機動戦士ガンダム 地球に幽閉された英雄のRX-78(意味深)が限界突破のフルドライブ! 連邦軍上層部、アムロの夜のニュータイプ能力を恐れてハニートラップの仕込みを開始する 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
重力という名の絶対零度の檻のなかで、僕の精神宇宙はつさに完全なるシステムエラー(自己崩壊)を起こそうとしていた。
その男の名はアムロ・レイ。
かつて一年戦争において、圧倒的な先読みと超反応でジオン公国軍のモビルスーツを紙クズのように撃破し、全宇宙から「白い悪魔」と恐れられた人類史上最強の天才ニュータイプ。
しかし。
現在の状態を、あらゆる計測器を用いて冷徹にプロファイリングするならば。
大人の女性が仕掛ける心理工作の「嘘」に絶望して重度の機能不全(EDモード)を発症し、現実の女を完全に拒絶。
連邦の監視の目を欺くためにおもちゃの飛行機(模型)を作りながら、頭のなかだけで死んだララァ・スンとのドロドロな精神ドッキング(自家発電)を繰り返すことでかろうじて正気を保っている、哀れな18歳の脳内引きこもりニート少尉である。
宇宙世紀0083年、冬。
宇宙ではデラーズ・フリートによる「星の屑作戦」が最終段階を迎え、コロニーが地球へと落下する未曾有の大惨事が発生していた。
地球連邦軍の軍事バランスが激変し、新しい時代の歪みが生まれようとしている。
だが、そんな地球圏の歴史的激動など、自室の暗闇に魂を縛り付けられた僕にはまったく関係のない話だった。
なぜなら、今の僕の全神経(サイコフレーム)は、日課となった「脳内ララァ」との交信(シコシコ)における、かつてない異常事態に全出力を奪われていたからだ。
「はぁ……はぁ……ララァ、今日も僕のコクピット(ベッド)へ来てくれたんだね……」
カーテンを閉め切った暗黒の寝室で、全裸であぐらをかき、己の操縦桿(意味深)をガッチリとホールドしていた。
いつも通り、現実の嘘つきな大人たちをシャットアウトした脳内セーフティエリア。
1秒間に10往復という新型モビルスーツのバルカン砲並みの超高速ピストン運動(マグネット・コーティング仕様)を繰り出しながら、脳内スクリーンに愛しい彼女の幻影を投影する。
ピキィィィィィン!
走る。脳髄を、現実の不純物を一切排除した超高純度のサイコ・ウェーブが駆け抜ける!
そこに現れるのは、いつだってすべてを全肯定してくれる、汚れなき聖女ララァ・スン――。
はずだった。
「……アムロ、あなた相変わらず不器用ね……」
「え……?」
脳内のサイコ・コミュニケーターから響いてきたのは、いつも優しく包み込んでくれる聖母の歌声ではなかった。
それは、凍りつくほど冷ややかで、完全にゴミを見るかのような、ガチで軽蔑の色の混じったララァの声だった。
「ラ、ララァ……? どうしたんだい? いつものように僕の錆び付いた関節を優しく潤してはくれないのかい?」
僕は右手のレバー(意味深)を激しく上下させながら、必死に脳内の彼女に呼びかける。
しかし、記憶を都合よく改変して作り上げたはずのホログラフィーの奥から、歪んだ精神波が文字通り「本物の幽霊」となって、僕のサイコフレームに直接ダイブしてきたのだ。
「アムロ、私ね、あなたが宇宙(そら)でシャアと戦っていたときの、あの激しくて純粋な光に惹かれたの。それなのに今のあなたは何?
地球の重力に魂を引かれて、おもちゃの飛行機に自分のハイパー・メガ粒子(意味深)をぶちまけて、毎晩毎晩、私の幻影をおかずに引きこもって右手を高速運動させているなんて……」
「ち、違うんだララァ! これは連邦の監視を欺くためのカモフラージュで、僕が愛しているのは君の魂だけで……!」
「いいえ、ただの現実逃避よ。言っておくけれど、私が死んだときのあの苦しみ、あれをあなたは毎晩毎晩、自分の性欲のカウンターに変えて都合よく再現しているのね。正直に言うわ。ニュータイプとして、男として、人間として……ガチで引くわ(ドン引き)」
ピキィィィィィン!!!
