機動戦士ガンダム 地球に幽閉され去勢工作に囚われたアムロ・レイ、錆び付いた魂の檻を振り切り、ベルトーチカとのドッキングで野生の獣へと覚醒する 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
重力という名の絶対零度の檻のなかで、僕の精神宇宙はつさに完全なるシステムエラー(自己崩壊)を起こそうとしていた。
その男の名はアムロ・レイ。
かつて一年戦争において、圧倒的な先読みと超反応でジオン公国軍のモビルスーツを紙クズのように撃破し、全宇宙から「白い悪魔」と恐れられた人類史上最強の天才ニュータイプ。
しかし。
現在の状態を、あらゆる計測器を用いて冷徹にプロファイリングするならば。
大人の女性が仕掛ける心理工作の「嘘」に絶望して重度の機能不全(EDモード)を発症し、現実の女を完全に拒絶。
連邦の監視の目を欺くためにおもちゃの飛行機(模型)を作りながら、頭のなかだけで死んだララァ・スンとのドロドロな精神ドッキング(自家発電)を繰り返すことでかろうじて正気を保っている、哀れな18歳の脳内引きこもりニート少尉である。
宇宙世紀0083年、冬。
宇宙ではデラーズ・フリートによる「星の屑作戦」が最終段階を迎え、コロニーが地球へと落下する未曾有の大惨事が発生していた。
地球連邦軍の軍事バランスが激変し、新しい時代の歪みが生まれようとしている。
だが、そんな地球圏の歴史的激動など、自室の暗闇に魂を縛り付けられた僕にはまったく関係のない話だった。
なぜなら、今の僕の全神経(サイコフレーム)は、日課となった「脳内ララァ」との交信(シコシコ)における、かつてない異常事態に全出力を奪われていたからだ。
「はぁ……はぁ……ララァ、今日も僕のコクピット(ベッド)へ来てくれたんだね……」
カーテンを閉め切った暗黒の寝室で、全裸であぐらをかき、己の操縦桿(意味深)をガッチリとホールドしていた。
いつも通り、現実の嘘つきな大人たちをシャットアウトした脳内セーフティエリア。
1秒間に10往復という新型モビルスーツのバルカン砲並みの超高速ピストン運動(マグネット・コーティング仕様)を繰り出しながら、脳内スクリーンに愛しい彼女の幻影を投影する。
ピキィィィィィン!
走る。脳髄を、現実の不純物を一切排除した超高純度のサイコ・ウェーブが駆け抜ける!
そこに現れるのは、いつだってすべてを全肯定してくれる、汚れなき聖女ララァ・スン――。
はずだった。
「……アムロ、あなた相変わらず不器用ね……」
「え……?」
脳内のサイコ・コミュニケーターから響いてきたのは、いつも優しく包み込んでくれる聖母の歌声ではなかった。
それは、凍りつくほど冷ややかで、完全にゴミを見るかのような、ガチで軽蔑の色の混じったララァの声だった。
「ラ、ララァ……? どうしたんだい? いつものように僕の錆び付いた関節を優しく潤してはくれないのかい?」
僕は右手のレバー(意味深)を激しく上下させながら、必死に脳内の彼女に呼びかける。
しかし、記憶を都合よく改変して作り上げたはずのホログラフィーの奥から、歪んだ精神波が文字通り「本物の幽霊」となって、僕のサイコフレームに直接ダイブしてきたのだ。
「アムロ、私ね、あなたが宇宙(そら)でシャアと戦っていたときの、あの激しくて純粋な光に惹かれたの。それなのに今のあなたは何?
地球の重力に魂を引かれて、おもちゃの飛行機に自分のハイパー・メガ粒子(意味深)をぶちまけて、毎晩毎晩、私の幻影をおかずに引きこもって右手を高速運動させているなんて……」
「ち、違うんだララァ! これは連邦の監視を欺くためのカモフラージュで、僕が愛しているのは君の魂だけで……!」
「いいえ、ただの現実逃避よ。言っておくけれど、私が死んだときのあの苦しみ、あれをあなたは毎晩毎晩、自分の性欲のカウンターに変えて都合よく再現しているのね。正直に言うわ。ニュータイプとして、男として、人間として……ガチで引くわ(ドン引き)」
ピキィィィィィン!!!
