機動戦士ガンダム 地球に幽閉され去勢工作に囚われたアムロ・レイ、錆び付いた魂の檻を振り切り、ベルトーチカとのドッキングで野生の獣へと覚醒する 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
重力という名の、絶対に破壊不可能な精神的シェルター(独房)のなかで、僕の魂の生命維持装置はついに完全な停止シグナルを点滅させていた。
その男の名はアムロ・レイ。
かつて一年戦争において、圧倒的なサイコ・ウェーブを放ちながらジオン公国軍のモビルスーツを瞬く間に鉄クズへと変え、全宇宙のパイロットたちを恐怖のズンドコに叩き落とした伝説のニュータイプ。
しかし。
現在の状態を、最新のサイコ・プロファイリングによって無慈悲に開示するならば。
大人の女性への恐怖から重度のEDモードを発症し、現実逃避のために開通させた「脳内ララァ妄想」にすら、自分自身の罪悪感が作り出したララァの幽霊(本物)にガチでドン引きされてベッドから転げ落ち、妄想の世界すら完全に焼け野原(強制終了)となった、21歳ウジウジ引きこもりニートである。
宇宙世紀0084年。
デラーズ・フリートによる星の屑作戦が引き起こした「コロニー落とし」という最悪の爪痕は、地球連邦政府の内部に致命的な軍事的ウイルスを発生させていた。
スペースノイド(宇宙居住者)を徹底的に弾圧し、地球の特権階級の利権を力ずくで守るためのエリート特殊部隊。
その名も、ティターンズ。
ジャミトフ・ハイマンやバスク・オムといった、血も涙もない冷酷な絶対主義者たちが率いるその組織の結成は、この北米の豪華邸宅という名の「檻」で怯える僕にとっても、文字通り死刑宣告に等しいものだった。
「……今日からこの邸宅の管理を引き継ぐ。アムロ・レイ少尉」
ある日、僕の前に現れたのは、これまでの連邦政府の気のいい監視員たちとは一線を画す、黒と濃紺の不吉な制服(ティターンズ・カラー)に身を包んだ冷酷な男たちだった。
彼らの放つプレッシャーは、これまでの肉欲去勢工作を仕掛けてきた連邦情報部のような「生ぬるいエロの罠」ではない。
そこにあるのは、純粋な暴力と、ニュータイプという異分子に対する底知れない「嫌悪」と「恐怖」のノイズだけだった。
ピキィィィィィン!
彼らが邸宅の敷地内に一歩足を踏み入れた瞬間、僕の過敏すぎるニュータイプ・センサーは、彼らの脳内から溢れ出るドロドロとした暗黒の思考(悪意)を100%の出力で受信してしまった。
「(これが一年戦争の英雄アムロ・レイか。フン、ただの引きこもりのメンヘラ野郎じゃないか。バスク様の仰る通り、こんな危険な化け物は、いつでも合法的に処理できるように五感を磨り潰しておくべきだな)」
「(脳内で女の幽霊に話しかけてベッドから落ちたという報告書は本当だったらしいな。ティターンズの管理下に入ったからには、もう二度と外の世界を妄想する余裕すら与えんぞ)」
冷たいナイフで脳髄を直接えぐられるような、圧倒的な悪意のビーム。
一瞬で全身に鳥肌が立ち、部屋の隅で膝を抱えてガタガタと震えだした。
「う、うわぁぁっ! 来ないでくれ! 僕は、僕はもう何もできないんだ! ガンダムの操縦桿どころか、自分のおもちゃの飛行機すらまともに組み立てられない、ただのクズなんだよぉぉぉっ!」
「静かにしろ。貴様に発言の許可は与えていない」
ティターンズの将校は、怯える僕を虫ケラでも見るような目で見下ろすと、手にした薄型の端末(データ・パッド)を叩いた。
「これより、新たな『アムロ・レイ管理レギュレーション』を執行する。まず、これまでの『日替わり金髪美女投入計画』および『偽ララァによる肉欲工作』はすべて中止とする。貴様のような精神的異常者に、これ以上の贅沢な肉の快楽は不要だ」
「え……? じ、じゃあ、おっぱいが凄く大きいお姉さんたちは、もう来ないの……?」
情けない声を出す僕に、将校は冷酷な笑みを浮かべた。
「当然だ。今日からは、徹底した『精神的管理(サイコ・コントロール)』を行う。邸宅内の通信はすべて遮断。娯楽室のテレビや小説もすべて没収だ。貴様に与えられるのは、1日3回の栄養素のみを計算された味のないペースト状の食事と、徹底された『孤独』だけだ」
それは、これまでの「肉欲で牙を抜く去勢」から、人間の尊厳そのものを完全に磨り潰す「精神的去勢」への移行だった。
ティターンズの奴らは知っていたのだ。
僕のようなニュータイプは、孤独になればなるほど、自分のなかの過敏なセンサーが暴走し、自分自身の思考のノイズで勝手に自滅していくということを。
「あ……ああ……。お姉さんたちの温もりも、おもちゃの模型飛行機を作るプラスチックの匂いも、全部なくなっちゃうんだ……」
部屋からすべての娯楽が運び出され、完全な白い壁だけが残された無菌室のような空間。
ティターンズの容赦ないセキュリティシステムによって、檻の鍵は、これまでの何十倍も強固にロックされてしまった。
