合宿を終え、関西大会が一日また一日と迫っていた。
そんなある日、僕は鎧塚先輩に捕まった。
「鎧塚先輩、傘木先輩と和解出来たんですね」
「うん。黄前さんと工藤君のおかげ」
「僕は何もしてないですって」
久美子から色々と話は聞いていた。
鎧塚先輩の事。傘木先輩の事。去年の部活での出来事により、傘木先輩が休部になってしまい、鎧塚先輩が、傘木先輩に仲間外れにされてしまったと思い込んでいた事など。
「ううん、工藤君にも助けられた。だから、ありがとう」
「お礼は受け取っておきますね」
*******
鎧塚先輩とそんな話をした後、僕はサポートとして、クラリネットパート教室に居た。
「先輩方ージュース持ってきましたー」
「わあーありがとー」
僕は、もなかの一員としてサポートに徹しており、今はちょっとした休憩時間だった。
「それにしても、明静工科の次なんてね」
「はぁ…なんで強豪校の次なんだ」
鳥塚先輩と臼井先輩がそう愚痴をこぼしていた。
「先輩方、橋本先生が言ってた通り、気持ちで負けていたら終わりですよ。いつも通りやるだけですよ」
「分かってるけどよ…」
我が北宇治高校吹奏楽部は、23校中16番目という悪くない位置をゲットした。
そして、主な強豪校である大阪東照は前半の3番目。秀大付属は12番目という位置に居た。
「大阪東照って本当になんでもできますよね」
「甲子園も優勝したしね」
植田が言うのもその通りで、立華を倒して東照は決勝まで勝ち進み、関東の名門校を圧倒して優勝した。
エースの藤並。150キロ越えの真っ直ぐに、切れ味のある変化球。高校生はそう簡単には打てない。
立華はよくやった方である。
「ラグビーも強いんだよねあそこ」
「高野、ラグビー知ってるんだ」
「うん、お父さんが好きだから」
野球とかサッカーを好きな人はたくさんいるが、ラグビーを好きな人って珍しいな。
「高野さんのお父さん、珍しいね」
「そうですか?私は、ずっと見てるのでそうは思わないですけど」
「身近にそういう人が居たら。その感覚に落ちちゃうよね」
鳥塚先輩は首を縦に振りながら言う。
「ヒロネ先輩は、何か好きだったりするんですか?」
「私?私はスポーツあんまり見ないから。分かんないや」
「あはは…ですよね…」
女子がスポーツを見るっていうのはあんまり聞かないから無理もないか。
「でも、浩輔君の影響で、野球はちょっと見てるよ」
「そうなんですか」
意外だ。野球は見ないだろうなと思っていたから
「うん、半神の伏留って選手、かっこいいよね」
「先輩、結構渋い所行きますね」
「そう?私はあーいうのタイプなんだ」
「えっ…」
鳥塚先輩の言葉に、臼井先輩が軽くショックを受けていた。
伏留選手、メジャーにも行って、今は半神というチームの顔であり、ベテランの選手。
「私は千本選手が好きだなー」
「あー分かる。日和子はそうだよねー!」
植田と高野は二人の世界で盛り上がっていた。
千本選手というのは、先程にも出てきたチームの一番を打つ選手。足も速くて、長打も打てる。
なんといっても、滝先生みたいにイケメンの選手だった。
「えー私は伏留選手がー」
「ヒロネ先輩は、千本選手イケメンなのに、興味ないんですか?」
「うん」
植田の問いに、先輩はそう返した。
臼井先輩が、さっきと違って元気を取り戻していた。
さては先輩…
「随分と盛り上がってる…」
そう声を上げて入ってきたのは、友恵先輩と吉沢だった。
「そろそろ集合です」
「ありがとうね。みんな、そろそろ行こっか」
鳥塚先輩の言葉で、クラのみんなで音楽室に向かう。
「明日の本番をあまり難しく考えないでください。我々が明日するのは練習でやってきたことを、そのまま出す。それだけです」
滝先生からそう言葉が飛ぶ。
「それから、夏休みの間コーチをお願いしていた、橋本先生と新山先生は本日が最後になります」
滝先生のその言葉に、部員達から悲鳴が起った。
短期間ではあったが、思い出も多い。
「最後にひと言、お願いします」
滝先生がそう言うと、新山先生が先に話し始める。
「約3週間短い間でしたが、確実に皆さんの演奏はよくなったと思います。その真面目な姿勢は、私自身見習うべきものがたくさんありました。明日の関西大会胸を張って楽しんできてください」
その言葉に、鳥塚先輩は涙を浮かべていた。
「えーっと…僕はこんな性格なので正直に言います。今の北宇治の煙雨は関西のどの高校にも劣っていません。自信を持っていい!この3週間で表現が実に豊かになりました、特に鎧塚さん!」
「あ…はい」
「見違えるほどよくなった!何かいいことあったの?」
「はい」
「いいねー今の彼女のように、明日は素直に自分たちの演奏をやり切ってください、期待してるよ!」
と橋本先生は話を締めてくれた。
「いよいよ、関西かー」
「浩輔は出ないでしょ」
「雰囲気だよ雰囲気」
「来年は吹くかもだもんなー」
放課後、秀一と久美子の三人で帰るという、珍しい組み合わせで帰っていた。
「吹くかもじゃない。絶対に吹くよ」
「そっか」
「その為にも、二人には全国に連れてもらわないとね」
「任せて」
「任せろ」
そう言う二人の言葉は物凄く頼もしかった。
「そうだ、浩輔。聞きたかった事あるんだけどさ」
「うん、何?」
「お前ってうちの福井と付き始めたのか?」
「はっ?」
突然として、聞かれた言葉に僕はそう声を出した。
「えっ!?そうなの!?」
なんで久美子は興味津々なんだ。
「どこから知ったか知らんけど、そんな事実はない!」
「そうか?パート練習の時、福井からお前の話題が多いから、てっきりそうだと思ったんだが」
「勘違いじゃねえの」
「その割には、お前の話題が多いような…」
「ふ~ん、とりあえず、明日は頑張ってな」
二人とはこの後、別れて家まで直で帰ったのだった。
元ネタ、分かった人居ますかね。
作者が好きだった選手を出しています。