機動戦士ガンダム 逆襲の残光 ―RAY―   作:ガーディアス

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黒き観測者

U.C.0098――地球圏外宙域

 

静寂。

 

宇宙には音はない。

 

しかし、その場にいる誰もが「戦いの始まり」を感じていた。

 

黒い裂け目から現れた漆黒の機体。

 

黄金観測機構ですら存在を知らない謎の存在。

 

その漆黒の装甲は星の光さえ吸い込むようであり、背中の巨大な翼状ユニットからは黒い粒子が絶えず流れ出している。

 

アルテアは全観測装置を起動する。

 

『解析開始……』

 

『構成物質……不明。』

 

『エネルギー反応……観測不能。』

 

『存在情報……取得失敗。』

 

彼女の声に、初めて焦りが混じった。

 

『記録にありません……。』

 

『黄金観測機構が七つの宇宙で収集した全情報にも、この存在はありません。』

 

シンラは静かに呟く。

 

「つまり、本当の未知か……。」

 

その瞬間、黒い機体がゆっくりと顔を上げた。

 

赤く輝く双眸が、まっすぐハイニューガンダム・レイ リバースを見据える。

 

『識別完了。』

 

『希望因子……ヤマト・シンラ。』

 

『抹消対象として認定。』

 

低く、感情のない声が全員の意識へ直接響いた。

 

---

 

## 第一戦

 

「来る!」

 

シンラが叫ぶ。

 

次の瞬間、黒い機体は視界から消えた。

 

「速い!」

 

リディが叫ぶ。

 

通常の推進ではない。

 

空間そのものを飛び越えるような移動。

 

ハイニューガンダム・レイ リバースのサイコフレームが警告を発する。

 

「右!」

 

反射的に機体をひねる。

 

直後、先ほどまで機体があった空間が黒い光に切り裂かれた。

 

ビームではない。

 

空間そのものが削り取られている。

 

「なんだ、この攻撃は……!」

 

バナージのユニコーンガンダムがビーム・マグナムを放つ。

 

閃光が宇宙を駆ける。

 

しかし。

 

黒い機体は片手を軽く上げただけだった。

 

ビームが消えた。

 

「消えた!?」

 

リディが息を呑む。

 

アルテアが即座に解析する。

 

『エネルギー消滅現象。』

 

『攻撃を受け止めたのではありません。』

 

『存在そのものを消去しています。』

 

「そんなことが……!」

 

常識が崩れていく。

 

---

 

## 三機の連携

 

「バナージ!」

 

「はい!」

 

「リディ!」

 

「分かってる!」

 

三機が散開する。

 

長年の経験で築かれた連携。

 

ユニコーンが正面から牽制。

 

バンシィが左側から高速接近。

 

シンラは上方へ回り込み、フィン・ファンネルを全基展開する。

 

「一斉射!」

 

六基のフィン・ファンネル。

 

ユニコーンのサイコミュ兵装。

 

バンシィのアームド・アーマー。

 

無数の光が黒い機体へ降り注ぐ。

 

宇宙が光で埋め尽くされた。

 

しかし。

 

光が消える。

 

そこには傷一つない敵が立っていた。

 

『解析終了。』

 

『人類兵器、脅威度ゼロ。』

 

黒い機体が静かに右腕を上げる。

 

その掌へ黒い球体が現れた。

 

『削除。』

 

球体が放たれる。

 

「散開!」

 

シンラの叫びと同時に三機が回避する。

 

球体は遥か後方の小惑星へ命中した。

 

爆発は起きない。

 

小惑星は静かに消えた。

 

跡形もなく。

 

まるで最初から存在しなかったかのように。

 

---

 

## 希望因子

 

戦闘が続く中、シンラの頭へ直接声が響く。

 

『質問。』

 

敵だった。

 

『何故抵抗する。』

 

「守りたいものがあるからだ。」

 

『理解不能。』

 