その瞬間、脳内にララァがエルメスのコクピットでビーム・サーベルに貫かれた瞬間の、あの凄まじい精神的断末魔(トラウマ)が、通常の3倍の出力でダイレクトに逆流(カウンター)してきた。
「う、うわァァァァァァァァァァッ!!!」
あまりの精神等衝撃(サイコ・ショック)に、脳内コクピットの全計器が文字通り大爆発を起こした。
快感の絶頂へと向かっていた僕のコア・ファイター(意味深)は、強制的に非常事態安全弁(安全装置)が作動して、一瞬で完全なる出力ゼロ(急激なフニャチン)へと叩き落とされる。
「ひぃっ!? あ、頭が、頭が割れるぅぅぅぅッ!!」
ベッドの上で絶頂直前のまま、全裸で文字通り1回転半して床へと転げ落ちた。
ドスンッ!と鈍い音が響き、僕の頭部はベッドサイドの木製チェストに強打する。
「痛いっ! 痛いよララァ! なんで君まで僕を拒絶するんだよぉぉぉぉッ!!」
床に這いつくばり、涙と鼻水で顔をグショグショに濡らしながら叫んだ。
最悪だ。
大人の女が怖いからと、脳内妄想のなかに作った唯一のオアシス(ララァ)にすら、自分の歪んだ性癖と引きこもりムーブのせいで「ガチで気持ち悪い」と引かれて、精神的パニックを起こしてベッドから墜落する18歳の元英雄。
「(あ、これ、現実の女を怖がって脳内でおかず自給自足しようとしたら、自分の良心の呵責がララァの姿を借りて襲いかかってきて自滅してる、世界で一番めんどくさい時のアムロだ……)」
どこからか、宇宙の彼方からシャア・アズナブルの「ララァが死んだ時のあの苦しみ、あれを毎晩再現するのかアムロ!」という、呆れ果てた幻聴(プレッシャー)まで聞こえてくる気がする。
「違うんだ……! 僕はただ、誰かと分かり合いたかっただけなのに……! なんで僕のニュータイプ能力は、僕を傷つけるためだけに発動するんだよぉぉぉッ!!」
床の上で全裸で丸くなり、ガタガタと震えながら号泣する。
手元には、出すに出せなくなった中途半端なリビドー(意味深)の残熱と、頭をぶつけた強烈な痛みだけが残されていた。
現実の女(連邦の罠)は怖い。
過去の聖女(ララァの幽霊)にもガチで引かれる。
逃げ場は、この宇宙(地球圏)のどこにも残されていなかった。
この「妄想のなかのララァにすら拒絶される」という前代未聞のサイコ・ショックにより、自家発電型サイコ・ミュは完全にバグを起こして機能停止。
僕のマグネット・コーティング(意味深)は、錆び付くどころか、完全に焼き付いて二度と直立しない鉄クズへと変わり果てようとしていた。
そして、邸宅の地下に設置された、連邦情報部の監視ルーム。
大型モニターで、全裸でベッドから転げ落ちて「ララァに引かれたぁぁぁッ!」と床をのたうち回っている哀れな姿を見ていた監視員たちは、持っていたドーナツを床に落とし、ガチの恐怖で顔を青ざめさせていた。
「……おい、アムロ少尉の様子がおかしいぞ。誰もいない部屋で、急に全裸で叫んでベッドから墜落した」
「ああ、どうやら現実の女を送り込まれすぎたせいで、脳内の妄想回路までバグを起こして自滅したらしいな。自分で自分にサイコ・ショックをかけて去勢をさらに深めるとは、やはり化け物(メンヘラ)だ……」
「もうハニートラップの予算を組む必要すら補給(必要)ないな。勝手に脳内でララァの幽霊に怒られて縮こまっていくだけだ」
連邦政府のえげつない心理管理工作は、この精神的パニックによって、もはや誰も予想しなかった「自虐的完全勝利」を収めていた。
床の上で、自分の右手のやり場のない怒りと、脳内すら失った孤独の恐怖に震えてシーツに包まっている間に。
宇宙世紀0083年の終わりの足音が近づくなか、アムロ・レイという男の精神は、完全に外の世界を拒絶する『Zガンダム』冒頭の、あの「魂を重力に引かれた抜け殻のようなウジウジ少尉」へと、最悪の完成(チェックメイト)に向けてまた一歩、深淵へと足を踏み入れるのだった――。