京都駅でのコンサートを終えると、コンクールメンバーは、全国大会に向けて練習が更にきびしくなっていった。
その中で…
「おはよー」
「浩輔、おはよー」
「おはよー珍しいな、お前が一人なんて」
宇治橋を渡る久美子と秀一の二人を発見し、挨拶を交わして聞いた話を彼女に聞いた。
それは、久美子のお姉さんである
「そういえば、麻美子さん、大学辞めるって聞いたんだけどさ、本当なの?」
「浩輔まで、何で知ってんの!?」
彼女から返ってきた言葉はそれだった。
「俺の母ちゃん経由か…」
「うん」
昨日、母さんから聞いて驚いたのを覚えている。
「ハァ…人には、外で言うなって言っておいて」
久美子がそう呟く声が聞こえてきた。
「大学で何かあったのか?」
「知らないよ、お姉ちゃん、大学行ってからほとんど話してないし」
「そんなものか」
「そうだよ」
僕には、兄弟が居ないから分からないけど、姉妹って難しいんだなと思った。
******
「中間不安だー…」
放課後、もなかの教室に着くと、ララちゃんが机に突っ伏してた。
「ララちゃん、私と一緒に勉強頑張ろう!」
「さやかちゃん~」
そんな彼女を心配して、福井がそう声を掛けて、彼女にララちゃんが抱き着いていた。
「私たちも頑張らないとだよね」
「だねー」
「夏紀は大丈夫でしょ」
二年生の先輩方もそんな会話をしていた。
中間か。
「お疲れ様です」
「高野、お疲れー」
「浩輔君、お疲れ様」
そんな彼女に声を掛ける者が居た。
「久恵ちゃん!勉強って出来る!?」
「えっ!?私!?」
中野が高野に声を掛けていた。
「うん、良かったらなんだけど一緒に勉強しようよ!」
「うん、いいよ」
高野がそう返すと、中野は「いつにする」と聞いていた。
彼女達は、彼女達で勉強会を開いて、頑張るのだろう。
今年は麗奈に勉強会やるぞーとでも言われるんだろうか…。
中学時代の事を思い出すなぁ
「次は負けないから!」
僕が、学年一位を取った時に、麗奈にそう言われた事を思い出す。
懐かしい。進学クラスに行っている麗奈は、あの時よりももっと凄いと思う。
「ねえねえ、工藤君も一緒に勉強会しようよー」
中野からお誘いを受けてしまった。
高野も笑顔で居るし、彼女に確認を取る必要も無さそう。
「いつ?」
「えっとね…この日」
中野に出された日付は、中間テストの三日前。
「あーごめん。その日。予定があって…」
「ううん、気にしないで」
「誘ってくれてありがとね」
中野にお礼を言って、この話は終わった。
そういえば、あすか先輩がまた部活に顔を出していないが、そっちの方は大丈夫なのだろうか…
その日の放課後、麗奈から『校門』で待ってると言われて、帰宅準備を早々に済まして向かうと、麗奈からこう言われた。
「久美子が風邪気味で帰った?」
「うん」
パート練習に熱が出ていて、こじらせる前に帰って早く休めと言われて帰ったらしい。
「風邪引きやすい時期だからねぇ…」
「それでどうする?」
「最初から行く気で誘ってきた癖に」
という事で、久美子の家に向かう事に
「浩輔君、久しぶりね~久美子のお見舞い?」
「明子さん、お久しぶりです。今日はそんな感じです」
久美子のマンションに着き、久美子のお母さんである
「あの子ったら、こんな時期に風邪を引くなんてね」
「あはは…」
「私、久美子に買い物行っちゃうけど、あがっていって。麗奈ちゃんも
「はい、お邪魔します」
「お邪魔します」
そして、久美子の部屋に向かうと、久美子は寝ていた。
それから30分ほど経って、久美子が起きた。
「浩輔?」
「起きたか」
久美子は身体を起こして麗奈が居る事に気付いた。
「あれ、麗奈まで…」
「心配して浩輔と二人で来たの」
「そっか…いつ来たの?」
「30分くらい前、寝てたから起こすのも悪いかと思って」
「風邪を引いて、早退したって聞いて驚いたよ」
「ごめん…」
「別に謝る必要はないよ」
「あ…ありがと」
「電気つけていい?」
麗奈は久美子にそう聞いて、確認が取れると、電気を付けた。
「川島さんたちも来たがってたけど、練習終わったの遅かったから」
「ミドリちゃん、家反対だもんね」」
「これは川島さんから、プリンが加藤さん」
「ありがとう、普通のプリンが食べたかったんだよ」
麗奈はプリンを久美子に渡していた。
「私からはこれ」
麗奈はそう言って、CDを出してきた。
「CD?」
「このCD…」
「ユーフォの曲をって思ったんだけど持ってたね」
「ううん、うれしい、ちょうど聴こうと思ってたんだよね」
「そうなの?」
「うん」
そう言って、さっきのCDをかけ始めた。
プレイヤーからは、ユーフォの音が聞こえてきた。
「良い曲…」
「いいよね」
「うん」
「なんか、あすか先輩の音に似てるかも」
「やっぱり?私も思った」
久美子がそう言うと、部屋のドアが開いた。
「久美子、あっお客さん?」
「麻美子さん、お邪魔してます」
「浩輔君…久しぶりだね」
「はい」
麻美子さんと簡単な挨拶を済ますと、麻美子さんは久美子の方に振り返った。
「これ、悪いんだけど止めてくれない?」
「どうして?」
「聞きたくないの嫌いだから」
麻美子さんはそう言って、プレイヤーを止めた。
「だったら…だったら「続けたかった」なんて言わないでよ!吹奏楽嫌いなんでしょ!だったら、あんなこと言わないでよ!今になって、続けたかったなんて言うのズルいよ!」
「うるさい」
「お父さんとお母さんに学費も居パートの家賃も出してもらって大学行ってるんだよ、なのに我慢してたなんて…」
「うるさいっ!あんたに私の気持ちなんて分かるわけない」
麻美子さんは吐き捨てるようにして、ドアを勢いよく締めてしまった。
何か凄い現場を見てしまった…。
「大丈夫?」
心配した麗奈が久美子にそう聞き、久美子は謝罪をする。
「訳、分かんないよね…」
久美子はそう返してきた。
「よく分かんないけど、今はしっかりと休むんだよ」
「うん、ありがと」
そして、次の日、久美子は風邪をしっかりと治して、学校にやってきた。
「一日で戻ってくるとは」
「うん、昨日はありがとね浩輔」
「はいはい、お礼は良いから、久美子は演奏に集中する事」
僕はそう言って、久美子のおでこを突いた。
「うぅ…」
そして、その日の練習で滝先生はこう言ったのである。
「田中さんが今週末までに、部活を続けていくことのできる確証が得られなかった場合、全国大会の本番は中川さんに出てもらうことにします」