U.C.0098――サイド4・ロンデニオン
アナハイム・エレクトロニクス第七開発局。
「PSR-01《プロメテウス》」の起動実験から一週間。
人類と黄金観測機構の共同開発は順調に進み、サイコフレーム共振ネットワークの基礎理論は実証段階へと入っていた。
しかし、その平穏は長く続かなかった。
開発局の警報が鳴り響く。
「緊急警報! 木星圏より超重力反応!」
「先遣個体が移動を開始!」
オペレーターの声に、開発室の空気が一変する。
巨大モニターには、木星軌道を離れた銀色の巨大構造生命体――**星喰い先遣個体**が映し出されていた。
速度は決して速くない。
しかし、その進路は明確だった。
**地球圏。**
ヤマト・シンラは静かにモニターを見つめた。
「……来る。」
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## ロンド・ベル緊急招集
数時間後。
ラー・カイラム級強襲巡洋艦のブリーフィングルーム。
ヤマト・シンラ。
バナージ・リンクス。
リディ・マーセナス。
そして黄金観測機構の管理補佐アルテアが集められていた。
モニターには地球圏までの航路が映し出される。
アルテアが説明を始める。
「現在の速度であれば、約四十八時間後に地球圏へ到達します。」
リディが腕を組む。
「迎撃するしかないな。」
その言葉に、バナージが首を横へ振った。
「待ってください。」
「まだ敵とは決まっていません。」
「木星では会話が成立しました。」
「今回も……。」
リディは鋭い目で見返す。
「もし違ったら?」
「もしあれが暴れ始めたら?」
「地球が終わるぞ。」
会議室が静まり返る。
二人とも間違ってはいない。
戦うべきか。
対話すべきか。
その判断が、人類の未来を左右する。
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その沈黙を破ったのはシンラだった。
「両方やります。」
全員が彼を見る。
「まず俺が接触する。」
「交渉が成立すれば戦わない。」
「もし失敗したら。」
そこで一度言葉を切る。
「俺が止めます。」
誰も反論できなかった。
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## 出撃準備
アナハイム第七格納庫。
巨大なシャッターが開く。
そこには三機のモビルスーツが並んでいた。
最前列には、白と紺を基調とした新たな希望。
**ハイニューガンダム・レイ リバース。**
その左右には、
ユニコーンガンダム。
バンシィ。
整備員たちが最後の点検を行っている。
シンラは機体の装甲へ静かに手を添えた。
「頼むぞ。」
返事はない。
しかし、全身のサイコフレームが一瞬だけ青く輝いた。
整備主任が笑う。
「お前の機体は本当に返事をするみたいだな。」
「気のせいですよ。」
そう答えながらも、シンラは少しだけ微笑んだ。
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## ミツキの願い
出撃直前。
格納庫へ一人の女性が駆け込んできた。
**ミツキ・カンザキ**だった。
少し息を切らせながら、シンラへ小さなケースを差し出す。
「これ……。」
「お守りです。」
中には、小さな青い結晶が入っていた。
「サイコフレームの試作品です。」
「開発局のみんなで作りました。」
シンラは驚く。
「みんなで?」
「はい。」
「技術者にできる応援はこれくらいしかありませんから。」
シンラは静かに受け取り、パイロットスーツの胸ポケットへしまう。
「ありがとう。」
短い言葉だった。
だが、それだけで十分だった。
ミツキは笑顔を見せる。
「必ず帰ってきてください。」
「もちろん。」
その一言には、一切の迷いがなかった。
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## 接触
木星と火星の中間宙域。
三機のガンダムが星喰い先遣個体へ接近する。
距離一万キロ。
五千。
千。
巨大な銀色の存在が、その姿を現す。
コロニーを軽く超える大きさ。
表面には都市のような模様が走り、中心部では恒星のような光が脈動していた。
通信はない。
武器を構える様子もない。
ただ静かに進んでいる。
シンラは通信回線を開く。
「聞こえるか。」
数秒の沈黙。
そして。
『認識。』
低く響く声。
『希望因子。』
『再接触を確認。』
「質問がある。」
『許可。』
「何故、地球圏へ向かう。」
再び沈黙。
やがて返ってきた答えは。
『確認。』
「確認?」
『宇宙寿命短縮現象。』
『発生源確認。』
シンラは目を見開いた。
「原因を探しているのか。」
『肯定。』
『地球圏に異常反応。』
その瞬間。
アルテアから緊急通信が入る。
『ヤマト・シンラ!』
『観測機構でも新たな反応を検知しました!』
巨大モニターに座標が表示される。
**地球。**
全員が凍り付く。
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## 黒い波動
地球圏。
ラプラス跡地付近。
そこに、漆黒の裂け目が生まれていた。
空間そのものが崩れている。
サイコフレームが勝手に共鳴を始める。
ハイニューガンダム・レイ リバースのコックピットに警報が鳴る。
「空間崩壊……。」
シンラは初めて見る現象だった。
アルテアの声が震える。
『ありえません。』
『第七宇宙で空間崩壊は確認されていません。』
『これは……。』
その時。
星喰い先遣個体が動いた。
巨大な身体から光が放たれる。
黒い裂け目へ向けて一直線に進み始めた。
リディが叫ぶ。
「待て!」
「敵じゃなかったのか!」
バナージはモニターを見つめる。
「違う……。」
「あれは……。」
シンラも理解した。
星喰いは地球を滅ぼしに来たのではない。
**宇宙そのものを蝕む異常を止めに来たのだ。**
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## 新たな脅威
その直後。
黒い裂け目の中から、何かが姿を現した。
人型。
しかしモビルスーツではない。
全身が漆黒の結晶で覆われ、背中には翼のような巨大構造体。
その姿はどこかガンダムを思わせながらも、生物のようでもあった。
アルテアが驚愕する。
『識別……不能。』
『黄金観測機構の全記録に存在しません!』
未知。
それは黄金観測機構ですら知らない存在だった。
黒い機体がゆっくりと顔を上げる。
そして。
全員の脳へ直接声が響く。
『――観測対象確認。』
『希望因子。』
『……排除を開始する。』
シンラは操縦桿を強く握る。
「こいつが……。」
宇宙寿命を縮める元凶。
人類でもなく。
星喰いでもなく。
黄金観測機構でもない。
**第四の存在**。
ハイニューガンダム・レイ リバースの全身のサイコフレームが蒼く輝き始める。
その光に応えるように、ユニコーンガンダムとバンシィもサイコフレームを発光させた。
宇宙を守る三機と、未知なる漆黒の敵。
決戦の幕が、静かに上がろうとしていた。