その瞬間、脳内にララァがエルメスのコクピットでビーム・サーベルに貫かれた瞬間の、あの凄まじい精神的断末魔(トラウマ)が、通常の3倍の出力でダイレクトに逆流(カウンター)してきた。
「う、うわァァァァァァァァァァッ!!!」
あまりの精神等衝撃(サイコ・ショック)に、脳内コクピットの全計器が文字通り大爆発を起こした。
快感の絶頂へと向かっていた僕のコア・ファイター(意味深)は、強制的に非常事態安全弁(安全装置)が作動して、一瞬で完全なる出力ゼロ(急激なフニャチン)へと叩き落とされる。
「ひぃっ!? あ、頭が、頭が割れるぅぅぅぅッ!!」
ベッドの上で絶頂直前のまま、全裸で文字通り1回転半して床へと転げ落ちた。
ドスンッ!と鈍い音が響き、僕の頭部はベッドサイドの木製チェストに強打する。
「痛いっ! 痛いよララァ! なんで君まで僕を拒絶するんだよぉぉぉぉッ!!」
床に這いつくばり、涙と鼻水で顔をグショグショに濡らしながら叫んだ。
最悪だ。
大人の女が怖いからと、脳内妄想のなかに作った唯一のオアシス(ララァ)にすら、自分の歪んだ性癖と引きこもりムーブのせいで「ガチで気持ち悪い」と引かれて、精神的パニックを起こしてベッドから墜落する18歳の元英雄。
「(あ、これ、現実の女を怖がって脳内でおかず自給自足しようとしたら、自分の良心の呵責がララァの姿を借りて襲いかかってきて自滅してる、世界で一番めんどくさい時のアムロだ……)」
どこからか、宇宙の彼方からシャア・アズナブルの「ララァが死んだ時のあの苦しみ、あれを毎晩再現するのかアムロ!」という、呆れ果てた幻聴(プレッシャー)まで聞こえてくる気がする。
「違うんだ……! 僕はただ、誰かと分かり合いたかっただけなのに……! なんで僕のニュータイプ能力は、僕を傷つけるためだけに発動するんだよぉぉぉッ!!」
床の上で全裸で丸くなり、ガタガタと震えながら号泣する。
手元には、出すに出せなくなった中途半端なリビドー(意味深)の残熱と、頭をぶつけた強烈な痛みだけが残されていた。
現実の女(連邦の罠)は怖い。
過去の聖女(ララァの幽霊)にもガチで引かれる。
逃げ場は、この宇宙(地球圏)のどこにも残されていなかった。
この「妄想のなかのララァにすら拒絶される」という前代未聞のサイコ・ショックにより、自家発電型サイコ・ミュは完全にバグを起こして機能停止。
僕のマグネット・コーティング(意味深)は、錆び付くどころか、完全に焼き付いて二度と直立しない鉄クズへと変わり果てようとしていた。
そして、邸宅の地下に設置された、連邦情報部の監視ルーム。
大型モニターで、全裸でベッドから転げ落ちて「ララァに引かれたぁぁぁッ!」と床をのたうち回っている哀れな姿を見ていた監視員たちは、持っていたドーナツを床に落とし、ガチの恐怖で顔を青ざめさせていた。
「……おい、アムロ少尉の様子がおかしいぞ。誰もいない部屋で、急に全裸で叫んでベッドから墜落した」
「……ああ、これで彼がエゥーゴだの反連邦組織だのと接触する危険性はゼロだな。一生、この邸宅のベッドのなかで、ティターンズの幻影に怯えながらウジウジと腐っていくがいい」
ジャミトフらが仕掛けた、ニュータイプをこの世から抹殺するための「精神的去勢計画」。それは、僕という男の脆すぎるメンタルと最悪の合致(ドッキング)を果たし、完全なるチェックメイトを迎えていた。
――そこから、完全に時間を止められた無菌室のなかで、さらに数年の暗黒が通り過ぎていった。
宇宙世紀0087年、春。
ティターンズの幻影に怯え、味のないペーストをすすり、存在自体が消滅しかけていた僕の死んだ脳髄に。
ピキィィィィィン!!!
突如として、ティターンズの最先端セキュリティを爆破するほどの、あまりにも巨大で、あまりにも瑞々しく、そして信じられないほど「情緒が不安定な」特大のサイコ・ウェーブがダイレクト・インしてきた。
『(カミーユ・ビダン、いきます!……ふざけるな、カミーユって名前は男の名前だ! 殴って何が悪い!)』
「な、なんだこの、僕以上のウジウジとヒステリーを極めたような精神波は……!? 宇宙(そら)で、誰かがまた、新しいガンダムを盗もうとしているのか……ッ!?」
――それが、完全に焼き付いて機能不全(ED)となった僕のシステムを、別の意味で恐怖のドン底に叩き落とす「最凶の引きこもり後輩」との交信の始まりだとは、この時の僕はまだ知る由もなかった。