機動戦士ガンダム 地球に幽閉された英雄のRX-78(意味深)が限界突破のフルドライブ! 連邦軍上層部、アムロの夜のニュータイプ能力を恐れてハニートラップの仕込みを開始する 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
カラバの移動用輸送機の、社会的・倫理的な独房とも言うべき狭い自室。
鍵を二重にロックし、ハヤトが置いていったカラバのズボンをやっとの思いで穿き終え、ベッドの上で激しい自己嫌悪のG(重力)に押し潰されていた。
アムロ・レイ23歳。
12歳の中学1年生へと超絶美少女進化したキッカちゃんのピュアさに脳内避難(現実逃避)を試みた結果、脳内スクリーンには「キッカちゃんのピュアな精神波を燃料にして、錆び付いたメインジェネレーターを急速充電する」という、最悪の禁断回路が開通してしまっていた。
「脳内完結だからセーフ……! 脳内完結だから僕は合法無罪だし、誰の心も傷つけていないんだよぉぉぉっ!」
誰もいない密室で、自分を全肯定するための法廷弁論(言い訳)を涙ながらに呟いていた。
現実の戦場は怖い。アッシマーやギャプランのプレッシャーを想像するだけで、僕の精神バリアは逆噴射を起こしそうになる。
だからこそ、この恐怖を打ち消すためには、あの汚れのないキッカちゃんの微笑みを脳内ハードディスクから呼び出し、最高出力で妄想の操縦桿を握り締める(シコシコする)しかないんだ。
よし……やるぞ。
目を閉じ、脳内のサイコ・ミュに意識を集中させた。
ピキィィィィィン!
「(見えた……! ホワイトベースの黄色い帽子を脱ぎ捨て、さらさらと風に揺れる髪をなびかせながら、カラバの制服を身にまとった12歳のキッカちゃんが、僕の脳内コクピットの助手席にちょこんと腰掛けている……!)」
脳内ハードディスクに録画された美少女データが、爆速のポリゴン描画で立体化(オートマッピング)されていく。
すらりと伸びた健康的な足のライン、はにかんだような可憐な笑顔。大人の嘘つきハニートラップ要員たちとは違う、純度100%の「善意の塊」が、壊れかけていた精神を優しく包み込んでいく。
「(アムロお兄ちゃん、元気を出して? 私、いつでもお兄ちゃんの味方だよ?)」
脳内のキッカちゃんが、都合の良い幻聴(システムボイス)として、甘く清らかな声で囁きかけてくる。
「う、うおおおッ! キッカちゃん! 僕は君のその圧倒的ピュアさのおかげで、7年ぶりに男としてのメインジェネレーターが起動しそうなんだ! 臨界電圧突破! 右手のマグネット・コーティング(往復運動)を開始するッ!!」
ハァハァと息を荒くしながらベッドの上で身を震わせ、まさに禁断のソロフライト(単独飛行)へ向けてテイクオフしようとした――その、まさに1秒前の瞬間だった。
ピキィィィィィン!!!
突如として、脳髄を、現実の部屋の外から飛んできた「本物の、ガチの、生身のニュータイプ精神波」が、極大のビーム・サーベルのごとき質量で一刀両断に引き裂いた。
「(……ちょっと待って。アムロお兄ちゃん。今、何をおかずに、どこへ行きまーすッ!しようとしてるの……?)」
「ひゃあッ!???」
ベッドの上で30センチほど垂直に跳び上がり、慌てて右手の操縦桿(意味深)をパージ(解放)した。
な、なんだ今の精神波は……!?
幻聴じゃない。脳内の都合のいいエミュレータでもない。
この、極限まで引き締まった、だけど底知れない恐怖とドン引きのプレッシャーを孕んだサイコ・ウェーブの送信元は――。
「(う、嘘でしょ……お兄ちゃんの頭の中から、私の名前を連呼しながら何かを激しく往復ビンタ(摩擦)させてる、もの凄くドロドロした変態リビドーの生データが、私の脳内に直通回線で常時オート受信されてるんだけど……!?)」
ギニャァァァァァッ!!!
キッカちゃんの本物の精神波だ!!!
