機動戦士ガンダム 地球に幽閉され去勢工作に囚われたアムロ・レイ、錆び付いた魂の檻を振り切り、ベルトーチカとのドッキングで野生の獣へと覚醒する 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
地球の重力という名の、絶対に破壊不可能な暗黒のシステム(檻)。その最深部で、僕の魂は完全にフリーズ(機能停止)していた。
その男の名はアムロ・レイ。
かつて一年戦争において、圧倒的な超反応でジオン公国軍を恐怖のどん底に叩き落とした、伝説の天才パイロット。
現在の状態を冷徹にプロファイリングするならば。
大人の女性への恐怖から重度のEDモードを発症し、脳内ララァ妄想に逃げ込んでは幽霊にドン引きされ、ティターンズの精神拷問室で磨り潰されていた、23歳のウジウジ少尉。
――しかし、そんな僕の絶望のタイムラインは、つい先日の「ある異常事態」によって完全に狂わされていた。
オーガスタ研究所から最終去勢テストのために送り込まれてきた、精神的幼児(17歳の駄々っ子ロリ)――ロザミア・バダムとの、あの衝撃的なリアル邂逅。
僕の胸に顔を埋め、100%の依存度で「お兄ちゃん!」と泣き叫んだ彼女のサイコ・パルスは、僕の脳内に「全肯定お兄ちゃん回路(シスコン・バースト)」を爆速で開通させていたのだ。
科学者たちに引き離され、再びオーガスタの闇へと連れ戻された僕のロザミィ。
「(ティターンズめ……僕をこの邸宅に閉じ込めたまま、あんな極上のセーフティエリアを独り占めにして、今頃奥地で別の『偽物のお兄ちゃん』を刷り込んでいるに決まっているんだ……! 許せない、絶対に許さないぞ……っ!)」
宇宙世紀0087年、春。
世界は完全に激動の渦の中にあった。反地球連邦組織「エゥーゴ」と「ティターンズ」の戦争が本格化し、地上組織「カラバ」も動き出していたが、僕の関心は「いかにしてこの檻を抜け出し、ティターンズからロザミィを奪還するか」という、こじらせきった一点のみに集約されつつあった。
だが、監視カメラの手前、まだ「去勢された人間のクズ」を演じ続けなければならない僕は、今日も全裸にシーツ1枚だけを巻き付け、ベッドの隅でガタガタと震えるフリをしていた。
その時だった。
ドガァァァァァン!!!
突如として、邸宅の正面玄関が凄まじい爆発音とともに吹き飛んだ!
「な、なんだ!? ティターンズが僕のロザミィ補給計画を察知して殺しに来たのかッ!?」
パニックを起こす僕の部屋のドアが、ものすごい勢いで蹴破られる。そこに立っていたのは、かつてホワイトベースでともに戦った戦友ハヤト・コバヤシ、そして、すっかり大きくなったカツ・コバヤシの姿だった。
「アムロ! 迎えに来たぞ! 地上組織カラバは、君のニュータイプ能力を必要としている!」
「ハ、ハヤト!? カツ!?(……待て、カラバだと!? 地上の反連邦組織……! こいつらの戦力を利用すれば、ティターンズの包囲網を破ってオーガスタ研究所に乗り込めるんじゃないか……っ!?)」
脳内で爆速のソロバンを弾きつつも、まだニートの演技を解けない僕は「嫌だ、頼むから来ないでくれ! 僕はもうモビルスーツの操縦桿なんて握れないんだよォォォッ!」と、シーツを頭から被って叫んでみせた。
その無様な姿を見て、カツの額にドロドロとした怒りの青筋が浮かび上がる。
「……アムロさん。あなた、宇宙でフラウ母さんがどんな思いであなたのことを心配しているか、知っているんですか!」
ピキィィィィィン!
カツの脳内から溢れ出る「かつての英雄がただの全裸シーツメンヘラニートに退化していたことへのガチの絶望と怒り」のノイズを、僕のセンサーが受信する!
「カツ! 脳内で直接そんなひどい罵倒の精神波をぶつけないでくれ! 僕は今、ロザミィを救うための高等なブレイン・ストラテジーを組み立てている最中なんだ!」
「うるさいなぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
カツの怒りのリミッターが完全に限界突破した。
「そんなウジウジした言い訳ばかりして……今のあなたは、ただの最低の弱虫ですッ!!」
ドガッ!!!
