機動戦士ガンダム 地球に幽閉された英雄のRX-78(意味深)が限界突破のフルドライブ! 連邦軍上層部、アムロの夜のニュータイプ能力を恐れてハニートラップの仕込みを開始する 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
『(アムロ……。やっぱり、こんなところに閉じ込められていたのね……)』
セイラさんの精神波が、僕の閉ざされた回路を強引にこじ開ける。
壁越しに聞こえる監視員たちが「何だと!? セイラ・マスだと!? なぜ監視網を突破された!」と大パニックを起こしているのが過敏なセンサーに聞こえたが、今の僕にはどうでもよかった。
彼女は連邦の罠ではない。本物の、かつての戦友。
「セイラさん……! 僕は、僕は……!」
求めていた安らぎが目の前にあるという歓喜。そして、彼女が僕を連れ出しに来てくれたという「一人の男への全幅の信頼」が、壊れていた僕の回路に強引に高電圧の電流を叩き込んだ。
大人の女性への恐怖を、かつての戦友への狂おしいほどの情動が、一瞬にして上書きする。
驚いて目を丸くするセイラを、圧倒的なエースの腕力でベッドへと押し倒した。
かつてサイド7の自室で回路をいじっていた引きこもりオタクの腕力ではない。
幾多の戦場で、ジオンの猛者たちとビーム・サーベルを交え、レバーをへし折らんばかりに引きちぎってきた、本物の撃破王のG(重力)がセイラに圧し掛かる。
「セイラさん……。だから、僕だって……僕だって男なんだ! 僕のRX-78(意味深)が、もう1ミリも我慢できないんだよッ!」
「あ、アムロ……!? 待って、そんなに激しくされたら、私のチョバムアーマー(衣服)が――」
激しい衣擦れの音。
彼女の肌のぬくもりが直接僕に触れ、僕のマグネット・コーティング(意味深)が、猛烈な駆動音を立てて直立(オーバーヒート)を始めた。本物の大人の女性を前に、僕の戦闘システムが再起動(リブート)したんだ!
天井の監視カメラの向こうで、連邦の男たちが「何だと!? セイラ・マスだと!? なぜ監視網を突破された! すぐに警備部隊を回せ! ……いや待て、アムロの去勢が本物のセイラ・マスによって解除されようとしている! データを、生体データを最優先で回収しろ!」と狂喜とパニックの混ざった声を上げている。
だが、僕たちのニュータイプ能力は、あまりにも「通じ合いすぎてしまった」。
その絶頂へのカウントダウンの最中、肌の密着を通じて、彼女の脳内のすべてが流れ込んできた。
僕を救おうとする強い意志、連邦を欺くための冷徹な知性、そして僕に向けられる、かつてのホワイトベースの英雄に対する、あまりにも真っ直ぐで強烈な「期待」。
それが、絶頂の脳内に、耐え難い「大人の重圧(ノイズ)」として突き刺さる。
ピキィィィィィン!
その一言のない精神の奔流が、熱くなった回路を氷のように冷やす。
(違う……セイラさんは僕を『英雄』として救いに来たんだ。僕のような、壊れて果てたウジウジしたガキを求めているんじゃない……!)
求めたいという魂の渇望が、彼女が本物の「気高き大人の女性」であるという事実によって、一瞬にして恐怖のどん底へと叩き落とされる。彼女の清廉さが、優しさが、かえって僕のマグネット・コーティングを完全に恐怖で縮み上がらせ、急激に錆び付かせた。
爆速で起動したはずのガンダムが、ドッキング直前で、二度と動かないスクラップへと逆戻りしていく。
「……っ! 違うんだ、来ないでくれ……ッ!」
激しく揺らいだ反動のまま、僕は彼女の身体を突き放し、ベッドの隅へと転がり落ちた。
セイラの瞳が、困惑と悲しみで揺れる。
「アムロ……?」
「違うんだ、セイラさん……。僕はもう、ガンダムの操縦桿はおろか、自分自身すらコントロールできない……人間のクズなんだ……ッ!」
彼女の温かい肌に二度と触れることができず、僕は自室の隅で全裸のまま頭を抱えて叫んだ。
一度はあれほど激しく求め、男として起動しかけた本物の戦友すら、己の深すぎるトラウマと弱さゆえに拒絶してしまった。圧倒的な賢者タイムのような永続する絶望が、僕を覆う。
「……そう。私の存在さえ、今のあなたには重荷なのね……」
セイラさんは何も言わず、ただ哀しみを湛えた虚ろな目で僕を見つめ、迫り来る連邦の警備部隊の足音を察して、再び闇へとパージ(逃亡)していった。
あとに残されたのは、静寂という名の、より強固になった重力の檻。
全裸のまま、自分の胸元を見つめる。セイラさんの放った「本物の大人の気高き光」に激しく心が揺らぎ、そしてそれを自ら拒絶してしまったという冷酷な事実が、僕の心に二度と消えない深い傷を刻む。僕の主砲は、今度こそ二度と起立しない完全な機能不全へと沈んだ。
――もう、誰も信じられない。誰も僕を救えないんだ。
枕に顔を埋め、暗黒の引きこもりルートを突き進もうと決意した、その瞬間。
ピピピピピッ、ピピピピピッ!
部屋の通信モニターが、けたたましい電子音を立てて強制着信を告げた。
暗転した画面に浮かび上がったのは、サイド7のあの日から、いつも僕の後ろをウジウジとついてまわっていた幼馴染の姿――。
「あ、アムロ? 繋がった……? 私ね、あなたにどうしても伝えておかなきゃいけない『大事な報告』があって――」
その通信(フラウ・ボゥの声)が、僕の残された精神回路を完全に消滅(スクラップ)させる、最後にして最大のサイコ・ショックになるとは、この時の僕はまだ知る由もなかった。