機動戦士ガンダム 地球に幽閉された英雄のRX-78(意味深)が限界突破のフルドライブ! 連邦軍上層部、アムロの夜のニュータイプ能力を恐れてハニートラップの仕込みを開始する 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
小惑星アクシズの片割れは、地球の引力圏を完全に脱した。
虹色に燃え上がったサイコフレームの最大電圧パルス(奔流)は、その人類を救うシステムエラーとしての役目を終えるように、漆黒の宇宙へ静かに拡散していく。νガンダムのコックピットの中で、アムロ・レイ(29歳)は最後にひとつだけ、幽閉された7年間では決して辿り着けなかった確かなデータ(本質)に触れた気がしていた。
それは、連邦政府による精神去勢工作への怒りでも、女性へのトラウマ(恐怖)でもない。ロザミィの、キッカの、カツの、ミネバの、クェスの、チェーンの、名もなきギラ・ドーガ兵たちの――そしてララァ・スンの、聖母の如き赦しに満ちた生パルス。人と人が、陣営も過去のコンプレックスもすべてオールパージして、ただ互いの存在を全肯定し合う光だった。
「シャア……見えるか。これが、貴様がMSのスペック差で勝とうとしていた、ニュータイプの本当の力(バブみ)だ」
「……ああ。私は、この圧倒的な全肯定(愛)を恐れていたからこそ、地球を寒冷化しようなどという、めんどくさいマニューバを起こしていたのかもしれんな」
サザビーの脱出ポッドのなかで、仮面の男(34歳・MIA)の応えは、もう幼児退行から解き放たれたように静かだった。ララァという母の幻影を終生追い続けた男と、連邦のハニートラップ工作に怯えて女性への恐怖に囚われ続けた男。鏡合わせの変態(二人の英雄)は、そのサイコフレームの光の中で、ようやく長すぎた精神的渇きから解き放たれたのだ。
そして――νガンダムとサザビーの機影は、緑の光の海へと呑まれ、宇宙世紀の正史の闇へと消えた。残されたのは、地球の夜空を120%の作画で彩る、虹色のオーロラだけだった。
ロンド・ベル隊の旗艦ラー・カイラムの艦長、ブライト・ノア(36歳)は、自身の胃壁を辛うじて融解から防ぎ、生き延びた。彼は即座に周囲のジェガン隊へ救助艇(ロジスティクス)を出し、宙域に漂うパイロットたちを敵味方の垣根なく一人でも多く収容するようマニューバを命じた。だが、どれだけメインファインダーを回して広域捜索を展開しても、二機の次世代サイコフレームMS――νガンダムとサザビーのコックピットブロックは、ついにロストのまま発見されなかった。
「アムロ……シャアめ……! またしても一人の男を巡るBLの修羅場に世界を巻き込んで、最後は二人で光の彼方へドッキングしおってからに……っ!」
ブライトは艦長席で激しく拳を握った。一年戦争のホワイトベース時代から共に戦い、時に修正(殴打)し、時にぶつかり合ったニュータイプの少年。その最期(散華)のログを看取ることすら、中間管理職の彼には許されなかったのだ。地球連邦軍の冷徹な公式データベースには、こう永久登録される。
「アムロ・レイ大尉、シャア・アズナブル総帥、共に戦闘中に行方不明(MIA)。生死の確認は1ビットも取れず」
だが、この引力に抗った奇跡の戦いは、もう一人の少年に消えないバグ(傷跡)を刻んでいた。
ブライトの息子、ハサウェイ・ノア(13歳)。彼は父に無断でジェガンに密航して戦場に紛れ込み、そこで初恋の巨大ロリ燃料、クェス・パラヤと再会していた。ネオ・ジオンに走り、α・アジールという名の巨大なエゴを駆るクェス。少年は必死に彼女を説得(自らの童貞去勢回路を起動)して止めようとした。
その説得マニューバの最中――アムロを守り、サイコフレームを届けようとしていたチェーン・アギの放った一撃(ヒロインの執念)が、α・アジールを完全に撃ち抜いた。チェーンは、そこにブライトのバカ息子と、その初恋のクェスがいることなど知る由もなかった。
「クェスを……俺の初めてのクェスを殺したなァァァッ!」
悲嘆と逆恨みの憎悪に脳内回路を完全ハッキングされたハサウェイは、味方であるはずのチェーンのジェガンに向けて、ビーム・ライフルの引き金をノーブレーキで引いた。
こうして、クェスもチェーンも、二人のヒロインは宇宙のチリとなって散った。守ろうとしたアムロ(英雄)が、守られるべき者を殺し、愛した女を失った13歳の少年が、その手で味方の仇を撃つ。ニュータイプの力が人と人を分かり合わせるシステムだというなら、この日、地球の重力の底では、最悪のディスコミュニケーションの悲劇だけがビルドアップされたのだ。
