元野球部が過ごすクラリネットパートにようこそ   作:桜紅月音

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28.大会前日

合宿を終え、関西大会が一日また一日と迫っていた。

そんなある日、僕は鎧塚先輩に捕まった。

 

 

「鎧塚先輩、傘木先輩と和解出来たんですね」

 

 

「うん。黄前さんと工藤君のおかげ」

 

 

「僕は何もしてないですって」

 

 

久美子から色々と話は聞いていた。

鎧塚先輩の事。傘木先輩の事。去年の部活での出来事により、傘木先輩が休部になってしまい、鎧塚先輩が、傘木先輩に仲間外れにされてしまったと思い込んでいた事など。

 

 

「ううん、工藤君にも助けられた。だから、ありがとう」

 

 

「お礼は受け取っておきますね」

 

 

 

*******

 

 

鎧塚先輩とそんな話をした後、僕はサポートとして、クラリネットパート教室に居た。

 

 

「先輩方ージュース持ってきましたー」

 

 

「わあーありがとー」

 

 

僕は、もなかの一員としてサポートに徹しており、今はちょっとした休憩時間だった。

 

 

「それにしても、明静工科の次なんてね」

 

 

「はぁ…なんで強豪校の次なんだ」

 

 

鳥塚先輩と臼井先輩がそう愚痴をこぼしていた。

 

 

「先輩方、橋本先生が言ってた通り、気持ちで負けていたら終わりですよ。いつも通りやるだけですよ」

 

 

「分かってるけどよ…」

 

 

我が北宇治高校吹奏楽部は、23校中16番目という悪くない位置をゲットした。

そして、主な強豪校である大阪東照は前半の3番目。秀大付属は12番目という位置に居た。

 

 

「大阪東照って本当になんでもできますよね」

 

 

「甲子園も優勝したしね」

 

 

植田が言うのもその通りで、立華を倒して東照は決勝まで勝ち進み、関東の名門校を圧倒して優勝した。

エースの藤並。150キロ越えの真っ直ぐに、切れ味のある変化球。高校生はそう簡単には打てない。

立華はよくやった方である。

 

 

「ラグビーも強いんだよねあそこ」

 

 

「高野、ラグビー知ってるんだ」

 

 

「うん、お父さんが好きだから」

 

 

野球とかサッカーを好きな人はたくさんいるが、ラグビーを好きな人って珍しいな。

 

 

「高野さんのお父さん、珍しいね」

 

 

「そうですか?私は、ずっと見てるのでそうは思わないですけど」

 

 

「身近にそういう人が居たら。その感覚に落ちちゃうよね」

 

 

鳥塚先輩は首を縦に振りながら言う。

 

 

「ヒロネ先輩は、何か好きだったりするんですか?」

 

 

「私?私はスポーツあんまり見ないから。分かんないや」

 

 

「あはは…ですよね…」

 

 

女子がスポーツを見るっていうのはあんまり聞かないから無理もないか。

 

 

「でも、浩輔君の影響で、野球はちょっと見てるよ」

 

 

「そうなんですか」

 

 

意外だ。野球は見ないだろうなと思っていたから

 

 

「うん、半神の伏留って選手、かっこいいよね」

 

 

「先輩、結構渋い所行きますね」

 

 

「そう?私はあーいうのタイプなんだ」

 

 

「えっ…」

 

 

鳥塚先輩の言葉に、臼井先輩が軽くショックを受けていた。

伏留選手、メジャーにも行って、今は半神というチームの顔であり、ベテランの選手。

 

 

「私は千本選手が好きだなー」

 

 

「あー分かる。日和子はそうだよねー!」

 

 

植田と高野は二人の世界で盛り上がっていた。

千本選手というのは、先程にも出てきたチームの一番を打つ選手。足も速くて、長打も打てる。

なんといっても、滝先生みたいにイケメンの選手だった。

 

 

「えー私は伏留選手がー」

 

 

「ヒロネ先輩は、千本選手イケメンなのに、興味ないんですか?」

 

 

「うん」

 

 

植田の問いに、先輩はそう返した。

臼井先輩が、さっきと違って元気を取り戻していた。

さては先輩…

 

 

「随分と盛り上がってる…」

 

 

そう声を上げて入ってきたのは、友恵先輩と吉沢だった。

 

 

「そろそろ集合です」

 

 

「ありがとうね。みんな、そろそろ行こっか」

 

 

鳥塚先輩の言葉で、クラのみんなで音楽室に向かう。

 

 

 

「明日の本番をあまり難しく考えないでください。我々が明日するのは練習でやってきたことを、そのまま出す。それだけです」

 

 

滝先生からそう言葉が飛ぶ。

 

 

「それから、夏休みの間コーチをお願いしていた、橋本先生と新山先生は本日が最後になります」

 

 

滝先生のその言葉に、部員達から悲鳴が起った。

短期間ではあったが、思い出も多い。

 

 

「最後にひと言、お願いします」

 

 

滝先生がそう言うと、新山先生が先に話し始める。

 

 

「約3週間短い間でしたが、確実に皆さんの演奏はよくなったと思います。その真面目な姿勢は、私自身見習うべきものがたくさんありました。明日の関西大会胸を張って楽しんできてください」

 

 

その言葉に、鳥塚先輩は涙を浮かべていた。

 

 

「えーっと…僕はこんな性格なので正直に言います。今の北宇治の煙雨は関西のどの高校にも劣っていません。自信を持っていい!この3週間で表現が実に豊かになりました、特に鎧塚さん!」

 

 

「あ…はい」

 

 

「見違えるほどよくなった!何かいいことあったの?」

 

 

「はい」

 

 

「いいねー今の彼女のように、明日は素直に自分たちの演奏をやり切ってください、期待してるよ!」

 

 

と橋本先生は話を締めてくれた。

 

 

「いよいよ、関西かー」

 

 

「浩輔は出ないでしょ」

 

 

「雰囲気だよ雰囲気」

 

 

「来年は吹くかもだもんなー」

 

 

放課後、秀一と久美子の三人で帰るという、珍しい組み合わせで帰っていた。

 

 

「吹くかもじゃない。絶対に吹くよ」

 

 

「そっか」

 

 

「その為にも、二人には全国に連れてもらわないとね」

 

 

「任せて」

 

 

「任せろ」

 

 

そう言う二人の言葉は物凄く頼もしかった。

 

 

「そうだ、浩輔。聞きたかった事あるんだけどさ」

 

 

「うん、何?」

 

 

「お前ってうちの福井と付き始めたのか?」

 

 

「はっ?」

 

 

突然として、聞かれた言葉に僕はそう声を出した。

 

 

「えっ!?そうなの!?」

 

 

なんで久美子は興味津々なんだ。

 

 

「どこから知ったか知らんけど、そんな事実はない!」

 

 

「そうか?パート練習の時、福井からお前の話題が多いから、てっきりそうだと思ったんだが」

 

 

「勘違いじゃねえの」

 

 

「その割には、お前の話題が多いような…」

 

 

「ふ~ん、とりあえず、明日は頑張ってな」

 

 

二人とはこの後、別れて家まで直で帰ったのだった。

 




元ネタ、分かった人居ますかね。


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