バースセイバー、地下闘技場へ   作:あこにとむ

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地下闘技場に併設されているホテル回。


地下闘技場調査(休息回)

徹の出番が終わり、1度今日の試合は終了ということになった。次の日に持ち越し。

 と、ここで全員が思っていた。

「この辺に休息できる場所あったか……?」

 と。

 穴は繋がっているだろうから、帰ろうと思えば帰れるのかもしれないが、できるならこの辺で休めた方が効率は良い。

 頭を悩ませていると……

「皆さま、お疲れ様です」

 拍手をしながら笑顔を浮かべていたのはヴァイスハイト。

「おっ、お疲れ様です……」

 オドオドしながら白理は返した。

「本日の試合、楽しませていただきました。私が見込んだ以上です」

 その言葉に嘘偽りはなく、また強く賞賛しているのでもあった。

「……で、別に褒め言葉だけ言いに来たわけじゃないんだろ?」

 テツが目を細めて言う。

 図星を突かれたからか、ヴァイスハイトは目を丸くする。

「おお、さすがの慧眼ですね。やはりあなた方は面白い……」

 そう言うと、フロアのスタッフに何かを持ってこさせる。

 それは、ホテルの案内状だった。

「この闘技場で選手登録をされている、もしくは遊技場で遊んだ方のみお招きしているホテルです。専用のホテルですから、料金は頂いておりません」

 ……そんな上手い話があるのか。さすがに胡散臭すぎる。全員は疑いの目をしていた。

それを察したのか、ヴァイスハイトは続ける。

「当施設では『最高の遊技体験・最高の試合』をモットーにしております。戦いをするにしろ、遊ぶにしろコンディションが良くないと『最高』は味わえないと思っていますので」

 言うことはわかるが、なぜそこまで高待遇なのか。

「やはりお客様には良い気分で居てもらうことこそ収益に繋がるものですよ」

 つまるところ、全部計算ずくということだ。良い環境のホテルで気分をあげてもらい、そして金払いを良くしてもらう。

 試合もそうだ。ここでは登録選手たちに高待遇の部屋を用意している。気持ちのいい温泉や、食事をしてもらい最高のコンディションにしてもらう。そうすることでより白熱した試合に繋がるということである。

 ……もちろん、品性はある程度は必要にはなると思うが。

「ご理解いただけましたか?」

 全く知らない土地(降り立った場所からはまともな建物は見えなかった)で宿屋探しともなると骨が折れる。どこか怪しさは覚えるものの、今は他にあてもない。従うのが得策だろうということになった。

