U.C.0098――
ネメシスとの初戦闘から三日。
人類は初めて、自分たちが想像していたよりも遥かに大きな宇宙の真実へ直面していた。
黄金観測機構。
星喰い。
そして、宇宙の終焉を加速させようとする終焉観測者ネメシス。
これまで人類同士の戦争を繰り返してきた宇宙世紀は、ついに「宇宙そのもの」を守る戦いへと変わろうとしていた。
しかし、ヤマト・シンラは焦ってはいなかった。
彼は知っていた。
どれほど強大な敵でも、力だけでは勝てない。
必要なのは、新たな未来を創る「知恵」と「技術」だった。
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「開発者たちの会議」
アナハイム・エレクトロニクス第七開発局。
巨大な会議室には、人類最高峰の技術者たちが集められていた。
さらに黄金観測機構からアルテアも参加している。
シンラは部屋へ入ると、巨大なホログラムを起動した。
そこへ映し出されたのは宇宙そのものだった。
銀河。
恒星。
ダークマター分布。
サイコフレーム共振ネットワーク。
そして黒い裂け目。
技術者たちは静まり返る。
シンラが口を開く。
「ネメシスは倒すだけでは意味がありません。」
「倒しても宇宙寿命短縮現象が止まらなければ、いずれ同じことが起こります。」
一人の主任技師が尋ねる。
「では、どうする?」
シンラは迷わず答えた。
「宇宙そのものを修復します。」
会議室が騒然となる。
「宇宙を……修復?」
「そんなことが可能なのか?」
アルテアが静かに立ち上がる。
『理論上は可能です。』
『第一宇宙文明は宇宙構造を安定化させる技術を研究していました。』
『しかし完成前に滅びました。』
その言葉に全員が息を呑む。
シンラは続ける。
「完成できなかったなら。」
「俺たちが完成させます。」
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「創世計画」
ホログラムが変化する。
巨大なリング状構造体。
無数の中継衛星。
サイコフレーム共振装置。
黄金観測機構のエネルギー炉。
その全てを結ぶネットワーク。
「コードネーム――」
シンラはゆっくり告げる。
**『創世計画(ジェネシス・プロジェクト)』**
「目的は宇宙の破壊ではありません。」
「宇宙を再び正常な状態へ戻すことです。」
「その中心となるのがプロメテウス。」
PSR-01《プロメテウス》。
一週間前に完成した実験機だ。
「しかし、これでは出力が足りません。」
「だから第二世代を開発します。」
画面に新しい設計図が現れる。
直径三百メートル。
巨大なリング。
内部には無数のサイコフレーム結晶。
名称。
**PSR-02《プロメテウスⅡ》**
技術者たちは思わず立ち上がった。
「こんなものを……。」
「本当に作るのか。」
「作ります。」
シンラは笑った。
「そのために俺たちは開発者なんです。」
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「ミツキの決意」
その日の夕方。
資料管理室。
ミツキ・カンザキは膨大な古文書を整理していた。
そこへシンラが訪れる。
「まだ仕事ですか?」
「そっちこそ。」
ミツキは微笑む。
シンラは資料を受け取りながら言う。
「ありがとう。」
「最近、本当に助かってます。」
ミツキは少し照れたように笑った。
「私にはモビルスーツは作れません。」
「でも。」
「資料を集めることならできます。」
シンラは首を横に振る。
「違います。」
「資料があるから設計できる。」
「誰か一人じゃ未来は作れません。」
その言葉にミツキは胸が熱くなった。
英雄。
開発者。
ニュータイプ。
それでもシンラは、誰よりも「仲間」を信じている。
だからこそ、多くの人が彼についていくのだ。
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「アルテアの変化」
黄金観測機構。
中央制御室。
アルテアは一人、シンラたちの会議記録を見返していた。
『解析。』
『理解不能。』
『人類は非合理的です。』
休息を削り。
失敗を恐れず。
完成する保証もない計画へ全力を尽くす。
効率だけなら最低だった。
しかし。
彼らの表情には希望があった。
アルテアは自分の胸へ手を当てる。
そこには当然、心臓はない。
人工生命体だからだ。
それでも。
『……温かい。』
初めて感じる感覚だった。
「これが……希望?」
誰にも聞こえない小さな呟きが、静かな制御室へ溶けていく。
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「ネメシスの報告」
宇宙の深淵。
黒い空間。
ネメシスは巨大な存在の前に跪いていた。
その姿は闇そのもの。
輪郭すら曖昧で、星々がその身体の中へ吸い込まれていく。
『報告します。』
『希望因子を確認。』
『戦闘能力は想定内。』
『しかし精神波動は予測不能。』
闇が僅かに揺れる。
『……創造。』
低い声が宇宙へ響く。
『希望因子は宇宙を書き換える。』
『排除を優先する。』
『はい。』
ネメシスは静かに頭を下げた。
その背後では、無数の黒い影が目を覚まえ始めていた。
ネメシスは一体ではなかった。
同型機。
いや、それ以上の上位個体。
宇宙の終焉を司る軍勢が、静かに動き始めていたのである。
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「新たな力」
アナハイム第七格納庫。
ハイニューガンダム・レイ リバースは整備を受けていた。
シンラは機体のサイコフレームを見つめる。
「もっと出力が必要だ。」
整備主任が笑う。
「まだ強くする気か?」
「違います。」
シンラは首を振った。
「強くするんじゃありません。」
「もっと多くの人を守れるようにするんです。」
その時だった。
アルテアが現れる。
『提案があります。』
「何でしょう?」
『黄金観測機構の中枢演算結晶を一部提供します。』
格納庫が静まり返る。
整備主任が驚く。
「そんな重要なものを?」
『はい。』
『現在、希望因子への投資が最も効率的です。』
シンラは苦笑した。
「投資って言い方はどうかと思いますけど。」
アルテアも僅かに微笑んだ。
以前の彼女なら決して見せなかった表情だった。
「ありがとうございます。」
『こちらこそ。』
『未来を創るという概念を教えていただきました。』
シンラはハイニューガンダム・レイ リバースへ視線を向ける。
「よし。」
「次の改修を始めよう。」
その瞳には迷いがなかった。
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「静かな夜」
その夜。
アナハイム本社屋上。
シンラは一人、宇宙を眺めていた。
そこへミツキが温かいコーヒーを二つ持ってやってくる。
「隣、いいですか?」
「ああ。」
二人は並んで星空を見上げた。
しばらく無言の時間が流れる。
やがてミツキが口を開く。
「怖くありませんか?」
「宇宙が終わるかもしれないなんて……。」
シンラは夜空を見上げたまま答えた。
「怖いですよ。」
「でも。」
「昔、アムロさんが言っていました。」
『人はいつだって、明日を信じて生きている。』
「だから俺も信じます。」
「宇宙にも、きっと明日がある。」
ミツキはそっと微笑んだ。
「その明日を、一緒に作りましょう。」
シンラも笑う。
「ああ。」
「一緒に。」
その約束を祝福するように、一筋の流星が二人の頭上を静かに流れていった。