテアはさらに映像を切り替えた。

 

そこには巨大な銀色の存在――星喰い。

 

「星喰いは宇宙を壊しません。」

 

「寿命を迎えた宇宙を回収し、新しい宇宙誕生の準備を行う存在です。」

 

シンラは驚く。

 

「つまり……掃除屋か。」

 

「はい。」

 

アルテアは頷いた。

 

「宇宙は無限ではありません。」

 

「終わった宇宙を回収しなければ、新しい宇宙は誕生できません。」

 

バナージは複雑な表情になる。

 

「じゃあ……星喰いは悪じゃない。」

 

「はい。」

 

「必要な存在です。」

 

---

 

## しかし問題がある

 

アルテアの表情が曇る。

 

「ですが、現在の宇宙は寿命を迎えていません。」

 

「本来ならあと数千億年存在します。」

 

リディが眉をひそめた。

 

「なのに来た?」

 

「はい。」

 

映像が赤く染まる。

 

警告表示。

 

「星喰いが活動を始めた理由は一つ。」

 

「宇宙の寿命が、急速に縮んでいます。」

 

全員が息を呑む。

 

「原因は不明。」

 

「観測不能。」

 

「我々にも理解できません。」

 

---

 

## 創造者として

 

帰還後。

 

シンラは一人、ハイニューガンダム・レイ リバースの格納庫にいた。

 

静かに機体を見上げる。

 

「宇宙が終わる、か。」

 

彼は戦うことばかり考えてはいなかった。

 

むしろ逆だった。

 

「壊れるなら。」

 

「直せばいい。」

 

その呟きを聞いていた整備主任が笑う。

 

「お前らしいな。」

 

「宇宙まで修理する気か?」

 

シンラは真面目な顔で答える。

 

「まだ方法は分かりません。」

 

「でも。」

 

「壊れる理由があるなら、直す方法もあるはずです。」

 

主任は肩をすくめる。

 

「本当にお前は開発者だな。」

 

シンラは微笑んだ。

 

「戦うためじゃありません。」

 

「未来を創るために、俺は機械を作ってきました。」

 

「だから今回も同じです。」

 

「宇宙を救う方法を、作ります。」

 

---

 

その頃。

 

黄金観測機構最深部。

 

アルテアは静かに一人呟いていた。

 

『記録更新。』

 

『希望因子・ヤマト・シンラ。』

 

『宇宙の終焉を知ってなお、未来を創造する意思を確認。』

 

『……理解不能。』

 

しかし。

 

その声には以前にはなかった感情が混じっていた。

 

ほんの僅かな――

 

**「期待」**が。

 

そして宇宙の彼方では。

 

星喰いがゆっくりと進路を変える。

 

その巨大な視線は、まっすぐ地球圏を見つめていた。

 

まるで。

 

ヤマト・シンラという、一人の人間を見極めるかのように。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。