書きたいところまで書くために四苦八苦して道を準備しているので初投稿です。
「謎の勢力ですか…。」
「はい。これから調べにいこうかと。」
大聖堂の執務室で、私はサクラコ様に、スズミと話を聞いた不良2人のことを報告していた。
「もし彼女らの話が本当であるならば、寝る場所すら追われた方々がさらにあふれて、治安に影響する可能性もありますね。」
シスターフッドではチャリティーとして炊き出しやボランティアの募集、そしてそこでの素行が良ければ、アルバイトへの紹介状の発行なども行っている。
こういったことで少しずつ救済を行っているのだが、仮の住処すら失う人が増えると、そういった支援を必要とする人数は大幅に増える。
それに、裏で誰か得体の知れない存在が動いているというのは、危険なにおいがする。なにがしかの組織というのも、それを助長させている。
「…ということですので行って来ても、良いですか?」
政治のことは良くわからないので。
ひとまずサクラコ様にこうして伺いをかけるためにもここに来ているので、すでに予備の弾倉も用意してここにいる。
「わかりました。ただしティーパーティーの皆様が少々気が立っておられる様なので、あまり無理をしないでくださいね。」
エデン条約ということでティーパーティーも大変ですね…
「わかりました。なるべく穏便に済ませてきます。」
サクラコ様から任された。それに私は高揚を隠せないまま執務室を後にした。…だが、その高揚の数パーセントには、「お掃除(戦闘)」への浅ましい期待なのだ。
「………。」
トリニティ自治区の外れの路地。比較的治安を維持できているトリニティといえど、最近の正義実現委員会の配置の転換によって郊外のこうした路地の治安はあまりよくない。
にしても、ここもそれなりに不良のたまり場になっていたというのに、静かになった。
「確かこの辺りと聞きましたが…。」
あの2人とその仲間たち(あの2人以外ははぐれてしまったらしい)が住んでいたという区画に差し掛かると、壁の見慣れない弾痕が目に入った。
そこらの有象無象による乱射ではなく、狙いの定まった短連射。それなりに訓練された連中がいたらしい。それに、頭や脚の位置に多いその弾痕は、的確に相手を無力化するためのもの。下手な正義実現委員より戦術的だ。
流石に使われた物の匂いまではわからなかったけれど、どうやらただのチンピラの抗争ではないらしい。
(…4時と7時の路地、11時の窓。敵意はあるけど、この弾痕の主ではなさそう。)
私を監視する視線。そこらの不良のたまり場に入った時みたいな警戒ではない。明確に戦闘態勢でこちらを伺っている。
「!」
こちらから打って出ようかと考えていると、携帯に連絡が来た。…サクラコ様だ。
「シオンです、サクラコ様。どうかされましたか?」
《シオン、連絡があります。今よろしいですか。》
「はい。しかし向こうに勘付かれました。」
《そうですか、状況はどうですか?》
「襲撃です。相手は意外とお友達作りができている様です。」
相手にガスマスクをしている様子の者は見えないし、私に感知される相手だ。おそらくあの話の中での下手人ではないだろう。
「あちらの黒幕は見えません。雇ったか脅されたらしい雇われは遮二無二出てきていますが。」
《ならば帰還してください。
ゲヘナ方面で何かあった様です。状況は確認中ですが、自治区境界付近で爆発の報告が来ています。
…貴女は私たちの切り札です。追撃を振り切り大聖堂まで戻ってきてください。》
「ゲヘナですか、わかりました。すぐに大聖堂へ戻ります。
…主と精霊の御名において。」
《主と精霊の御名において。》
そうして電話を切る。まだ尻尾を掴めてはいないが、ひとまず私の居場所を、
が、どうやらあちらはただ帰す気はないみたいですね。
帰路に就こうと角を曲がると、何人かの戦闘態勢の集団が立ちふさがっている。ガスマスクをしていない。ただそこらから金で雇われたか脅して集めた不良たちだ。
「…そんな準備で、私を簡単に止められるとは思わないでください。」
重火器は無しの軽装、フォーメーションも洗練されていない。さっき私の様子をうかがっていた数人も背後から来たが、気配からして正面の彼女らと同じ不良程度。戦力としては誤差だ。
「う…!」
「う、撃てー!」
案の定撃ってはきた。路地に幾重にも重なった銃声が響く。
震える声からして、どうやら戦意自体もあまり高くはないかもしれない。
浮足立っているからかただフルオートで乱射していて狙いも甘く、避ける必要も無い。この戦力でなんとかできると思われたのは、ずいぶん舐められたものだ。