カツの魂の乗ったリアル修正拳骨(物理シャットダウン)が、僕の顔面のど真ん中にクリーンヒットした!
「ぐはぁっ!?(……き、効く! 脳内ロザミィの甘えパルスでふやけきっていた僕の顔面に、現実のクソガキのリアル拳骨がジャストミートした……っ!)」
あまりの衝撃に、脳内のウジウジ演技システムが一瞬で強制終了された。
「ハヤト、こんな奴、引きずってでも連れて行くぞ!」
「ああ、急げカツ! ティターンズの追っ手が来る!
」
「(好都合だ、連れて行け! だけど)嫌だぁぁぁっ! 降ろしてくれ! 僕はまだシーツ1枚なんだよぉぉぉっ!」
カツとハヤトに両脇を抱えられ、全裸にシーツ1枚を巻き付けただけの無様な姿で、邸宅の裏庭へと猛スピードで引きずり出された。
そこに待機していたのは、ハヤトがカラバの資金を投じてチャーターした、白と青のラインが走る「民間用の小型輸送機(コミューター機)」だった。
「乗り込め、アムロ!」
シーツをはためかせ、半ケツを丸出しにした状態で、小型輸送機の狭いキャビンへと文字通り放り込まれた。
ゴォォォォォッ!!!
小型輸送機のツイン・プロペラが猛烈な爆音を上げて回転し、ティターンズの監視網の隙間を縫うようにして、北米の邸宅の滑走路から一気に大空へと離陸(テイクオフ)する。
「ハァ……ハァ……ハァ……。連れて行かれちゃった……。僕の引きこもりシェルターから、強制パージされちゃったよ……」
小型輸送機の冷たい床の上で、シーツ1枚の姿で丸くなり、ガタガタと震えていた。
長年引きこもっていたせいで、窓の外の本物の青空を見るだけで吐き気がしてくる。だが、カツのリアル修正拳骨と、僕のなかに眠るロザミィへの執着によって、メインジェネレーターの最深部には確実に新しい電流が走り始めていた。
「(あ、これ、現実の少年のリアルな怒りに直面してウジウジしつつも、脳内では『これでロザミィのいるオーガスタに近づけるぞ』とクソ不純な動機で再起動を始めている、宇宙一タチの悪い覚醒の瞬間を迎えてるアムロだ……)」
宇宙のどこかでクワトロ・バジーナ(シャア)が、「ついにアムロが飛び立ったか! だが、シーツ1枚の半ケツ状態でカツに殴られて拉致されただと!? しかも脳内がロザミア一色になっているとは……ガチで幻滅したぞアムロッ!」と、涙を流してMIPの画面を殴りつけているような精神波が伝わってくる気がするが、今の僕にはそれを気にする余裕などない。
「アムロさん、さっさと服を着てください。僕たちはこれより、ケネディ宇宙基地へ向けて移動中の超巨大輸送機『アウドムラ』と空中ドッキングを敢行します!」
カツが操縦席から冷たく言い放つ。
「アウドムラ……。そこに、僕をオーガスタへ導くルート(エゥーゴの戦力)があるというのか……」
シーツの隙間から、カラバの小型輸送機の窓の外に広がる、どこまでも青い地上の空を見つめていた。
現実の女へのトラウマを抱え、ティターンズの恐怖に怯え続けながらも、ロザミィという名の「全肯定ロリ・エネルギー」によって奇跡の再点火を果たしたウジウジ少尉。
その男が、シーツ1枚という最悪の無様なザマで、ついに『機動戦士Zガンダム』本編の過酷な戦場へと、強制的にプラグインされる瞬間だった。
小型輸送機のエンジン音が高鳴るなか、アムロ・レイの錆び付いた戦闘システムは、恐怖と屈辱、そしてこじらせたリビドーの熱量によって、二度目の起動(再起動)に向けて、ゆっくりと、しかし確実に火が灯ろうとしていた。
(……待っててくれよ、僕のロザミィ。お兄ちゃんが今、カラバの輸送機を強奪してでも、君を助けに行ってあげるからね……っ!)