なんということだ。12歳にしてハイパーニュータイプへと覚醒しつつあるキッカちゃんは、脳内で彼女の美少女データを読み込んだ瞬間、その「精神の呼び出し(コール)」を敏感にキャッチし、脳内で行われている最低最悪の変態妄想生データを、リアルタイムで100%そのまま受信(ミラーリング)してしまっていたのだ!
「(お兄ちゃん……! 私、まだ12歳の中学生だよ!? なんで脳内のコクピットに私を全裸(プロトタイプ)で搭乗させて、二人だけの単独飛行(ソロフライト)を敢行しようとしてるの!? 最低だよ! 暗黒のプレッシャーが酷すぎて、私、輸送機の通路の真ん中で一歩も動けなくなっちゃったじゃん!!)」
キッカちゃんの悲痛な、そして心の底から怯えきったドン引き思念波が、脳内メモリ(RAM)を直撃して粉々に粉砕する。
「ち、違うんだキッカちゃん! 通信回線を閉じてくれ! これはニュータイプのバグなんだ! 僕はただ、地球の重力に魂を引かれた結果としての、脳内完結だからセーフ理論を――」
「(セーフなわけないでしょぉぉぉっ! 出力100%のアウトだよ! 音声だけじゃなくて、お兄ちゃんのハァハァしてる生々しいブレスの駆動音まで全部スピーカー状態で脳内に響いてるんだからねッ!!)」
ピキィィィィィン!
脳内で、キッカちゃんの純粋無垢な精神の壁(メンタルバリア)が、変態ノイズによって汚染され、シクシクと泣き出してしまう様子がリアルタイムに伝わってくる。
「(……あ、現実のストレスから逃避するために12歳を脳内おかず化しようとしたら、相手がまさかの超絶サイコチェッカー持ちで、自分の変態妄想のコクピットを生中継されて社会的死を迎えたアムロだ……)」
宇宙の彼方からクワトロ・バジーナが「アムロ! 私がエゥーゴの軍資金のやりくりでティターンズ以上に頭を痛めているというのに、お前はカラバの移動用輸送機の中で、12歳の少女に自分のシコシコ実況生中継(オート受信)を強制配信しているのか!? ガチでロリコンの先輩として引くわッ!」と、グラサンの奥から軽蔑の極大サイコ・パルスを送ってきている気がするが、今の僕にはそれどころではない。
「頼むから耳を塞いでくれ、キッカちゃん! 忘れてくれ! 23歳の引きこもりの悲しい逆噴射なんだよぉぉぉっ!」
自室のベッドの上で、頭を抱えてのたうち回っていると。
ガチャンッ!!!
二重にロックしていたはずの鉄製の扉が、外側から凄まじい力(プラズマカッター)によって強引に破壊され、不吉な金属音を立ててこじ開けられた。
白煙の向こうから現れたのは。
通路の影で耳を塞いで泣いているキッカちゃんを背後に庇い、手にしたプラズマカッター光らせながら、瞳の奥に「暗黒の殺意」を完全に宿したカツ・コバヤシの姿だった。
「アムロさん」
カツの声は、地球のどの重力よりも重く、冷たく、容赦がなかった。
「あなた、鍵を閉めて密室の中で、僕の義妹に一体どんな『最低のサイコ・ウェーブ(セクハラ配信)』を敢行していたんですか。キッカが通路で泣き崩れて、精神的受動喫煙で過呼吸を起こしかけてるんですよ」
「カ、カツ……! 誤解だ! 僕はただ、脳内のセーフティエリアでガンダムの再起動を――」
「言い訳の駆動音(ボイス)は必要ありません。お前はもう、伝説のパイロットでも何でもない……ただの、社会的死を迎えるべき『白い変質者』だッ!!」
カツがプラズマカッターを振り上げ、ベッドに向けて爆速のステップで踏み込んできた。
移動中の輸送機という名の、逃げ場のない完全な密室。
アムロ・レイ23歳。ティターンズと戦う前に、輸送機内で起きた前代未聞の騒動によって、カラバの身内から厳しい追及を受けるカウントダウンが始まろうとしていた――。
――「カツ、やめて!」
完全に倫理的なシステムが強制シャットダウンされる寸前、破壊された鉄製の扉の向こうから、緊迫した格納庫を切り裂くような少女の悲鳴が響き渡った。