君とボクの二度目の冒険 〜病弱だった僕は、二度目の命で幼なじみと世界を旅する〜 作:屠龍
第二話 夏の川と、新しい友達
僕はミレーヌに手を引かれて、川の中州へと向かっていた。
ひんやりした水の中を並んで進むだけで、胸の奥が妙に落ち着かない。
さっき出会ったばかりなのに、もうこんなに近い。
それだけで、前の人生にはなかった何かが始まってしまった気がした。
夏の日差しは強いが、水の中は気持ちよかった。
ただ、この川は急に深くなる所がある。
「ミレーヌ、時々深さが変わるから気を付けてね」
「うん! わかった!」
そう言って笑顔で頷き、ミレーヌは水を蹴って先へ進む。
次の瞬間、川底の石についた苔で足を滑らせた。
「きゃっ」
反射的に僕はミレーヌの腕をつかんだ。
そのまま二人そろって少しよろけたけれど、なんとか転ばずにすむ。
「あ、危なかったぁ……」
ミレーヌは一瞬目を丸くしたあと、すぐにけらけら笑った。
「ありがと、ユキナ」
そう言ってまた僕の手を握り直す。
たったそれだけのことなのに、胸の奥が妙に熱くなった。
「だから言ったのに」
「えへへ。でもユキナが助けてくれたから大丈夫!」
そう言って笑うミレーヌに、僕は何も言い返せなかった。
僕とミレーヌが中州にたどり着くと、そこには友達のヤオ、シンジ、ミン、スグハが待っていた。
「ユキナ、その子誰?」
魚をさばいていたヤオが顔を上げる。
「さっき知り合いになったんだ。ミレーヌっていう子」
僕がそう言うと、ミレーヌは満面の笑顔で一歩前に出た。
「ボク、ミレーヌ。お父さんはお医者さんしてるんだ。仲良くしてね」
そう言って元気に挨拶する。
「俺はヤオ」
「俺はシンジ」
「私はミン」
「……スグハ」
みんなが順番に名乗ると、ミレーヌは嬉しそうに目を輝かせた。
「ヤオとシンジとミンとスグハね。よろしくね」
そう言って、ミレーヌはみんなの手を順番に取っていく。
初めて会ったばかりなのに、まるで前から友達だったみたいな自然さだった。
「……お医者さんが来るって聞いてたけど、ミレーヌのお父さんなんだね」
スグハがほっとしたように言う。
「うん。ボクのお父さん、お医者さんしてるの」
「よかった。この辺り、薬師しかいないから怪我すると大変なんだよ」
スグハがぎこちなく笑うと、ミレーヌもつられて笑った。
「ちょうどいいから網あげようぜ」
そう言ってヤオが川の水に沈めた小さな網を引っ張る。
僕とシンジとヤオの三人で網を引き上げると、罠にかかった川魚が何匹か跳ねていた。
「わあ、凄い凄い! ボク、川魚見るの初めて」
目を輝かせて身を乗り出すミレーヌ。
そんなミレーヌを見て、ミンとスグハもつられて笑った。
僕は引き上げた魚を手に取ってから、ふと思った。
もしかしてミレーヌ、魚のさばき方を知らないのかもしれない。
「ミレーヌ、ナイフ使える?」
「使えるよ。でも、さばくのは初めてだからユキナ教えて」
「いいよ。まず、ここを刺して」
そう言って、僕は魚の持ち方とナイフの入れ方を教えた。
最初はぎこちなかったミレーヌも、二匹目にはもう手つきが少し良くなっていた。
「すごい、ちゃんとできてる」
「えへへ。ボク、こういうの覚えるの早いんだ」
得意そうに笑うミレーヌを見ていると、なんだかこっちまで嬉しくなる。
気がつけば、さっきまで初対面だったはずのミレーヌも、もう当たり前みたいに僕たちの輪の中にいた。
「ねえユキナ」
「なに?」
「この川、すごく楽しいね。ボク、まだ知らないことがいっぱいありそうでわくわくする」
きらきらした目でそう言うミレーヌを見て、僕は少しだけ息をのんだ。
この子はきっと、川遊びだけで終わるような子じゃない。
もっと遠くへ行きたいと、そう思っている。
そしてその時、なぜだかわからないけれど、僕もまたその先を見てみたいと思ってしまった。
「……うん」
ミレーヌが笑うたびに、自分の世界まで少しずつ広がっていく。
そのことに、僕はもう気づき始めていた。