流石に数は撃っているので数発は命中するが、しかし直撃ではなく、十分な威力を出せていない。
「…あ。」
マズルフラッシュ、硝煙の匂い、銃声と弾丸の風切り音、ダメージにならない程度に時折を叩く銃弾。それらの情報がだんだんと私の本性を呼び起こし、そしてついに、それが目を覚ました。
「…ふふ…はは…っ」
くつくつと、胸の底から笑いが漏れる。
吊り上がる口角は私が撃たれているのに抑えられない。
ウォーミングアップにもなりはしないけれど…心の準備は出来た。
ゲヘナだろうが、不良だろうが、ティーパーティーの手先だろうが、ブラックマーケットのマフィアだろうが構わない。
シスターフッドを、サクラコ様の敵となるならば叩いて潰すのみ。…準備はできている。
いよいよマシンガンを抜き、半ば恐慌状態でフルオートで撃ち続けている相手を一瞥する。
この高揚しているのは嗜虐心なのか、優越感から来るものなのか、それとも、健気にまだ逃げ出さない彼女らをほほえましく思ったのか、私にもわからない。
そして私が引き金を引いた時、路地にさらに銃声が響く。みるみるうちに十重二十重に重なった銃声は消え、最後は私のマシンガンの独奏となった。
「良いでしょう、世の平穏を乱す不届者の皆さん。神罰の味、とくと味わってください?」
そうして追手を叩きのめした私は、いるかもわからない黒幕にそう言い残して、さらに静かになったスラムを後にした。
スズミと一緒で無くて良かった。うっかりでも、またこんな私の姿を見せてしまいたくはなかった。…所詮私はこんな奴なのだ。
「ただいま戻りました。状況は?」
大聖堂に戻ると、サクラコ様が待っていた。
「戻ってきてくださりありがとうございます。現状、まだ自治区境界付近の教会からは交戦の情報は入っていません。」
各所に配置された教会は、有事の際には前哨基地や情報収拾の拠点、周辺の人たちのシェルターにもなる。
防衛にも気が払われていて、実は長椅子や扉の中には防弾板が仕込まれていたり、隠し扉やトンネルでの逃走経路や待ち伏せが可能となっている。
大聖堂の地下の武器庫には、メイスやバケツヘルメットから、設置式の重機関銃やPIATまである。
いざというときに、シスターフッドを守るために、避難してきた人を守るために。ことあるごとに武器は買い足されている。
そういった教会から、敵襲の報告がない以上、意外と特にまずい状況ではないのかもしれない。ただのゲヘナ内でテロリストが暴れて、それが偶然区の境界辺りで起きていた。それだけかもしれない。
「シオン、この時間で申し訳ありませんが、状況がはっきりするまで備えておいてください。」
「はい、おまかせを。」
とは言っても、さっきまで戦闘をしていたので、弾を補充した後は予備兵力として待機するだけだ。長椅子に座って、サクラコ様の指示を待つ。
「……。」
…手元に残しておく手札として評価してもらっているのが嬉しい反面、そんな信頼を裏切るようなことになってしまったらどうしよう…。そんな考えが頭をよぎってしまって、ただ座っていられなくなってしまう。
おもむろに立ち上がって、少しウロウロ歩いて紛らわそうとする。
しかしさっきの戦闘でまたハイになった私自身のことを考えると、どうしても自分を信じられなくなりそうだった。
「…シオン。」
そんな私を察したのか、サクラコ様が私に話しかける。その手には何かが握られている。
「少し手持無沙汰であるなら、これを。」
「…!」
そういって差し出されたのは、ビーフジャーキーだった。
それにこの銘柄!私の大好きな奴です。程よい噛み応えとジューシーさがあるんですよね。
「…ふふ。」
「?……!?」
微笑んでいるサクラコ様に気付いて視線の先を見ると、私の尻尾が分かりやすく左右に振れているのが見えた。
「わ、えっと、これは、その…。」
「喜んで頂けた様でなによりです。もう少しだけ、お願いしますね。」
そうだ、ここで弱気になってはいけない。サクラコ様の敵となる相手は叩いてつぶすと決めているではないか。
「…シオン?…そんなに美味しかったですか?」
首を傾げたサクラコ様のところへ、1人のシスターがやって来た。
「サクラコ様!ゲヘナで暴れている下手人が分かりました!」
すわ出動かと、水筒に口をつけて、水分補給を済ませる。
「補習授業部が動いています。彼女らがゲヘナでの騒動の元かと。」
補習授業部。その単語に脳が反射的に反応する。
「ぶ!?…げほ、けほ…っ!!ほ、補習授業部!?」
ヒフミさん!?何やってるんですか!
