機動戦士ガンダム 地球に幽閉された英雄のRX-78(意味深)が限界突破のフルドライブ! 連邦軍上層部、アムロの夜のニュータイプ能力を恐れてハニートラップの仕込みを開始する 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0093年3月12日、アクシズ宙域。
ロンド・ベル隊の誰もが、すでにメインジェネレーターの限界(深刻な処理落ち)を迎えていた。ブライト・ノアの必死の核パージ(ミサイル直撃)によって二つに割れたはずの小惑星アクシズは、その片割れが地球という名の巨大な聖母の引力に囚われ、往復運動の終着点へ向かって冷徹に落下を続けている。νガンダムの5連装スラスターはオーバーヒートで焼き切れる寸前、コックピットのRG警告音は、まるでアムロの20代最後の厄年を祝うかのように鳴りやまない。アムロ・レイ、29歳。その両手は、かつて連邦政府によって北米の豪邸に7年間も軟禁され、日替わりで送り込まれる政府直属のハニートラップ工作員たちの相手で錆びついたはずの操縦桿を、今この瞬間だけは、全開の幼児退行(シャア)を阻止するために迷いなく握りしめていた。
「アムロ、無駄死にする気か! カミーユの二の舞になるぞ、離れろ!」
通信の向こうで、ブライト・ノア(36歳)が自身の胃壁を原子レベルで融解させながら叫ぶ。だが、アムロは応えない。応えるためのまともな大人の言葉など、彼はあの北米の暗い寝室で、連邦の放ったゴージャスな罠のベッドに沈められた時点で、とっくにパージ(喪失)していたのだ。
だが、今は違う。
思い出すのは、一年戦争直後のジャブローの一室。シャアへの勝利と引き換えに彼を待っていたのは、フラウ・ボゥの涙と、ニュータイプという「人と人が裸のままで分かり合ってしまうシステム」を心底恐れた連邦軍上層部による組織的な牙抜き(去勢)工作だった。アムロ・レイの能力は統制を超えている。いまのうちに精神的DTに戻さねばならない。日替わりの監視員、ララァの幻影に怯える夜。アムロの脳内メインフレームはそうやって少しずつ削られていったが、連邦は根本的にニュータイプというバグを読み違えていた。
ニュータイプの力は、孤独を深めるためのオカルト呪縛ではない。相手の痛みの電圧が、そのまま自分のジェネレーターにダイレクトに逆流して届いてしまう、その一点にこそ本質があった。だからこそアムロは壊れかけ、だからこそ――今、ここで全否定の引力に立ち向かえる。
落下するアクシズの岩肌を押し返すνガンダムの中で、サイコフレームがサイコ・マシーンの如く緑色に爆発(共振)する。その光の奔流に、これまでアムロの傍を去っていった死者(ログ)たちの声が、次々と重なっていく。
カツ! 木星帰りの変態(シロッコ)を勝手に追いかけ、サラへの歪んだリビドーの果てに宇宙のゴミ(隕石)に激突して散ったあのクソガキの声だ! 「立て、アムロ! 僕のあの無駄死にを無駄にするな!」という未熟で真っ直ぐな拳骨の痛みが、機体の駆動トルクを強制的にビルドアップする。
クェス! 父親への反発をこじらせてシャアの孤独なバブみ環境に吸い込まれ、最終的にチェーンの放ったミサイルの直撃からハサウェイを庇って散った13歳のロリ燃料! 「いい男だと思ったのに、アムロもシャアも情けなさすぎるわ!」という全開のディスコミュニケーション・パルスが、機体を支えるサイコ・バリアの芯となる。
チェーン・アギ! アムロを「連邦の白い悪魔」という神話の去勢器としてではなく、ただの傷ついた一人の29歳としてヨシヨシ支えようとした、健気すぎる技術士官! サイコフレームの実物を届けようとしてハサウェイの幼児性の誤射(悲劇)に消えた、その圧倒的ヒロイン力が今、この緑の光のメインジェネレーターになっている。
そして――ララァ・スン。