 そして地下ホテル。

 外の絶景とかは見ることはできないが、派手すぎず落ち着いた雰囲気に、上品な花や絨毯。心地よい香りまでする。

 ひと目でわかる、これは高いホテルだと。

 全員が戸惑っていた。高いホテルに泊まった経験がないとかではなく、ドレスコードとか必要そうな場所に見えて、少しだけ萎縮してしまっていたのだ。

 しかしペースを崩さない者はいた。

「うわー、これ絶対高いじゃん?……持って帰っていい?」

 ハルが高そうな置物を指さす。

「お前、やるならバレないようにやれよ」

 テツは止める気無いようだった。

「何言うてんねん、ワイの方が美しいわ」

「「黙れ脂肪」」

 そしてこの会話を聞いて思う、早くしないと窃盗犯になるかもしれないと。

「……とりあえず、チェックインをしたらいいのかな」

 ソニドリが眼鏡を押し上げながら言う。

 エントランスの受付が恭しく頭を下げる。

「ようこそおいでくださいました。皆様のことは支配人から伺っております。お部屋に案内させていただきますので、どうぞごゆっくり身体を休めてくださいませ」

 男性12人、女性5人。

 一部屋4人ずつで、計4部屋に割り振られた。女性は5人だったので、大部屋へ通された。

 ……性別がよく分からないのが少しいるけれど。

 部屋に入ると、心地よい香りにふかふかのベッド、明るすぎず暗すぎない程度の優しい明かりが点っており、とても安心する空間になっていた。

 絨毯は柔らかく肌触りもいい。清潔なタオルや白いベッドに息を飲む一行。

 ルームサービスもあり、至れり尽くせりと言った感じだ。

 もちろんだがアメニティや浴室もあり、設備はかなり贅沢なものとなっていた。

 女性陣では、

「ひえ……ほ、本当にお金取られないですよね……?」

 白理は辺りを見回しながらビクビクしている。

 このような空間に泊まるのは初めてなのだろう。目を回しているようだった。

「すごい、ベッドふかふか……」

 アロンダはちょっと目をキラキラさせていた。

「んー、これアメニティだけでも一儲けいけそうかも……あ、酒もあるし」

 ハルは部屋を歩き回り、お金になりそうなものを探していた。お金になりそうなら、売り捌くのもやぶさかでは無いようだ。

「あはは、ひろーい!きれーい!」

 ドタドタと足音を立てながらアイヴィーは走っていた。

 少し離れたところでセロが紅茶を飲んでいた。

「元気なのは構わないが、もう少し落ち着きを持った方がいいと思うがね」

 その言葉に白理とアロンダがハッとする。

「あっ……確かに……落ち着き……ってどうしたら……」

 何故かその言葉でちょっと涙目な白理。

「騒がなければ良い……のでは」

 アロンダは落ち着きを持つという言葉からさっと思いついたことを言う。

 女子部屋はなんだかんだでも平和であった。

 しかし、問題は男子たちの部屋であった――――。

 

 ①……ヌル、テツ、アザラシ、徹

 ②……ワンダースケア、ヴィクター、ソニドリ、レオン

 ③……レイ、アクト、セーリィ、イオリ

 この部屋割りとなった。

 まずはヌルたちの部屋では……

 

「お、おお……なんかすげぇな……」

 予想以上に綺麗な部屋でヌルは少し緊張しているようだ。何となく慎重になって忍び足になりながら部屋に入っていく。

「これはまた随分なもてなしだが……タバコ吸っていいのか?灰皿ある?」

「さすがにダメだと思うが……?」

 部屋に入るなり即タバコを吸おうとするテツにヌルがとりあえず止める。

「なあ、キングサイズのベッドってないん?ワイそれがいい」

「んなもんある訳ねーだろ、おめえは床にでも寝てろ」

「そうやってアタイに手を出す気?!エ〇同人みたいに!〇ロ同人みたいに!」

「うるせえ肉団子」

 アザラシはやかましかった。

 なぜひとつ言ったことを返すと100で返ってくるのだろうか。ある意味では天才なのかもしれないが。

「よーし、バテイさんは女子たちの部屋に……」

 と言って出ようとする徹の肩をガシッとヌルが掴み、

「行かせねーよ!!」

 と全力で停めた。

 

 そしてワンダースケアたちの部屋では。

「HAHAHA!まさにこのワンダースケア様にぴったりのスイートルーム!!素晴らしい!」

 大声で喜ぶワンダースケア。なかなかの声量にレオンとソニドリが耳を押さえていた。

「はあ……なんでこの人達なのかな……」

 既にレオンはうんざりしているようだ。

「地下にあるとは思えないほどの設備だが……(この周辺森っぽいのとか見当たらなかったし虫探しはできないかな……)ボソッ」

 ぼそりと呟くソニドリ。まだ諦めてはいないようだった。

「ワンダースケア、声が大きい。静かにしろ」

 ヴィクターはワンダースケアに至極真っ当な意見を言う。

「なんだよ、せっかくのゴージャスルームだぜ?テンション上がるってもんだろうが」

 ソニドリはにっこり笑いながら、

「気持ちは分からなくもないが……あまり騒ぐと、ね?」

 ね?って言うところに妙な圧がある。多分本人が思ってるより笑顔が怖い。

 圧に負けたのかちょっと萎むワンダースケア。

 そんな感じで騒ぎは落ち着く。

 

