**U.C.0098――**
「宇宙の寿命が縮んでいる。」
黄金観測機構がもたらしたその事実は、地球連邦政府だけでなく、アナハイム・エレクトロニクス、ロンド・ベル、そして木星船団公社にまで極秘情報として共有された。
しかし、情報を知る者はごく僅かだった。
一般市民はもちろん、多くの軍人すら何も知らない。
宇宙は今日も平和だった。
コロニーでは子供たちが学校へ向かい、工場ではモビルスーツが組み立てられ、商店街には笑顔が溢れている。
その日常を守るために、誰にも知られない戦いが始まろうとしていた。
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## 「会議」
アナハイム・エレクトロニクス本社。
第七開発局・特別会議室。
部屋の中央には巨大な円卓。
そこにはアナハイムの技術責任者たち、ロンド・ベルの代表として
バナージ・リンクス、
リディ・マーセナス、
そして黄金観測機構から派遣されたアルテアが座っていた。
最後に入室したのは、
ヤマト・シンラ。
資料を机へ置く。
「お待たせしました。」
局長が腕を組む。
「早速始めよう。」
シンラは頷いた。
そしてホログラムを展開する。
そこに映し出されたのは、一機のモビルスーツではなかった。
巨大なリング状構造物。
数百基の中継装置。
無数のエネルギーライン。
技術者達がざわめく。
「……これは?」
シンラは静かに答えた。
「宇宙規模のサイコフレーム共振ネットワークです。」
会議室が静まり返る。
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## 「発想」
「星喰いを倒す。」
「宇宙を修復する。」
「どちらも現代技術では不可能です。」
シンラはそう前置きした。
「ですが。」
「黄金観測機構の技術と、人類のサイコフレーム技術を組み合わせれば話は変わります。」
アルテアが静かに問いかける。
『理論を説明してください。』
シンラは頷く。
「サイコフレームは、人の意思を物理現象へ変換します。」
「黄金観測機構の技術は、宇宙法則そのものへ干渉できます。」
「なら。」
「人の意思を宇宙そのものへ届けられる。」
バナージが息を呑む。
「つまり……。」
「宇宙そのものへ、人類の意思を伝える。」
リディは思わず笑う。
「馬鹿げてる。」
「そうですね。」
シンラも笑った。
「でも、今までだってそうでした。」
アクシズを押し返した奇跡。
サイコフレームの共鳴。
ニュータイプの思念。
宇宙世紀は何度も常識を超えてきた。
だから今回も。
不可能だからと諦める理由にはならない。
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## 「共同開発」
局長が立ち上がる。
「つまり共同開発か。」
「はい。」
「アナハイム。」
「ロンド・ベル。」
「黄金観測機構。」
「三者共同開発です。」
アルテアが答える。
『承認可能です。』
『本機構は全面協力します。』
技術者達は顔を見合わせた。
宇宙最古の文明と共同開発。
そんな言葉を口にする日が来るとは誰も思っていなかった。
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## 「開発室」
翌日。
アナハイム第七開発局。
そこには見慣れない光景が広がっていた。
人類の技術者。
黄金観測機構の管理端末。
同じ机を囲み、議論している。
「この素材では耐久不足です。」
『黄金結晶体を使用してください。』
「加工方法が分からない。」
『説明します。』
「いや、説明されても理解できない!」
技術者達は頭を抱えていた。
黄金文明の技術は五百年どころではない。
数兆年分の差があった。
それでも少しずつ。
本当に少しずつ。
互いを理解し始めていた。
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## 「ミツキ」
資料室。
そこでは
ミツキ・カンザキ
が古い開発記録を整理していた。
そこへシンラがやって来る。
「探し物ですか?」
「一年戦争時代のサイコミュ研究資料です。」
「ありましたよ。」
ミツキは笑顔で分厚いファイルを差し出す。
「ありがとうございます。」
「でも、こんな昔の資料まで必要なんですか?」
シンラはページをめくりながら答えた。
「新しい物を作る時ほど。」
「昔を知る必要があります。」
ミツキは感心する。
「未来を見るために過去を学ぶ。」
「開発ってそういうものなんですね。」
シンラは少し笑った。
「技術って積み重ねですから。」
「俺一人じゃ何も作れません。」
その言葉にミツキは少し嬉しそうだった。
英雄なのに。
天才なのに。
決して自分一人の力だとは思わない。
それがヤマト・シンラだった。
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## 「設計」
深夜。
開発室。
誰も帰らない。
コーヒーの空き缶だけが増えていく。
シンラは巨大モニターへ向かっていた。
設計。
修正。
設計。
修正。
何百回目かも分からない。
その時。
アルテアが近付く。
『質問です。』
「何でしょう。」
『あなたは疲労しています。』
「そうですね。」
『何故休まないのですか。』
シンラはモニターを見たまま答えた。
「間に合わないから。」
『宇宙寿命まで数百年あります。』
「設計には時間が掛かります。」
「試験にも時間が掛かります。」
「量産にはもっと時間が掛かります。」
「だから今日できることは今日やる。」
アルテアは静かにその姿を見つめる。
理解できない。
効率だけを考えれば非合理。
だが。
黄金観測機構には存在しなかったものがそこにはあった。
使命ではない。
義務でもない。
「誰かを守りたい」という感情だった。
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## 「試作品」
一週間後。
試作機第一号完成。
それはモビルスーツではなかった。
直径十メートルほどの球体。
周囲にはリング。
内部にはサイコフレーム。
名称。
**PSR-01《プロメテウス》**
サイコフレーム共振実験機。
シンラが説明する。
「これは人の意思を増幅し、黄金観測機構の演算装置へ伝達する中継装置です。」
「成功すれば。」
「宇宙規模で共鳴できます。」
局長が苦笑した。
「相変わらずスケールがおかしい。」
シンラも笑う。
「宇宙が相手ですから。」
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## 「起動実験」
実験室。
全員が見守る。
バナージがサイコミュリンクを開始。
ユニコーンガンダムとプロメテウスが接続される。
「出力五%。」
「十%。」
「二十%。」
装置が淡く輝く。
成功だ。
その瞬間だった。
黄金観測機構全体が共鳴を始めた。
アルテアが驚く。
『……接続確認。』
『本機構全域へ信号到達。』
技術者達が歓声を上げる。
人類の技術が。
ついに黄金観測機構へ届いた。
シンラは静かに拳を握る。
「第一歩だ。」
まだ宇宙は救えない。
星喰いも止められない。
だが。
希望は形になり始めていた。
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## 「新たな観測」
その頃。
宇宙の彼方。
誰にも観測できない虚空。
無数の星喰いたちが静かに進んでいた。
その中央。
一際巨大な存在が目を開く。
『……希望因子。』
その言葉だけが宇宙へ響く。
『観測開始。』
『創造を確認。』
『評価対象。』
そして。
ゆっくりと。
地球圏へ向きを変えた。