アクシズの岩肌を挟んで、シャア・アズナブルのサザビーの脱出ポッドが、みっともない駆動音を立てて軋む。
「やめてくれ、アムロ! 人は同じ幼児退行を繰り返す! 私のネオ・ジオンの軍事プロデュースを邪魔するな!」
「シャア……! 貴様はララァを、母親の代用品(バブみ環境)として求め続けて、世界を巻き込んで逆恨みしているだけだ!」
通信を超え、二人のマザコンの意識が全裸のままで直接ドッキングする。シャアがララァに求め続けたもの、それは恋人ではなく、幼くして失った無条件の肯定(バブみ)、還るべき母なる産道だった。そしてアムロが連邦のハニートラップ女性たちに怯え続けた根も、実は同じ「本物の母性」への渇きだった。二人はただの、鏡合わせの同族嫌悪(BL)だったのだ。
その二人の情けない心の底を、緑の光の中でララァの気配が静かに撫でる。
「アムロ……シャア……あなたたちはもう、死んだ私のパンティの幻影を追わなくていいの。男の子は、重力の底からでも、ちゃんと自分の一物で立てるのよ」
怒りでも悲しみでもなく、ただ静かな「マザコンへの赦し」として、彼女はようやく二人を呪縛から解き放った。
ロンド・ベルの旗艦ラー・カイラムのブリッジでは、小説版の正史からこの映画版のタイムラインへ「アムロの不器用でやかましい本妻」として強引にドッキング(降臨)を果たした金髪の彼女、ベルトーチカ・イルマが拳を握りしめてヒステリックに叫んでいた。
「アムロ! 返事しなさいよ! 約束したでしょ、私が横でパパにしてあげるって! 連邦の送り込んだ偽物の女たちのベッドなんかより、私のほうがずっと騒がしくて最高なんだから!」
その声には、もうZガンダム時代の気取りもジャーナリストの矜持もない。ただ一人の女が、大切な男の帰りを待って泣き叫んでいる。
彼女こそが、連邦の精神去勢工作が最後まで壊せなかった、アムロにとっての「本物の現実(防衛陣地)」だった。計算も、欺瞞も、上層部の打算もない、ただ真っ直ぐに彼の遺伝子を待つ人。アムロがようやく大人の女性への恐怖(北米のトラウマ)を越えられたのは、豪華な罠のスイートルームではなく、この不器用でやかましい、本物の母性が待つ場所があったからだ。
「大丈夫だ、ベルトーチカ。宇宙世紀0105年(閃光のハサウェイ)の前に、俺たちのログはここで一度シャットダウンする」
声にはならない。だが、そのニュータイプの最大電圧パルスは、確かに彼女の脳内センサーへ届いた。
「まだ終わらん! まだ終わらんよ、こんな情けないセリフで私の最終回を終わらせるわけにはいかんのだ!」
サザビーのポッドの中で、シャアが往生際悪く使い回しセリフ(バグ)を叫ぶが、νガンダムのメインジェネレーターは、アムロのこれまでのDT幽閉人生のすべてを燃料に、最後の出力を吐き出す。
カツの理不尽な怒りが! クェスの歪んだ愛が! チェーンの無惨な献身が! ララァの聖母の赦しが! ベルトーチカの不器用な祈りが! そして敵味方の名もなき兵士たちの「生きたい、地球の女たちとドッキングしたい」という無数のエゴとリビドーが――サイコフレームを介して一つに共振した。
トアル、トアル、トアル。
ジェガンが、ギラ・ドーガが、陣営の垣根も作画の限界も越えて集まってくる。人の意志が、質量を持った緑の精光になる。ニュータイプとは、殺し合うための戦争兵器ではなく、この広い宇宙で互いのバブみを認識し合うために研ぎ澄まされた、命の形だったのだ。
虹色の光の奔流が、地球へ落ちるアクシズを優しく包み込み、その慣性を「富野演出」の如き力業で、宇宙の彼方へと押し返していく。
連邦が7年かけて封じようとした「人と人が分かり合ってしまう恐怖の力」は、皮肉にも、この瞬間、地球そのものを救った。アムロとシャアの、長すぎたマザコンの往復運動の光(残響)を、その青い星に残したままで――。