 そしてレイ達の部屋では。

「ほう……悪くないな」

 部屋に入るなり何故か既にベッドに寝転がっている毛玉。いつ開けて入っていたのだろうか。レイは特に何も言わず毛玉の寝転がっていたベッドに近づき、座る。

「ツッコミ無しなんだ……」

 セーリィがボヤく。

「……?」

 何も疑問に思っていない顔のようだ。

「うわーーー!すげー綺麗!見たことない!ベッドも枕もふかふかだ!」

 阿久都は清々しい程純粋な意見。このメンバーの中で最も純粋であろう。

「確かにすごいね。ちょっと疑いたくなるくらい」

 イオリも驚いているような意見を言うが、全くもってケロッとしているようにしか見えない。

「というよりベッド4つだからひとつ足りないんじゃない?」

 毛玉が言う。

「なんか君ナチュラルにいるけどベッドひとつ占領する気なの怖いんだけど」

 セーリィが言うと、

「あ?モップがベッド使うほうがおかしいだろうよ」

 毛玉にストレートパンチくらいの反論をされる。

「モップ………………」

 シワシワになっているセーリィ。

 なにか反論……しても毛玉にレスバトルで勝てる気がしなくて萎んでいた。

 

 さて、一通りの喧騒は終わり夕食の時間。

 夕食はバイキング形式のようだ。食事会場に集まるなり数名は目を光らせる。

 他にもかなりの数の客はいるが、ほとんど臆している様子はない。

 もとより闘技場に出場する選手も利用可能になっている場所であるがゆえか、さほど奇異な目では見られないようだ。

 それよりも、明らかに高そうな料理たちに釘付けのようだった。

 色とりどりだが、しっかりと整えて並べられ、どれを見ても美味しそうと思えるような美しさだ。

「すげえ高そうだけど……食っていいのか……?」

 ヌルはかなり緊張しているようだが、アザラシは全く気にする様子なく鉄板焼きコーナーに歩き、

「A5ヒレステーキひとつ」

「申し訳ありません、本日は完売です」

 撃沈していた。

 

「わあ……宝石みたいにキラキラしてる……」

 アロンダと白理はスイーツコーナーで綺麗に作られているミニケーキやスイーツを見ていた。

「こ、これ食べれる……んですよね……?」

 ちょっと綺麗すぎて食べ物なのかを軽く疑ってしまっているようだ。

 その横でハルは高そうなものを片っ端から取っていた。そして、

「くそっ、タッパー持ってくれば良かった……!」

 なにか悔しそうにしていた。

 そして和食コーナーでは、毛玉がご飯を盛るのに成功していた。

 レイは何を取ればいいかわかっていなかったが、とりあえず阿久都が色々持ってきていたので、食べていた。

 そして別のところでは、

「最高級ウイスキー、ロックで」

「お酒に関してはバーの方でご注文をお願いします」

「酒飲もうとすんな」

 普通のドリンクバーで何故かキメているアザラシ、そして断られている。

 

 そんな賑やかな食事はあっという間に過ぎていった。

 大浴場もあり、ゆっくりとした時間を過ごすことができた。

 正直地下だから昼夜の感覚は分からないが、知らない場所に訪れ、戦いをして疲れたものもいる。

 これから戦うものたちもいる。

 それでも休めるのは僥倖だ、と言えるのだろう。

 支配人の考えていることなど端も分からないかもしれないが、悪意があっての事ではないと信じたい。

 バースセイバー達はそれぞれ眠りについたのであった。

 

「……女子の部屋行かん?」

「いかねぇよ」

 

 次の日。ではあるが、いかんせんここは地下なので日差しが入ってくることはない。だが体内時計というもののお陰だろうか、何となく目覚めるのであった。

 朝も朝で豪華な食事が並べられていた。

 美味しい食事を食べて、バースセイバー達はまた地下闘技場へと降り立った。

 今日も今日とて仮面を付けた者たちで賑わっている。

 ここでまた、死闘が繰り広げられる。

 英気を養うことができたことにより、バースセイバー達は気合いに満ちていた。

「存分にお休みいただけたようで何よりです。また素晴らしい試合を楽しみにしています」

 ヴァイスハイトはそう告げ、余裕の笑みを浮かべていた。

 闘技場、2日目。今日はどんな試合が行われるのだろうか。




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