「約束の日になりました。この一週間の成果が楽しみです」
あれから一週間。約束の日がやってきた。
ここで結果を残せなければ、すなわちサンフェスへの出場は無くなる。
部員のやる気は以前に比べると満ちていた。
鳥塚先輩の音に合わせて、調整を行う。
「よろしいですか? では、はじめましょう さんっ」
滝先生の言葉に合わせて、演奏を開始する。
一週間前に比べたら上達した。
海兵隊の演奏を終え、部員達は先生の言葉を待つ。
先輩達は、マッピを持って投げる体制を取っていた。
サンフェスに出れるか出れてないか。その運命の時を待つ。
「いいでしょう 細かいことを言えばまだまだ気になるところはありますが、何よりもみなさん、今、合奏をしていましたよ」
滝先生のその一言によって、音楽室には良い空気が入って来た。
「小笠原さん これを皆さんに配って頂けますか?」
先生はそう言い、部長に紙を渡し、僕の手にも回ってきた。
そこには、ぎっしりと書かれた練習メニューだった。
「それではみなさん、おまたせしました。サンフェスに向けての練習メニューです」
先輩達からは、日曜日も練習あるのかと言っていたが、そんなのは当たり前なのだ。
「曲はなんですか?」
「譜面は明日配ります。お楽しみに。さて、残された日数は多くありません。ですが、みなさんが普段若さにかまけてどぶに捨てている時間をかき集めれば、この程度の練習量は余裕でしょう」
この先生…やっぱり、とげとげしいな。
「サンフェスは楽しいお祭りですが、コンクール以外で有力校が一堂に集まる大変貴重な場でもあります。この場を利用して、今年の北宇治は一味違うと思わせるのです」
「でも今からじゃ?」
「出来ないと思いますか?私は出来ると思っていますよ。なぜなら私たちは全国を目指しているのですから」
そうだ。先生の言う通り、僕達は全国を目指しているのだ。
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合奏の日から、それぞれのパート教室から音が聞こえるようになり、今日はサンフェス衣装の計測の日。
なんか、久美子が自身の胸を見て、落ち込んでいたけど、突っ込まない方が良いよな。
「浩輔は身長伸びたな」
「勝手に見るんじゃねー」
自分の身体結果の紙を見ていると、秀一が背後から覗き込んできた。
見せて恥ずかしい物ではないから、別に良いんだけどさ。
そして、サンフェス一週間前に衣装合わせをする。
「様になってるな麗奈は」
「そう?ありがとう。浩輔も似合ってる」
そう言う麗奈は、頬が若干紅く染まっていた。
サンフェス衣装に身を包んで麗奈は、本当に様になっていた。
美人ってずるいよなと思ってしまった。
「はい聞いて!」
「今日の練習はグラウンドがあいているので外でやりまーす。ジャージに着替えてグラウンド集合で!」
先輩達の言葉で、麗奈に向けていた意識が現実に戻される。
そして、やってきたグラウンド。まだ夏になっていないのに、グラウンドは既に熱い空気が漂っていた。
「うわあ これってもしかして焼ける?」
「間違えなく焼けるね」
「うんうん、そりゃ焼けるでしょう」
「出てるとこだけこんがりと」
久美子からの問いに、僕達三人はそう返す。
「はい。使って良いよ。日焼け止め」
とそこへ、葵さんがやってきた。
「あおい…せんぱい」
「ありがとうこざいます」
「ふふっ やっぱり落ち着かないね。久美子ちゃんに先輩って言われると」
葵さんはそう言って、僕にも日焼け止めクリームを渡してくれた。
本当に助かりますよ。
「はーい。いいですか?今日はまず楽器を持たずに練習をします。初心者の一年はステップ練習をしてください。他は全員行進の練習から始めます。足がそろってないとある意味演奏のミスより目立つので気合を入れていくように」
あすか先輩の言葉で気を引き締める。
行進は一歩62.5センチで左足から歩き出す。
演奏しながら下を見ないで常にこの歩幅で歩けるようにならないといけない。
「はい。それじゃあ五分休憩」
あすか先輩の言葉で、それぞれに散っていく部員達。
もちろん、僕も木陰に避難をする。
「緑ちゃん、ガードなんだ」
木陰から見ると、ガードの練習をしている緑ちゃんが目に入った。
「川島さん、可愛いからガードやってって言われてた」
「納得」
いつの間にか。隣に居た植田さんから説明を受けて僕は納得した。
北宇治には、謎ステップというものがあるらしいが、僕は演奏の方に回るので無し。やってみたかったんだけど仕方ない。
「今更かもしれないけど、植田さんも似合ってるね」
「えへへ。そうかな?浩輔君だってかっこいいよ」
「ありがとね」
植田さんとそう話して、休憩を取っていると休憩時間はあっという間に過ぎて行き、放課後になっていた。
「では、そろそろ時間ですね」
滝先生の言葉によって、グラウンドを使った練習はここまでに_かと思われたが。先輩の一言によって、用事がある人以外は残って練習することになった。
「あれ?麗奈、電車だったっけ?」
練習終わり、駅に着くとそこにはベンチに座っている麗奈の姿がそこにはあった。
「帰り遅くて危ないからって、母さんが」
「あーね。叔母さんが言いたい事も分かるわ。昨日のこの時間だったし」
「でも、浩輔が一緒なら大丈夫って」
麗奈はそう言って、自身のスマホの画面を見せてきた。
画面にはお母さんとのやり取りがあった。
「えらい信用されてるんだな僕は」
「じゃなかったら、浩輔の家に行かないでしょ」
「それもそうだ」
と電車がやってきて、車両端の座席に並んで座る。
「何見てるの?」
「うん?もうすぐ試験でしょ?こういう時間を無駄にしたくないからね」
「そうは言っても浩輔、頭良い方だったでしょ」
「あはは、麗奈ほどじゃないよ」
ふと、隣の車両が目に入った。そこには、如何にも眠そうな久美子の姿が_そして、列車はそのまま宇治駅に着いた。
「びっくりしたよ、高坂さんと浩輔が一緒なの」
「偶々一緒になっただけだよ」
僕と久美子でそう話していると、麗奈はこんな事を聞いてきた。
「どう思う?滝先生」
「え?滝先生?」
「どう思う?」
「僕は素敵な先生だと思うよ。久美子は?」
「ど、どおってそりゃいい先生だと思うよ。みんな練習するようになったし。夏紀先輩も去年はこんなこと無かったって言ってたし。それに、ま、かっこいい とか」
「かっこいい?」
あっ…地雷を踏んだな久美子。
「へっ? あ、いや、私じゃないよ?みんなが言ってるの。私はどっちかって言うと乗せるの上手い先生だなーくらいで」
イケメン悪魔とか言われてたような気がするけど…まぁいいや
「そう」
「う、うん。そう。ほら。海兵隊が上手に出来たからって、去年まで銅賞だったところがいきなり全国いけるとか、そんなのはありえないよなーって思って はぁーー いや、違う。あぁぁぁ違うのっ そういうんじゃなくってーーー」
「久美子…テンパリ過ぎ…」
「あっ」
「黄前さんらしいね」
麗奈は微笑みながらそう言った。
「じゃあ私こっちだから」
「おう、お疲れーまた明日」
麗奈は自分の家がある方向へと歩き出した。
「よし、僕達も帰るか」
「うん」
映画泣きました。
まだ見てない方も多いと思うので、感想はこれぐらいにしておきますね。
次回はいよいよサンフェス回になります。