私は、夏紀ちゃん、デカリボンちゃん。みぞ先輩、奏ちゃん、佳穂ちゃんあたりでしょうか。
「というわけで来週の合奏まで練習して、その結果サンフェスに出場しないと先生がおっしゃるようであれば、その時はきちんと抗議しようと言うことでまとまりました。何か意見のある人いますか?」
パート会議で出た結論は、抗議しようと言う事で決まったらしい。
そんな事で解決するのならとっくの昔に解決している話だと思うが、違うのだろうか。
「こんな時間に集まって合奏ですか?」
タイミングが良いのか悪いのか、滝先生が入ってきた。
いや…この場合は良い方に入るのか。
「あ、いえ、パートリーダー会議があって」
「そんなことは別に時間を取ればいいでしょう。せっかく今週は三者面談で授業が短いというのに。一週間後の合奏で改善が見られなければサンフェスには出られないのですよ?」
滝先生の言葉はその通りである。
サンフェスに出たいのなら、練習して上手くなればいいだけの話。
部長が何か言おうとしたが、滝先生は_
「言っておきますが、私は本気ですよ」
そういう先生の目は言葉通り本気だった。
すると_
「皆さん、体操着に着替えてください」
はて?体操着に着替えて何をすると言うんだろうか。
「着替えたら楽器を持ってグラウンドに集合です」
滝先生の言葉で、僕達吹奏楽部はグラウンドに集められた。
「全速力で一周走ってきてください。タイムは90秒です。それ以上かかった人はもう一周追加で」
そう言う滝先生の顔は笑っていた。
でも、指導に一切手は抜かなかった。そして付いたあだ名が…『粘着イケメン悪魔』
「浩輔君は平気そうだね。流石野球部…」
パート練習の時間、肩で息をする島先輩にそう声を掛けられた。
「そうは言ってもですね…自分、足早くない方なんできつかったですよ…」
「浩輔君がそう言うなら、私だって無理だー」
島先輩はそう言って、机に顔をひれ伏した。
ばててしまった証拠である。
「それにしても、滝先生。他のパート泣かせたって。浩輔君は聞いた?」
「まぁ…ここはそうならないと良いんですが……」
僕は、頬を掻きながらそう言う。
「でも、全国に行きたいって言ったのは私たちなんだから…頑張らないといけないよね。私たちは…!」
「そうですよ。僕達は全国に行くんですから」
島先輩と話していると、鳥塚先輩が戻ってきた。滝先生を引き連れて
「では、クラリネットの皆さんは_」
滝先生は、持ってきたファイルを捲って、今日の練習方法を僕達に伝えた。
「口の前に手をかざして、自分の息を感じるようにして、窓の外にあるあの遠い雲を動かすつもりで吹いてください。ただ強く吹くのではなく、遠く、あの雲の奥の奥にある地平線のかなたまで、一本の強くて長い息の橋をかけるのです。それでは届きませんよ?もう一度。さん しっ」
先生の言葉に合わせて、息を遠く、息の橋をかけるように息を吐く。
「その調子です。では、もう一度」
ひたすらこの練習。でも。効率と技術は上がっている。そんな気はした。
********
「はい、あげる」
「ありがとうございます。鳥塚先輩。奢ってもらって」
練習終わり、コンビニに寄ると、そこには鳥塚先輩の姿があった。
先輩には、アイスを奢って貰った。
「可愛い後輩の為だもん。これぐらいはね」
「あはは。本当、先輩は良い人ですね」
「何を今更言ってるの」
先輩は、そう言って僕の頭を軽く叩いてきた。
「それにしても、滝先生。思っていたよりも優しかったですね」
「うん。てっきり、私、全部の責任を負わさせて泣かせられると思ったもん」
「それはなんとも言えないですけど…それはそれとして、先生が生徒を泣かせたら…それはそれで問題になりそうなんですけど…」
「浩輔君は、私が泣かせられそうになったら守ってくれる?」
「答えにくい質問をするの辞めて貰っていいですかね…」
「ちぇ…」
鳥塚先輩、明らかに舌打ちをしたよね。今!
「こほん…冗談は程ほどにして…」
「冗談にしては本気だったような気がするんですけど」
「本気だった方が良かった?」
「いえ、全く」
僕がそう言うと、先輩はまた舌打ちをした。
この先輩…結構めんどくさいな。
「でも、他のパートに比べたらマシだったんじゃないですかね」
「えっ?」
「あすか先輩や香織先輩、部長が居るパートはそうですけど、それ以外のパートに比べたら、マシだったと思いますし」
「そうなの!?」
「…仮にもパートリーダーなんですから。そういう所は見ててくださいよ…。じゃなくて、この調子で頑張っていこうって意味です」
「うん…もちろん!私たちは全国行くんだから。そのために練習頑張ってるんだもんね」
「はい。その調子で頑張っていきましょう」
鳥塚先輩にそう言って、僕は腕時計の時間を見た。
「やべっ…」
「ん?どうしたの?」
「先輩、すみません…今日。予定があったの忘れてて、今すぐに帰らないとなんで…この辺で失礼しますね」
「えっ、う、うん。えっと…また明日?」
「はい、また明日。学校で」
僕はそう言って、鳥塚先輩に手を振って、その場を後にした。
映画、地元の一発目行ってきますー!!
さつきちゃんの可愛い所をこの目で見てきます。