――少年の心に刻まれたこの最悪のバグ(罪と喪失)こそが、のちの宇宙世紀0105年、彼を反地球連邦組織の指導者「マフティー・ナビーユ・エリン」へとテイクオフさせ、クスィーガンダムを起動させる最初の一滴(因果律)となる。
地球を寒冷化の危機から救ったのは、皮肉にも、連邦政府が7年間かけてハニートラップまで仕込んで封じようとした、アムロのニュータイプの力だった。
だが、ジャブローの重力に魂を縛られた連邦上層部は、その奇跡のデータを前にしても、1ビットも悔い改めることはなかった。むしろ、保身の駆動トルクを上げたのだ。
「モビルスーツ数機分の出力で、小惑星アクシズを偏向させた……ありえん、そんな処理落ちは認めんぞ。これは……サイコフレームの、謎の共振現象(オカルト)だと?」
「即刻、全データを情報統制(オールパージ)しろ。この記録は最高機密だ。人の意志が質量を持つ(物理法則をハッキングする)などという事実が全コロニーに広まれば、我々の独裁(統制)など、砂上の楼閣になる!」
アムロを北米の邸宅に軟禁し、その牙を抜こうとしたのと同じ恐怖(打算)が、今度はサイコフレームという技術そのものへと向けられた。アクシズショックの真実は闇に葬られ、利権の塊であった技術は封印(ブラックボックス化)された。
だが、封じられた緑の光は消えなかった。3年後の宇宙世紀0096年「ラプラス事変」において、そのサイコフレームはバナージ・リンクスという新たな可能性の手によって再び共振の光を放ち、「ラプラスの箱」を開けて宇宙世紀の因果律を問い直すことになる。連邦がどれだけ人間の心を管理(去勢)しようとしても、分かり合おうとする生命のピストン運動(力)そのものを、完全にシャットダウンすることはできなかったのだ。
そして、アムロを7年の幽閉(ニート生活)から戦場へと引き戻し、「必ずあなたの横に帰る」と約束させた金髪の彼女がいた。
ベルトーチカ・イルマ。彼女は髪を振り乱し、ラー・カイラムの格納庫でアムロの帰りを待ち続けたが、ついにアムロの帰還ログ(熱源反応)のない救助艇の前で、いつまでも立ち尽くしていた。連邦の嘘も、上層部が用意した豪華な罠のスイートルームも、最後まで壊せなかったもの。計算も欺瞞もない、ただ真っ直ぐにアムロ・レイの遺伝子を待つ本物の場所。アムロがようやく手にした「還るべき聖母(ベルトーチカ)」は、確かに、そこにあった。
――だが、サイコフレームの光は彼を二度と還さなかった。
還るべき最高の場所を得たその瞬間に、その場所へ二度と物理ドッキングできなくなる。それが、重力に魂を引かれ続けた29歳のエースに、宇宙世紀という残酷なタイムラインが最後に用意した、あまりにも静かで、あまりにも哀しいトミノ節の結末だった。
彼女はもう、ヒステリックに泣かなかった。ただ地球の夜空を彩るオーロラ(全宇宙規模の精霊の輝き)を見上げ、そこに彼のアムロ大尉としての気配を探すように、長いあいだ空(宇宙)を見ていた。
アムロ・レイは、これ以降の歴史の表舞台に、1ビットたりとも姿を現さなかった。
彼が最後の最後、20代の終わりに世界に示したもの――敵も味方も、生者も死者も、クソガキもロリコンも越えて、人が互いの存在を認め合えるという奇跡のデータは、公式記録からオールパージされてなお、名もなき兵士たちの間で「光の伝説(アクシズの奇跡)」として宇宙世紀に残り続けた。
クェスが最後に選んだ、誰かのために死ねるロリ燃料としての強さ。
チェーンが燃やした、一人の女性としての圧倒的献身。
ララァが与えた、すべてのマザコンを包み込む静かな赦し。
そして、ベルトーチカが格納庫に遺した、本物の愛の待機パルス。
さらには、名もなきギラ・ドーガ兵たちの「生きたい、この星の女たちを守りたい」という、無数の泥臭いエゴと祈り。
それらすべてが一つにドッキングした虹色の灯(BEYOND THE TIME)は、連邦軍の恐怖の圧力にも、人間の打算(業)にも消せなかった、宇宙世紀に生きた者たちの――それでも人を信じてテイクオフしようとした、絶対の証だったのだ。
「地球の重力(トラウマ)なんて、もう怖くない」
アムロ・レイはきっと、サイコフレームの光の中で、あの15歳の頃の少年のように、すっきりと笑っていたに違いない。
―― 宇宙世紀0093年3月12日「アクシズ・ショック」。伝説の英雄アムロ・レイは、人が分かり合える可能性を全宇宙のメインフレームに示し、そしてまばゆき虹の光となって、ベルトーチカの元へは還らぬ人となった。