「理解しなくていい。」

 

『守る価値は存在しない。』

 

『宇宙はいずれ終焉する。』

 

『生命は一時的な現象である。』

 

『消去は必然。』

 

シンラは静かに笑った。

 

「そうかもしれない。」

 

「でも。」

 

「終わると決まっていても。」

 

「生きることには意味がある。」

 

敵は沈黙した。

 

『回答……記録外。』

 

『理解不能。』

 

『希望因子特有の思考を確認。』

 

---

 

## 星喰いの介入

 

その瞬間だった。

 

巨大な星喰い先遣個体が動く。

 

銀色の巨体が黒い機体の前へ立ちはだかる。

 

『観測異常。』

 

『排除対象確認。』

 

黒い機体が初めて反応を示した。

 

『星喰い。』

 

『旧管理個体。』

 

『排除。』

 

次の瞬間、星喰いが放った黄金の光と黒い機体の黒い光が衝突する。

 

宇宙が震える。

 

時空が軋む。

 

アルテアが叫ぶ。

 

『衝撃波が地球圏へ到達します!』

 

シンラは即座に決断した。

 

「三機でサイコフィールドを展開する!」

 

「了解!」

 

ユニコーン。

 

バンシィ。

 

ハイニューガンダム・レイ リバース。

 

三機のサイコフレームが同時に輝き始める。

 

青い光。

 

緑の光。

 

金色の光。

 

三つの意思が一つになる。

 

「皆の命を!」

 

「守る!」

 

巨大なサイコフィールドが形成される。

 

衝撃波と激突。

 

凄まじい負荷が三機を襲う。

 

警報が鳴り響く。

 

フレーム温度限界。

 

サイコミュ過負荷。

 

それでも誰一人として解除しない。

 

「負けるか!」

 

シンラが叫ぶ。

 

その声に応えるように、胸ポケットの小さな青い結晶――ミツキたち開発局の仲間が作ったお守りが淡く輝く。

 

その光はハイニューガンダム・レイ リバースのサイコフレームと共鳴し、フィールドをさらに強固なものへ変えていった。

 

アルテアが驚愕する。

 

『出力上昇……!』

 

『理論値を超えています!』

 

『これが……人類の意思……。』

 

---

 

## 黒き観測者の名

 

衝撃が収まり、黒い機体が静かに口を開いた。

 

『記録更新。』

 

『希望因子……危険度上昇。』

 

『自己紹介を実施。』

 

『我が名は――』

 

『**終焉観測者《ネメシス》**。』

 

『宇宙終焉管理機構所属。』

 

『使命。』

 

『寿命を拒む宇宙の排除。』

 

アルテアの表情が凍りつく。

 

『終焉管理機構……。』

 

『そんな組織は存在しない……。』

 

『いや……。』

 

『存在してはいけない……。』

 

シンラはネメシスを見据えた。

 

「宇宙を終わらせるための存在か。」

 

『肯定。』

 

『希望因子は計画を阻害する。』

 

『ゆえに抹消する。』

 

その言葉を残し、ネメシスは黒い裂け目へゆっくりと姿を消した。

 

戦いは終わった。

 

しかし、それは敗北でも勝利でもない。

 

敵は力を測り、人類を観察しただけだった。

 

---

 

## 新たな決意

 

帰還したラー・カイラム。

 

格納庫でハイニューガンダム・レイ リバースを見上げながら、シンラは静かに拳を握る。

 

「まだ足りない。」

 

「この機体も。」

 

「俺たちも。」

 

そこへバナージとリディが歩み寄る。

 

「でも。」

 

バナージが笑う。

 

「三人なら、きっと届きます。」

 

リディも頷く。

 

「今度は向こうを驚かせてやろう。」

 

シンラは二人を見て微笑んだ。

 

「次は。」

 

「俺たちが未来を見せる番だ。」

 

その瞳には、決して折れない希望の光が宿っていた。

 

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