窓の外を見れば、ティターンズの最新鋭機ジム・クゥエルが、その邪悪な赤いモノアイを発光させながら、部屋を冷酷に見下ろしている。
あの重装甲な黒い機体に見つめられるだけで、心臓はドラムのように激しく鼓動を刻み、恐怖で呼吸がまともにできなくなる。
「ハァ……ハァ……宇宙(そら)が……宇宙が遠くなっていく……。ホワイトベースのみんなが、フラウやハヤトがいた、あの純粋な戦場が、完全にティターンズの黒い影に塗りつぶされていくんだ……」
暗黒の部屋のなか、ベッドの上に丸まり、完全に孤立無援の絶望に突き落とされていた。
現実の女(連邦の罠)へのトラウマ。
脳内の女(ララァの幽霊)からのガチのドン引き。
そして、新しくやってきた黒い看守たち(ティターンズ)の、逃げ場のない超高密度のプレッシャー。
この三重の重圧(トリプル・ドムのジェット・ストリーム・アタック並みの絶望)のなかで、ウジウジとした精神は、いよいよ逃げ場を失って完全に粉砕されようとしていた。
「もう嫌だ……。何も考えたくない……。脳内でララァを呼べば怒られるし、外を見れば黒いモビルスーツが僕を睨んでいる……。僕が何か一歩でも動けば、あのバスクとかいうゴーグルの男に、サイコ・ミュの実験体にされて脳ミソをいじくり回されるに決まっているんだ!」
ティターンズの管理は、まさにプロの拷問だった。
肉体には一切傷をつけず、ただひたすらに「悪意の視線」と「完全な孤独」を浴びせることで、僕のなかのニュータイプ能力を、自分自身を攻撃するためだけの呪いに変えていく。
ピキィィィィィン!
「アムロ……。あなた、本当に救えない男ね……」
「ひぃっ!? ラ、ララァ! 幻影の君まで、そんなティターンズみたいな冷たい目で僕を見ないでくれ!」
「私が言っているんじゃないわ。あなたの歪んだリビドーと、ティターンズの管理欲が、あなたの脳内で最悪の化学反応(ドッキング)を起こしているのよ。ほら、見てごらんなさい。あなたのその錆び付いた関節、恐怖のあまり完全に『機能停止(フニャフニャ)』を通り越して、もはや存在自体が消滅しそうになっているわよ」
「うわぁぁぁぁぁっ! 脳内のララァがティターンズの制服を着て僕を冷たく罵ってくるぅぅぅぅっ!!」
防衛本能が限界を迎えた結果、脳内のララァ妄想すらもティターンズの冷酷なプレッシャーに汚染され、精神的にリンチする悪夢のシステムへと変貌を遂げていた。
黒い軍服を着たララァが、鞭を手にしながら「立て、アムロ。貴様はティターンズの管理下にある去勢犬だ」と冷ややかに微笑む。
「(あ、これ、現実の政治的弾圧(ティターンズ結成)の恐怖が、自分のこじらせた性癖と完全に融合して、脳内でハイパーSM拷問室を開通させちゃってる、史上最も泥沼にハマってる時のアムロだ……)」
宇宙のどこかでシャア・アズナブルが「これがニュータイプの成れの果てか……。見当違いの妄想でティターンズに怯え、自室で自ら精神を磨り潰しているな、アムロ!」と、ガチで涙を流して絶望しているような精神波が伝わってくる気がするが、今の僕にはそれを拒絶するエネルギーすら残されていない。
「ジャミトフ……バスク……ララァ……。お願いだ、僕の脳内コクピットに勝手に侵入して、これ以上僕の心を汚さないでくれ……。僕はもう、ただの地球の重力に魂を引かれた、飛べない負け犬なんだ……」
シーツを頭から被り、完全に繭(まゆ)のなかの虫のように縮こまった。
ティターンズの冷酷な鍵によって、僕の精神の扉は完全に閉ざされ、その鍵穴はドロドロとした絶望の瞬間接着剤で二度と開かないように固められていく。
地下の監視ルーム。
最新のサイコ・センサーとサーモグラフィーで、シーツのなかで完全に生命活動を最低限まで低下させ、「ティターンズ仕様のララァに踏まれる夢」にうなされながら涙を流している姿を見ていた、ティターンズの冷徹なエージェントたちは、冷酷に報告書にハンコを押し、不敵な笑みを漏らした。
「……アムロ・レイ少尉の精神制圧、完全に完了。これまでの肉欲工作など生ぬるい。ティターンズの恐怖による精神的管理により、白い悪魔のサイコ・ウェーブは完全に自己崩壊した」
「ああ、これで彼がエゥーゴだの反連邦組織だのと接触する危険性はゼロだな。一生、この邸宅のベッドのなかで、ティターンズの幻影に怯えながらウジウジと腐っていくがいい」
ジャミトフらが仕掛けた、ニュータイプをこの世から抹殺するための「精神的去勢計画」。
それは、僕という男の脆すぎるメンタルと最悪の合致(ドッキング)を果たし、完全なるチェックメイトを迎えていた。
宇宙世紀0084年、冬。
宇宙の主導権がティターンズの手に渡り、地球圏が暗黒の支配に包まれていく裏側で。
アムロ・レイという男の魂は、完全に磨り潰され、二度と起動することのない「白い悪魔の抜け殻」へと、その絶望の完成度を100%に高めていくのだった――。