元野球部が過ごすクラリネットパートにようこそ   作:桜紅月音

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26.悩みのオーボエと合宿

 

お盆休みの三日間が過ぎて、二泊三日の合宿が始まった。

 

 

コンクールメンバーともなかは、違う部屋で練習を行う。

 

 

「高野、行くぞー」

 

 

「うん、分かった」

 

 

高野を呼んで、もなかの部屋に向かう。

既に、メンバーは集まっていた。

 

 

「集まってるな」

 

 

松本先生が入ってきて、点呼を取っていく。

そして、キツイ練習が始まったのだ。

 

 

「そっちはどうだった?」

 

 

練習終わり、この合宿では癒しの時間になるであろう食事の時間。

食事の時間。植田がそう話を掛けてきた。

 

 

「きつかったよ…」

 

 

「うわぁ…浩輔君の目が死んでる…」

 

 

「…松本先生「分かってるな」って…」

 

 

「うわぁ…」

 

 

僕と高野の様子を見て、植田は引いていた。

 

 

「植田の方は?新山先生どうだったのかなって」

 

 

滝先生の知り合いで、木管の新山先生。

木管ってこともあって、島先輩辺りは喜んでたらしい。

 

 

「…こっちも大変だったよ…」

 

 

「そうか…」

 

 

明らかに、遠い目をしている植田を見て、そう言うしかなかった。

 

 

「高久さんはどうだったの」

 

 

「私…?」

 

 

「うん、高久さんから見て新山先生はどうだったのかなって」

 

 

「私は良い先生だったと思うよ」

 

 

「ほうほう、松崎さんは?」

 

 

「私も同じ意見かな」

 

 

二人は同じ意見。新山先生良い先生なんだろう。

 

 

「お互いに頑張ろうって事で」

 

 

「だね」

 

 

「うん、頑張る!」

 

 

「私、頑張るぞ!!」

 

 

植田と高久が息込んでいると、僕らに近づく姿が

 

 

「一年生達だけ集まって何の話をしてるのかな?」

 

 

とそこで、僕の肩に手を置いてやってきたのは鳥塚先輩。

食べ終わった後なんだろう、手元には何もなかった。

 

 

「隣座るよ」

 

 

先輩はそう言って、僕と高野の間に無理やり入ってきた。

 

 

「先輩ー狭いですって!」

 

 

「気にしないの」

 

 

高野が先輩に文句を言うと、先輩は聞く耳を持たない。

 

 

「ふふふ」

 

 

「なんで高久さん笑ってるの」

 

 

このやり取りを見た高久さんが笑っていた。

笑いどころではない。

 

 

「そのやり取り面白いね」

 

 

「面白いのか…」

 

 

高久さんの感性が分からなかった。

 

 

 

 

 

 

*******

 

 

「涼しい~」

 

 

食事時を終えて、後は就寝時間まで暇だったので、僕は外に出て風に当たっていた。

 

 

「あっ…」

 

 

「あっ…先輩」

 

 

とそこに、先輩がやってきた。

確か…オーボエの…

 

 

「よろ、鎧塚先輩…でしたっけ?」

 

 

「うん…そう…」

 

 

先輩はそう言って、机を挟んだ反対側の席に座った。

いや…座るんかい…

 

 

「……」

 

 

先輩は黙ったまま、スマホを触りだした。

何をしてるか分からないけど、こっちから干渉しなければ大丈夫だろう。

そう思い、僕も携帯を触る。

 

 

『大阪東照ー!!さよならホームランで、決勝進出ーー!!!!!!』

 

 

携帯を見て、甲子園の映像を見る。

立華に勝った大阪東照は、決勝に勝ち進んだみたいだった。

 

 

「ねぇ…」

 

 

「は、はい…」

 

 

「野球好きなの…?」

 

 

「は、はい、元々野球やってたので…」

 

 

「そう…」

 

 

先輩はそう言って、再び椅子に座り込んだ。

ちょっとうるさかったかな…音無しで映像を見る事にしよう…そう思った時だった。

 

 

「ハァ…」

 

 

久美子…?なんでここに?

 

 

「あっ…」

 

 

鎧塚先輩も気になったようだ。

久美子は、音楽を聴いていた。僕は聞いた事がある…この曲って確か…南中の……

 

そう思っていると、鎧塚先輩が立って久美子の足を突いた。

 

 

「ひっ!?鎧塚先輩!?と浩輔!?」

 

 

「よぉ……」

 

 

「その曲やめて嫌い」

 

 

僕と鎧塚先輩の反応は大いに違っていた。

 

 

「すみません、先輩と浩輔はどうしてここに?」

 

 

「夜風に当たりに来ただけ」

 

 

「リズムゲーム 眠れないから、どうぞ」

 

 

「はぁ…」

 

 

鎧塚先輩に案内されるがまま、久美子はそのまま先輩の隣に座る。

 

 

「リズムゲーム、音無しでもできるんですか?」

 

 

「ねぇ、コンクールって好き?」

 

 

鎧塚先輩はそう久美子に聞いた。

 

 

「え?」

 

 

「私は嫌い。結局、審査員の好みで結果決まるでしょ」

 

 

確かに、野球みたいに点数で決まる競技なら、納得できる。

しかし、吹奏楽は審査員の好みで決まる。

 

 

「でも、そういうのって、何となく仕方ないかなって、思っちゃってます」

 

 

「仕方ない?たくさんの人が悲しむのに」

 

 

久美子の言葉も先輩の言葉も両方の言葉も分かってしまう。

 

 

「すみません」

 

 

「私は苦しい。コンクールなんて、なければいいのに」

 

 

「え?じゃあ、その…鎧塚先輩はどうして続けてるんですか?」

 

 

「分からない」

 

 

「先輩…?」

 

 

「えっ、先輩?」

 

 

「もう何も…分からない」

 

 

鎧塚先輩の反応は気になるが…僕らにはどうしようもなかった。

その後、鎧塚先輩は一人で戻っていき、久美子と二人きりになった。

 

 

「久美子、持ち前の力でなんとかしたらどうよ」

 

 

「無理だよ…」

 

 

「久美子なら出来ると思うんだけどなぁ」

 

 

「浩輔じゃないんだよ、私は」

 

 

「何を言ってるんだが」

 

 

 

*******

 

 

 

「どこ行ってたんだ」

 

 

「気になってたのか」

 

 

部屋に戻ってくると、秀一に聞かれた。

 

 

「浩輔の事だから、夜風に当たるとかだと思うが」

 

 

「良くお分かりな事で」

 

 

「当たりだったのかよ」

 

 

「見事に正解」

 

 

「なら、いいや」

 

 

秀一はそう言って、布団をかぶって反対側を向いた。

一体、なんだったんだ…

 

この作品のヒロインは

  • 高坂麗奈
  • 佐々木梓
  • 鳥塚ヒロネ
  • 島りえ
  • 植田日和子
  • 高野久恵
  • 吉沢秋子
  • 牧誓
  • 福井さやか
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