「補習授業部ですか?なぜわざわざ…。」
「学内掲示板によれば、どうやら試験会場が変更になったそうで…。」
???
え、っと、つまり、試験会場がゲヘナになったとでも?補習なのに?
「彼女らは爆発と共に移動し、先程の爆発の報告も彼女ら絡みかと。…いかがいたしますか?」
混乱する私を他所に、シスターの報告を受けたサクラコ様は、一旦は警戒態勢を解くこととした。
「それでは、私もゲヘナへ行ってきます。」
ヒフミさんも足が無ければ困るでしょうから、私のユニバーサルキャリアを出すことにする。一応は私物だから1個人の渡航になるはずだ。
「いけませんシオン。貴女はシスターフッドで指折りの切り札です。…シオン個人でも、いささかリスクを伴います。」
シスターフッドは中立の立場であるため、この件にも不干渉の立場をとることとなる。
とはいえ、これが原因で自治区境界付近での小競り合いは予想される。
私はサクラコ様の手元の予備戦力として、今夜は大聖堂に留まることにした。
「ふわ…ぁ。」
サクラコ様の執務室の前で待機することにしたが…眠くなってきた。
戦闘の後なのと、少し緊張状態だったのがとけたからなのかもしれない。
ひとまず、寝ない様に執務室前の廊下を歩いて回る。窓からは、深夜で静かになっているトリニティスクエアが見える。
そんな静かな町も、前の部での夜間の巡回を思い出す。
夜間でお腹が減ったけど、巡回中にコンビニで買い食いをするというのは、良くも悪くも真面目だった私とスズミには出来なくて。
でも、こんな静かなスクエアで、大聖堂の大きさに、「おぉー、凄いなぁ。」とか、「大きいですね。」なんて淡白なやり取りしていたり。
「……懐かしいなぁ…。」
そうだ、今度改めて会おう。まずは、スズミに会って…それから改めて……。
そう思っていたところで、扉が開く。
「シオン?先ほどから歩いている様ですが、何かありましたか…?」
サクラコ様がそう問いかけてくる。いけない、お手を煩わせてしまった。
「あ、いえ。これは、その、待機していただけで…。」
「シオン、警戒は解いたのですから、今は休んでください。」
サクラコ様がそう答えたけれど、サクラコ様だってこんな時間まで執務室にいるのは珍しい。
「…しかし、サクラコ様も起きていらっしゃいます。いざと言う時に投げつける石も無ければ困るでしょうし…あ。」
あれ、これってもしかして上司が起きてるから部下も寝られないと言っている様なものなのでは?
「い、石…ですか?……いえ、そうですね。」
いや、それよりも分かりづらい例えを使った方が良くないですね。私ったら前からこんな言い回しを…
「それではシオン、付き合って頂けますか?」
「え!?…あぁ、はい!私で良ければ!」
執務室に招かれて、応接間の椅子を勧められる。サクラコ様も、デスクではなく、応接間に腰掛ける。
「シオン、この場では貴女個人として、私のことも、私個人として接してもらえますか?」
腰掛けたサクラコ様は、綺麗な白銀の髪をシャランとなびかせながら自身のベールを外して傍らに置いてそう言った。
つまりここではシスターフッドではない立場としてプライベートにお話がしたい。というサクラコ様の思し召し…。
少し躊躇いつつ、私もそれに倣ってベールを外す。
サクラコ様の髪よりくすんだ、青混じりの灰色の髪がその全体を現す。
「ふふ、ありがとうございます。」
そんなサクラコ様の雰囲気は、少しリラックスしているようだった。
「ところでシオン、相談なのですが…この前、仲良くする方法として聞いた”弱み”の共有のことなのですが…。」
「は、はい!」
あ、そういえば”弱み”なんて言ってしまったんだった。”お茶目なところ”というべきだったのに…。
おかげかサクラコ様は苦悶の表情を浮かべている。
「…先日、つい…」
「つ、つい…?」
「つい寝る前にケーキを…食べてしまいました…!2ピースも!」
「2ピースも!?」
執務室での会話は、ついにシオンが寝てしまうまで続き、執務室には朝まで明かりがともったままだった。
少しはアンデルセン神父的な場面を描けた…気がする。
シオンの指揮能力
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とてもある(大隊以上)
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とてもある(中隊)
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ある(小隊)
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それなり(分隊)
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一応ある(班)
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ない(単独の鉄砲玉運用)